青い肌 無才C判定 ◆8JqZBHfJBk

    

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721 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 22:31:47.92 i1zQz/39O

学才もね。文才もね。画才もね。この駄作は、KinKi Kids「Bonnie Butterfly」をBGMに、大切な何かが吉幾三も裸足で逃げ出す程不足してしまった無才がお送りいたします。

ていうかこのジャニタレ曲を偶然聞いたときに突発的に思いついたが自分の無才っぷりのせいで続き物になりそうな悪寒が現実に………orz

ジャニタレにインスパイヤとは…ふ…ワシも落ちたものよ…とか呟きながらケツ掻きつつ講義サボりながら書きますた。一話目なので一人で勝手に記念してノーカットでお送りしますが予告なくCMが入ることがあります。FNNによれば。

投下し終わったら登場人物のイラうpするんで、よければ見てやってくださいですお(; ^ω^)


722 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 22:36:38.95 i1zQz/39O



「帰蝶谷ってガイジンなんじゃねぇ?目ェ変だもんあいつ」

「だよなー、気持ち悪ぃよwな、響太」

にやにやと口端を吊り上げながら、窓下に備え付けられたスチームの上に座る男子が俺に話を振ってきた。


「言えてら。あいつに見られたら最後呪われるって噂だぜ」


俺が楽しそうに耳打ちすると、友人の何人かの男子は身を捩るようにして笑い、ある者は必死に笑いをかみ殺すふりをする。

近くの女子達は、やめなよぉ、帰蝶谷くんに聞こえるよぉ、などと間延びした声で俺達を窘めるが、薄笑いの浮かぶその顔には諫めの表情などどこにも無い。


ドア側の一番前の席で、白いシャツを着た背中は、身じろぎもせず蛍光灯に照らされていた。


725 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 22:38:45.55 i1zQz/39O


俺が小4の頃、クラスに帰蝶谷(きぞや)という男子がいた。

名字の漢字の使われ方と読み方が珍しかったから、今もよく覚えている。

色が白くて、なよなよと見るからに貧弱で、濃く真っ黒な髪。

休み時間にはいつも俯いて席に座っている彼の目元には、毛先の細い前髪が簾のようにかかっていた。

彼がクラスの中で馬鹿にされるようになったのは、その覇気のない風貌にも要因が有ったろうが、吊し上げの何よりの材料になったのは、彼の両の瞳の色だった。

彼の虹彩は教室の蛍光灯や窓から入る光の角度によって黒っぽい色から深い藍色に変わることがあり、
それを見たある一人の男子が仲間内で「帰蝶谷の目は病気なんじゃないか。気持ち悪い色をしている」と言ったことが教室内に波及し、彼は執拗ないじめを受けるようになった。

殴る蹴る、という類のことは無かった。
なぜか、彼には触れてはいけないような、触れられないような不思議な雰囲気があった。


726 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 22:40:26.98 i1zQz/39O


そのかわり、主に遠巻きに容姿に関する陰口を叩く手法が取られた。
そのうち陰口は彼の変わった名字にも言及するようになった。

俺は仲間外れにされて帰蝶谷のような目にあうのが怖くて、
クラスの奴らに合わせて、口汚いことを言って、帰蝶谷の痩せた背中に一抹の罪悪感を感じながらも、それを止めることもなく、彼を笑いの種にしていた。
俺にとっては、理不尽な理由で罵られる帰蝶谷の心情よりも、狭い世界の一構成員にしか過ぎない自分の保身の方が大事だった。

