井上ひさし・コメの話


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p104

ここでよく、GNPがこんなに増えてみな豊かになったではないかと逆襲されると、僕なんか一言も言い返せません。ただ都留重人さんという経済学者が、「蚊のいる国といない国」という話をなさったことがありまして、これがそれに対する答えだとおもいます。同じ規模の国が二つあり、片方には蚊がいますが、片方にはいません。どっちに住んだ方が幸せかという問題です。蚊のいる国は、当然蚊取線香を誰かがつくります。その工場ができ、それを売る問屋とか小売店もできます。それをいろんな人が買います。そうするとGNPは、絶対その蚊のいる国の方が増える。蚊のいない国のGNPは段々引き離される。しかしどっちが安眠できるかと言いますと、GNPの増えない、蚊のいない国です。これが都留重人さんの有名な譬え話です。昔GNP世界第二位なんて言って日本中が浮かれている時に、そういうことを言われました。

同じ規模の国があって、片方ではいろんな不幸なことが起こる。病気になる。お葬式がある。病院も薬も葬儀屋さんも必要になる。そうすると不幸なことが起こっている方がGNPは増えていくわけです。GNPが増えればいい、豊かな国になったからいいと言うのは、ちょっと待ってほしい。つまり、どこまでも豊かになれるわけはないっていうことが、いまやっとわかってきました。(後略)



p182

特別にきまった症状があらわれていないので病期とは思われていませんが、筆者は農民の病期の筆頭に「候現象」をあげたいと思います。農村に一週間も滞在すればどなたの目にもはっきりしてきますが、「背のすらりとして高い人」は少ない。たまにいるとすれば、それは役場の人か教師か、さもなくば町屋の人たちです。農民は体重ほどもあるものを荷(にな)い、田や畑で腰をかがめる毎日を送っているので例外なく短躯です。
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