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閃靈 (ChthoniC)

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cahm

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Seediq Bale


台湾のブラックメタルバンド、閃靈 (ChthoniC)の 4th アルバム…と、言われていますが、しかし私が思うに、これはブラックメタルではなくヴァイキングメタルです。

確かに音的には完全にブラックメタルです。それに異論はありません。しかし、音楽を形成するのは音だけではありますまい。詞と曲、それが渾然一体となって音楽は創られるのです。解読不能な現地語メタルを輸入盤で買いまくっている人間の台詞ではないですが。とにかく、歌詞大事。すごく大事。

このアルバムのテーマは「霧社事件」。 Wikipedia「霧社事件」のページの下の方にあるリンクから、まさに「吐き気をもたらす邪悪」というものを見ることができます。

このバンドのテーマを考えると、やはりそれは単純に「ブラックメタル」と形容できるものではありません。では「フォークメタル」か?いや、東洋のヴァイオリンこと二胡を使っているあたりはフォーク的と言えるかもしれませんが、音楽的にも思想的にも違いすぎる。「ペイガンメタル」か?いや、ペイガンと言うには宗教色は薄い(2nd は「中国の神と台湾の土着神との熾烈な戦い」を歌っているそうですが)。「ウォーメタル」?いや、確かに戦争がテーマになってはいるものの、ウォーメタルというのはやはり「勇猛さ」を主題に挙げた音楽であってやはり違う。

これはどうしても「ヴァイキングメタル」としか言いようがありません。もちろん、ヴァイキングもオーディンも出てこないこの音楽をヴァイキングメタルと分類するには異論もありましょう。当然これが「いわゆるヴァイキングメタル」であるとは言えませんが、しかしこのバンドの本質をもっとも正しく表現できるジャンルは、やはり「ヴァイキングメタル」しか無いのです。正確に言うと、「台湾版ヴァイキングメタル」。

ヴァイキングメタルにおける主要なテーマである北欧神話は、しばしば「滅びの美学」と謳われます。予言によって自らの、そして世界の終末を知っているアース神族。しかし彼らは、終末のその日まで巨人族との戦いに備えるのです。

族長モナ・ルダオを中心とした蜂起グループは、果たして日本軍に勝てると思って戦いを挑んだのか?いや、まさか一部族が一国の軍隊相手に勝てるなどとは彼ら自身も思っていなかったでしょう。しかしそれでも彼らは戦わずにはいられなかった。その姿は、覆せぬ運命と知りつつ戦い続ける、アース神族と重なりはしないでしょうか。#9「Quasi Putrefaction」より歌詞を少し引用。

サイディクの魂魄は 雪の欠片に寄り添い

山頂に住んでいる

虹の橋も健在し 我々族人を渡し

そして永遠の命を待っている

ああ、「虹の橋」!アース神族の住まうアースガルドが虹の橋ビフレストで繋がれていたのは偶然でありましょうか!

音楽的にも素晴らしい。基本はブラックメタルですが、そこに人の声に喩えられる二胡が加わることで、同国の Seraphim におけるソプラノヴォーカルの役割を果たしている。シンフォニックブラックメタル好きなら絶対買うべき一枚。

ただ一つ欠点を挙げさせてもらうならば、歌詞中に一カ所日本語が出てくるのですが、デス声であることも相まってサッパリ日本語に聞こえないことです。実際の歌詞は

生蕃共よ あろうことに我が大日本帝国の逆鱗に触れ

御皇恩に背いた者共 一人たりとも容赦せん

なのですが、↓のように聞こえます。

セイヴァードモーーーー ワドーゴドニワガダイイッボンテイゴグノエキインニフレ

ゴコーオンニセムイタモノドモー くぁwせdrftgyふじこl;

まあ別に良いんですが。上手すぎて逆に細部が気になる Dragonland よりマシですよね!

レビュー:猫と重金属


Mirror of Retribution


ところで、Cradle of Filth というバンドを御存じでしょうか。御存じ無い?どんなバンドかと言いますと、CHTHONIC のイギリス版みたいなバンドですよ。

…という表現がきっと数年後にはされるようになるに違いないと思う今日この頃。そんなわけで、台湾のヴァイキング・ブラックメタルバンド、閃靈 (CHTHONIC) の 5th アルバムです。もう下手なブラックメタルバンドでは、音楽的にも思想的にも太刀打ちできない超高品質。中心人物 Freddy も「サタニズムとか超薄っぺらスよwww」(超意訳)と欧米ブラックメタルバンドを華麗に dis っています。表面的には「二・二八事件」を歌っていますが、本質的なテーマは東洋の地獄思想。タイトルの「Mirror of Retribution」とは、日本で言う『浄玻璃の鏡』、閻魔様が地獄の沙汰の際に用いる死者の生前での行いを映す鏡です。つまりサタニズムならぬ地獄の沙汰ニズムというわけですね。あっ今俺上手いこと言っ…てないですね ごめんなさい。死後は閻魔様に舌抜かれてきます。

音楽面での感想を書くと、インストの #1 に続く #2「Blooming Blades」の最初が、なんだか「邪悪な Korpiklaani」といった感じだったのでズッこけました。思わず二胡をヒッたんが(もちろん無表情&あの奏法で)弾いている姿が脳内に浮かび、このバンドの好感度が 300% 増しくらいになりました。

もう少し真面目に書くと、ちょっと前作よりドタバタ感が強まっている気がします。そういうのが好みな人も居るでしょうが、少なくとも私がこのバンドに求めているもの的には前作の方が良かったです。要所要所では二胡が前作以上に悲愴な奏でを聴かせてくれて大変良いのですが。

ところで解説と訳詞で固有名詞のカタカナ表記が違っているのが気になって仕方ありません。足並み揃えられなかったのだろか。

レビュー:猫と重金属


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