帰蝶谷がどういう顔をしていたか、下の名前は何だったかは、もう忘れてしまった。

小学校を卒業してから、それに伴い時間が記憶をぼかしていった。

ただ、深海とも夜の闇似つかないあの目の色は、時を経るごとに鮮やかになっていき、無意識の中で俺の隙間に染み付いていくのだ。


728 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 22:43:42.42 i1zQz/39O


体育館からだるい体を引きずって、ようやく階段を昇りきった。


もはや、ドアを手で開ける……そんな余力すらも無かった。

この中に入ってしまったら最後、学校主催の夏期講習という名の悪夢が待っている。

しかし、行くしかない。お決まり事だが夏は大学受験の天王山。

のろのろと目の前のドアを引くと、長身の上に腰を据える頭をぶつけないよう、彼は屈むようにしてくぐった。

ドアを閉めるのも忘れて、彼は教卓前列の一番後ろの席へと足を引きずりつつ、半ばよろめきながら歩み寄る。



「っはー………………」

肺の奥底から盛大なため息をついて、森崎響太はドサリと投げやりに鞄を机の上に置くと、崩れ落ちるように席に座った。

朝礼のショートホームルームの始まる前から、鉛のようにだるい上半身を机に投げ出し、鞄の上に顔を俯せる。


729 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 22:47:00.52 i1zQz/39O


使い古した鞄のザラザラとした化学繊維の感触を頬に感じた。


厳しいのは覚悟の上で入部した。

だけど毎日朝五時から練習て馬鹿じゃねえの、と疲れで鈍く濁る思考の中で吐き捨てる。
しかも夏休み中もだ。

そして三年間それを一度も休まず遅れず皆勤賞な自分もつくづく馬鹿だ。

目だけ動かし黒板上の時計を見ると、針は8時を指していた。
朝礼まであと30分ある。

響太は恒例の「プチ寝」を決め込むことにし目を閉じる。

が、五分もしない内に、ドアが閉まる音がして、うとうとと響太がまどろみかけたその刹那、彼の背中はばっしりとしたたかに叩かれた。


「おーっす、なんだ、今日も朝からグロッキーだなー?我らが栄光のバスケ部主将閣下は。ドアはちゃんと閉めろよ」

「……ほっとけバカ」


731 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 22:48:47.02 i1zQz/39O


ひりひりとした痛感が背中を支配すると同時に降ってきた陽気な声に、
響太は目を閉じたまま絞り出すようにうんざりと言葉を返した。

つれない奴だなぁー、と無愛想な響太の態度に動じる様子もなく、
彼の背中に鉄槌を喰らわせた当事者、高島浩也はケタケタと明るく笑いながら椅子を乱暴に引き、どっかりと自席に腰掛ける。


彼の席は響太と通路を挟んですぐ隣だ。

隣に誰もいないので彼に言わせれば伸び伸びと快適な座席ライフを送っているらしいが、
高島の席は窓側にあり、しかも西日をまともに浴びる位置にあるので、かなり眩しい。

カーテンは窓の中程までしか閉まらないから彼の席には遮光の機能は適用されないのだ。


その結果、
ノート書きにくいわ黒板見えにくいわ、
夏は暑さで体が、いや脳も溶けかけて、
「心頭うんぬん」が嘘と愚の真骨頂であることを身を以て体感させられるわ、で三重苦の悪席となっている。

響太の席も近いのでその影響を不本意ながら被っていた。


732 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 22:51:41.97 i1zQz/39O

それに加えて教卓からはばっちり視界に入り、居眠りしようものならば即座に見つかる。

それでも高島は、お構いなしに睡眠欲をアズユーライクの精神で満喫している。
そんなあたり、応援団員である彼らしい度胸の座り方だ、と響太は呆れ混じりに感心していたりするのだった。


「そういや森崎、男バスの試合いつよ?」

浩也は座り位置を横にし響太の方へ身を乗り出す。

「……来月。頼むから寝させてくれ」

「悪い悪い、そら朝練も通常より厳しくなるわけだ」

「……楽しそうに言うな。」

うつ伏せたまま鞄でくぐもった声で響太がうめくと、いやぁ応援がいがあるだろうなぁーと浩也は鼻歌を歌いだす。

しかし、イントロらしきメロディを奏で終えたとき、何かを思い出したように彼は、はたと手を打った。


733 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 22:54:19.61 i1zQz/39O


何だよ、と響太がだるそうに尋ねると、いやぁ忘れてた忘れてた、俺もすっかり健忘だよと浩也は笑いながら話し出す。


「お前に伝言頼まれてたんだわ、樋口に」

「遠子が?」

樋口の名前にかすかに眠気が飛び、響太は少し首をもたげて浩也の方を見た。

響太のその所作に、浩也はぷっ、と吹き出す。


「そうそう、お前の愛し麗しの樋口マネだよ」

「中学生みてえな茶化しはよせ。ウゼぇ」

響太は渋そうに眉をよせ、吐き捨てるように呟いた。

樋口遠子は、響太が主将を勤める男子バスケット部のマネージャーだ。

150センチをようやく越すくらいの小柄な体だが、てきぱきとした働きぶりは部内の評価も高く、気配りもよく出来る。

響太、浩也とは同学年で、遠子は彼らの隣のクラスの生徒だ。

クラスも近く、同部のキャプテンとマネージャー、ということで何かと関わる機会も多く、
割と二人一緒に話している場面が多いのだが、
それを見かけるたびに浩也は響太をからかう。


734 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 22:56:50.53 i1zQz/39O


「樋口、今日は部活来れないってよ」

「へぇ………今まで休んだことねえのに、何でまた」

「朝から親戚の葬式の準備に駆り出されて、断りきれなかったんだと。お前んとこの監督に伝えといてくれってさ」

「わかった。悪いなわざわざ」

「気にすんな。俺はお前に伝えるよう頼まれたまでのことだし」


それよりよぉ、と浩也は椅子を響太の席へと引きずり座る。
響太は即座に彼から目をそらした。

信頼されているねえ、ん?ん?と尚も茶化してくる浩也に完全無視を決め込み、
響太は残り少ない睡眠時間を再び貪ろうと鞄の上に突っ伏した。


738 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 23:06:15.75 i1zQz/39O

ボールによる破損を防ぐために取り付けられた、所々錆びている窓枠の隙間から、暮れていく日の光がこぼれている。

腹をかすかに橙に染め、太陽に優しく切り裂かれたように散らばる青灰色の雲が、日中とうって変わってすっかり穏やかになった風に、ゆったりと流されていく。

時計を見ると、もう七時だった。

それでも、まだまだ空は明るい。
日の長さに、夏だなあ、とフリースローの練習に専念する頭の片隅で、響太は思う。
空は地平に沈む太陽光にぼかされた淡い色をたたえていた。


740 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 23:08:37.73 i1zQz/39O


シュートの飛び交う中、響太は緩くドリブルをしながらちらりと隅を見る。
空座のパイプ椅子はコート隅でぽつねんと佇んでいる。監督は職員会議でまだ顔を見せていなかった。

昼休みに樋口のことを伝えに職員室を訪れたが監督はあいにく出払っていて、彼女の欠席の旨は伝えることが出来なかった。
監督が来たときに伝えればいいか、と響太は思い直す。

響太の高校は男子バスケット部の中堅校で、優勝経験こそ少ないものの、地区では三位、四位のあたりに名前を連ねていた。


741 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 23:15:05.55 i1zQz/39O


創設した時が全盛期だったらしい。
つまり、朝の浩也の「我らが栄光の」は八割は茶化しだ。

古株の先生などは、その当時のことをよく知っていて、懐かしそうに話す。
主将をつとめる響太は、大会後の運動部の成績報告会の時などに度々聞かされるので、少し、肩身が狭い。

高校2、3年の部員達がシュートを決めるたび、玉拾いをする1年がナイッシュー、と叫びながら、ボールを手の空いている先輩を見つけて投げて寄越す。

2、3年の部員数に対して1年の数はかなり少ないので、それはかなりの重労働だ。


742 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 23:18:23.67 i1zQz/39O

1年生達の張り上げる声と、ボールが床に打ちつけられる音、コートに触れるシューズソールの高く短い摩擦音とがせわしなく体育館に満ちていた。

響太はドリブルを止め、両手にごつごつとして重いバスケットボールを納めると、ゴールへとボールをスローした。

ゴールの取り付けられた板に当たることもなく、彼のシュートは弧を描いてパサリ、とネットに乾いた音を立てさせながら完璧に決まる。

ナイッシュー、と叫んで、床に落ちバウンドするボールを1年が取ろうとしたが手を滑らせた、換気の為に中ほどまで開けていた引き戸から外へとボールが投げ出されてしまった。

「すみません!」

取りそこねた1年生は慌てて外へ出ていこうとする。


743 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 23:20:50.34 i1zQz/39O


「あ、いい、いい。俺取りに行くから」

それを引き止め、響太はコートを出た。

「でも…」

「気にすんな、他の奴の拾っててくれ。あと柵戸引いとけよ」

すみません、と頭を下げる1年生に笑いながら構わないというように手を振ると、
響太は引き戸をくぐって外へ出た。


頬に涼しい淡やかな風が触れ、体育館の壁がフィルターのように遮っていた蝉の声が急に濃くなった。

陸上部が今日休みのために誰もいないグラウンドを挟んで、響太は遠くに見える校舎に目を凝らす。

景観向上を図って配置よく植えられた松の木が見え、丁度生徒玄関側の空きスペースにそびえる葉桜の下で太鼓を叩きながら、学生服の男子達が叫ぶ声が耳に届く。

その中のひとりが目敏く響太を見つけ、ぶんぶんと手を振ってきた。
浩也だ。


744 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 23:23:14.18 i1zQz/39O

練習に集中しろよ、と呆れつつ、憎めない浩也の元気さに彼も笑いながら手を振り返した。

ボールを取って戻ろうとグラウンドへ視線を戻すが、姿が見当たらない。
どこに転がって行きやがった…と面倒に思いながらあたりを見渡すと、
石灰で引かれた消えかけの白線トラックで、ボールを人差し指の上でくるくると何回も楽しそうに回す女子生徒がいた。

肘までまくられた真っ白な開襟シャツの下で、深緑の膝上のプリーツスカートが風にかすかに揺れ、脹ら脛の中程の紺色のソックスに、履き古されたローファーはかかとを潰されている。

響太の高校は男子が学ラン、女子は襟、袖、スカートが水色のセーラー服。襟には青のラインが入る。

女子の夏服はそれがそのまま半袖になり、生地が少しだけ薄く軽くなる。


746 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 23:26:48.18 i1zQz/39O

着ている制服の様子から察するに、彼女は他校の生徒のようだった。
髪を高い位置でポニーテールで結っている。逆光のせいで微笑んんでいる口元しか見えない。

彼女の指で踊るのが、自分のボールだと確認すると、響太は出来るだけ驚かせないよう、女子生徒に声をかけた。

「ごめん、それ返してほしいんだけど」

響太が声をかけると、女子生徒はボールを回すのをやめて両手でそれを掴み、彼の方をゆっくりと振り返った。

逆光で余りよく見えないが、眼差しは悪戯っぽく笑っているようだ。

「あ、ごめん。ついそこにあったから、遊んじゃった」

今返すから、と響太の方へ悪びれる様子もなく、女子生徒はさくさくと歩み寄ってきた。

彼女が体育館の屋根の日陰に入るにつれ、
その姿に帯びていた太陽光は徐々に取り去られていく。


747 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 23:29:42.00 i1zQz/39O

それにつれ、彼女の容貌がはっきりとしてくる。
長い睫毛が縁取る、一重の切れ長の瞼に抱かれた真っ黒な瞳が響太を視界に捉え、白く長い指先とともにボールが差し出された。

化粧気は無いが、ほくろのひとつもない白い肌に、屋根の日陰が青みを落としている。

そのせいで、薄い唇がやけに赤く見える。

鼻筋がすっきりと通っている彼女の容貌は、妙に大人びた感じを響太に与えた。

「はい」

「どうも……」

響太が軽く頭を下げながら差し出されたボールを受け取ると、彼女の口端が優しく上がった。

他校のグラウンドに一人で夕日背負ってつっ立っているとは、少し変わってるな。
響太は彼女を眺めながら、そんなふうに思う。


749 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 23:33:31.64 i1zQz/39O

「大きいね、身長」

唐突にそう言って、
彼女は、響太をしげしげと下から上へ塗り上げるように見て、小さく笑う。

「え?あ、ああ。まあ」
響太は戸惑い気味に言葉を返した。

そういう彼女も、女にしては結構背が高い部類に入るだろう。

響太は180以上あるが、彼女は結い上げた髪の分を除いても、その肩に頭が届きそうな感じだ。

だが、響太はそれを口に出すのはやめた。
女子は身長の高さを気にする者も多い。

シャツとスカートから伸びた彼女の長い手足は、骨ばりすぎることもなく、肉のつきすぎることもなく均整が取れていた。
「それじゃ」

彼女はにっこりと笑って、響太から背を向け日陰から出ていく。


765 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 23:55:23.74 i1zQz/39O

「あ、ボールどうも」

「いいえ、こちらこそ」
そのシャツが皺の谷間に影を作る背中に響太が声を投げると、彼女は歩みは止めずに振り返り笑ってから、また背を向け、グラウンドを横切り校門へと歩いていった。

蝉が相変わらず鳴き喚く中、響太は何となく彼女をずっと眺めていた。

「おーい主将、ミーティングやるぞー」

はっ、として体育館の中から聞こえてきた同学年の部員の声に振り返る。監督が来たらしい。

「悪い、今行く!」

そう叫んで、響太は引き戸へと走り寄った。


767 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 投稿日:2006/09/24(日) 23:59:51.77 i1zQz/39O

藍色、
藍色、
藍色。



気管支を圧迫されるような苦しさと、視覚を潰すように塗り込められた藍色の中で、自分は、ただ静かに落ちていくしかない。

抗おうという意志さえ持つことも、
足掻こうとすることも出来ず、ただ落ちていく。
落ちきった先には何が有るのだろうか。


いつもいつも、底に叩きつけられる寸前で窒息感で死にそうになって目が覚める。



俺は、
いつまでこの色を引き摺ればいいのだろう。


768 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:03:57.41 KFrNGpDsO

晴れきった青い空に散り散りになった雲の破片が浮かぶ。

蝉はまだ鳴いていない。晴れ晴れとしているのはお前だけだ、と歩を進めながら響太は空に言ってやりたくなる。


その夢を見たのは久し振りで、すっかり精神的免疫の耐久性は脆くなっていたから、今朝は脂汗を掻きながら彼は目覚めた。

1日の始まりがそんなふうだったので、朝から憂鬱な気分だ。


771 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:06:19.36 KFrNGpDsO

朝練が無いだけ、少しばかり救われたような気分にはなっていたが。


登校してくる生徒らに混じって、響太はため息を吐きながら校門を潜った。

このあと補習が午後まであるのかと考えると、ただひたすら、だるい。

その感情しか湧かない。

また深くため息をつき、ワックスで立ち上げた髪を崩さないように、
響太は毛束の隙間をぬって地肌を掻いた。


「おはよう、森崎君。浮かない顔してるじゃない」

不意に湧いた明るい声に響太は胸のあたりを見下ろすと、茶色のショートヘアを揺らしながら、樋口がよっ、と手を挙げた。


772 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:09:26.23 KFrNGpDsO

茶色の大きな瞳と、にかっと笑った口から零れる白い歯は、太陽をうけてきらきらと輝いていた。

テンション高えな、と思いながら、響太もまた樋口に手を挙げ返す。

「おはよう樋口。監督に言っておいたぞ昨日」

「いやぁー、すまないねえ、ホント」

手をあわせてありがたや、ありがたや、と彼女は響太を拝むように礼を言う。
傍らを歩いている樋口に合わせて、少し響太は歩をゆるめた。

「葬式、うまくいったのか?ってこんな言い方も変だけど」

「確かにね」

響太が尋ねると、樋口はくすくす笑いながら頷く。


774 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:12:21.18 KFrNGpDsO

「本家の人の三回忌。うちは分家なんだけど、本家の人たちがそういうの見栄はりたがってさ、私の家も駆り出されたってわけ。」


ふ、と笑いながら肩をすくめて樋口は自嘲するように頭をふる。


「そりゃ大変だったな。ご苦労さん」

「ううん。つか下らないことで部休んじゃってごめん。あとで監督にもあたしから改めて言わなきゃ」

「そうだな。一応そうしとけよ」

「うん」

響太が言うと、樋口は元気よく頷く。

とは言っても、監督は別段そういう欠席出席に関しては寛容な人間なので、昨日、響太が樋口が休む旨を伝えても「あ、そう。了解」の一言だけだったから、余り意味も無いかなと彼は思う。


「それじゃ、私今日、日直だからお先」

「おう、部活でな」


776 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:16:44.36 KFrNGpDsO

「ん。昨日は本当にありがとう。高島君にも伝えといて」


そう言うと、樋口は軽やかに生徒玄関へと走っていった。

元気だよなあ、と響太が苦笑いしながら、ふと頭上に視線を感じて校舎を見上げると、
三年生の教室がある三階の、響太のクラスの位置の窓から高島が頬杖を突きながらこちらを眺めているのが見えた。

遠すぎて分からないが、にやにやと笑っているに決まっている。

樋口の溌剌さに少しだけ浮上しかけたテンションが、教室に入ってからの展開を予想して一気に低下するのを響太は感じ、3度目のため息を吐いた。


779 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:20:38.09 KFrNGpDsO


「よぉう見たぞ見たぞーぅ森崎ぃー」


案の定、高島は教室に入るなり響太に話しかけてきた。

どさり、と鞄を響太が肩から下ろすと、窓から椅子を引きずりながら近づいてきて、
浩也は響太の脇腹の当たりをにやにやと笑いながら、このっこのっ、と突っつきまくる。


「うるせえな……今だるいんだ、後にしてくれ」

パターン化しきった顛末に心底うんざりしながら、響太は浩也の手を嫌悪感を隠すことなく振り払う。

うわ鬼畜、と呟きながら浩也はいじけるように椅子を響太から離して、責めるような目で彼を睨む。


780 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:26:03.32 KFrNGpDsO

「響太君つれない!いいわ、アタシせっかく良いこと聞いたから教えてあげようと思ったのにー」

「小指立ててこっち見んなキメェ。で、なんなんだ、その良いことってのは」

「どうしよっかな」

ふっふっふ、と意地悪く笑いながら浩也は響太を見てくる。

「……無いなら別にいいけど」

「嘘、あるある!とっておきの!」

吐き捨てるように響太が言うと、浩也は慌てて待ったをかける。

響太は椅子に腰を落としながら、いつも以上に威勢のいい顔つきをしている浩也を見た。

「転校生来るんだよ、うちのクラスに!」

「…寝言は夢で言うもんだぞ高島」

はぁ、と息を吐いて響太は椅子の堅い背もたれに寄りかかる。


782 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:29:58.73 KFrNGpDsO

「違ぇって、本当!しかも女子!うはww俺にも春来た!」

呆れたように響太が言うのにもおかまいなく浩也はガッツポーズを決めまくる。

年中お前の頭の中は桜が咲いてるだろうが、と喉まで出かかって響太は飲み込む。せっかくの彼の喜びに水を差すのは野暮だ。

「高島落ち着け、な。端から見るとかなり痛いぞお前……」

「お、みんなそろってるな」

玩具買ってと手足をばたつかせる子供のように…というより、玩具買ってくれてありがとう!!と手に負えない喜びのあまり暴れ回る子供のような浩也を宥めようと、響太が声を掛けようとしたとき、教室のドアが開き担任が入ってきた。


783 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:33:08.28 KFrNGpDsO

「先生、まだ朝礼早いよ?」

最前列にいる女子が不思議そうに担任に尋ねる。一応クラスは全員登校していたが、8時半からの朝礼には、まだあと10分ほど時間があった。

「ああ、ちょっと皆に話すことがあってな。」

何事か、と訝りながら、さっきまで談笑していた生徒たちも自分の席に戻り始める。響太が静かになった浩也を見ると、彼は明らかにドアへ期待の眼差しを寄せていた。

「入っていいぞー」

担任がドアの向こうへ声をかけると、「失礼します」と落ち着きのある声がして、響太らの学校の女子の制服であるセーラー服を着た女子が入ってきた。


786 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:37:24.83 KFrNGpDsO

(あ……)

教壇の上に立った黒髪のポニーテールの女子に、響太は見覚えがあった。

転校生としてやってきた彼女は、昨日自分にボールを手渡してくれた少女だった。

(浩也の言ってた転校生てあの子だったのか)

そう分かると、何故他校生の制服を着た彼女が先日グラウンドにいたのか、なんとなく合点がいった。

転校先の学校の校舎の様子でも見に来ていたのだろう。

彼女のほうは響太を忘れているのか、気がついていないのか、昨日と同じように、薄い口元に笑みを淡く浮かべている。

ざわつく教室を背に、はいはい静かにしろーと言いながら、担任は白いチョークを摘むと黒板に彼女の名前を書きだした。


789 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:41:53.70 KFrNGpDsO

(あ……)


教壇の上に立った黒髪のポニーテールの少女に、響太は見覚えがあった。

転校生としてやってきたその女子は、昨日自分にボールを手渡してくれた少女だった。


(浩也の言ってた転校生てあの子だったのか)

そう分かると、
何故他校生の制服を着た彼女が先日グラウンドにいたのか、なんとなく合点がいった。

転校先の学校の校舎の様子でも見に来ていたのだろう。

彼女のほうは響太を忘れているのか、気がついていないのか、
昨日と同じように、薄い口元に笑みを淡く浮かべている。

ざわつく教室を背に、はいはい静かにしろー、と言いながら、担任は白いチョークを摘むと、黒板に彼女の名前を書き出した。


792 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:44:44.85 KFrNGpDsO

浩也のテンションは、先程より小声にこそなっていたが、彼女の姿を見たときから上がりっぱなしで、もう手がつけられない。


「ち、知性派美人………イイ!くぅ、今夜は眠れねーwwな、響太!……って、響太?」


響太は、黒板に大きく刻まれた白い文字しか認識することが出来なかった。

一文字一文字が、担任の筆圧の強い角張った字でチョークで記される度、彼を取り巻く全てが少しずつ遠退いていく。

なあ、おい、響太?どうした?と、固まっている響太に気づいた浩也は小声でしきりに話しかけるが、その声は、響太の耳には届かなかった。


794 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:47:08.34 KFrNGpDsO

視覚に支配されかけている脳内が、次第にずきずきと弱く痛み出し、鼓動が速まり、手に汗が滲み始める。

帰蝶谷 章

黒板にはそう書かれてあった。

目を見開いたまま、響太は彼女に目を貼り付けられたように、
視線を移すことが出来なかった。

「今日からうちのクラスの一員になる帰蝶谷(きぞや)だ。皆、仲良くしてやってくれ」

担任がそう言って笑うと、教室から一斉に歓声と拍手が巻き起こった。

「わかりにくい読み方の名字ですみません。下の名前は、あき、と読みます。よろしくお願いします」

そう言って、深々と拍手の中で一礼すると、
帰蝶谷は頭を上げ、真っ黒な瞳で響太を見て、にっこりと笑った。

徐々に思考が浸食されていくような感覚を覚えながら、響太は、帰蝶谷、と声にならない声で、心が壊れたカセットのように反芻しだすのを、
ぼやけた色の薄い膜を隔てた、どこかの別世界のことのようにしか感じることが出来なかった。


796 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:50:41.63 KFrNGpDsO

I Can't See Your Eyes
まだヤなAirの中
ジンのアイス溶ける真夜中意味ないDryな言葉を交わしてる

24hours
君をどうにかしたい
愛のない未来は見れないタイプ
少し無理してる

ただ抱き寄せてKissをしても心まで奪えない
悪い遊びを教えてあげるよ堕落の中で
Find My Mind

そうさ 蝶になって
夜を舞って 時を越え
闇を切り裂いて飛んでゆく
君は僕だけの花になって咲いていて
零れてく蜜のような
愛をもっと
感情でずっと
君をもっと感じたい

EDテーマ:KinKi Kids
♪「Bonnie Butterfly」
こんなのでよければ第二話へ続く。そしてイラスト投下


800 名前:無才C判定 ◆8JqZBHfJBk 本日のレス 投稿日:2006/09/25(月) 00:53:18.09 KFrNGpDsO

心臓がギャランドゥな方のみ閲覧して下さい
■森崎響太

■帰蝶谷 章

■高島浩也

■樋口遠子

お付き合いいただきありがとうございました
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