萌 ◆PqUOSvmR0w

    

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45 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 23:50:25.06 4QYNMOOX0

ボクには好きな人がいる。
バスケット部の九鬼先輩。
先輩はいつも光ってる。
先輩はいつも人に囲まれてる。
先輩はいつもかっこいい。
ボクは暗く目立たない。
ボクはいつも一人きり。
ボクはおっちょこちょいでかっこわるい。

こんなボクでも先輩が好き。
他の誰よりも、先輩が好き。
好きで好きでたまらないのに、
ボクと先輩の間には見えない壁がある。
ボクと先輩の間には、天から科せられた壁がある…


51 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 23:58:05.10 4QYNMOOX0

先輩は背も高くて、イケメンで、面倒見が良くて。
ボクは背も低くて、平凡な顔で、ニブくって。

こんなボクが人を好きになっちゃいけないのかな?
こんなボクが先輩を好きになっちゃいけないのかな。
こんなボクでも先輩を好きになっても良いよね?
こんなボクだから先輩を好きになるの。

今朝も先輩に「おはようございます」って言って部屋を出てきた。
今日も先輩と一緒にバスに乗って登校してきた。
今日も先輩と一緒に授業を受けてる。

…写真の先輩だけど…

…写真の先輩だけど、これはボクだけの先輩。
ボク専用の、先輩。


54 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:03:51.00 arjP3sU90

こんなに先輩のことが好きなのに、ボクはそのことを伝えられない。
ボクがこんなに見てること、先輩は知 ら な い。

なぜって?

…それは壁があるから。
天から与えられた壁があるから。

壁がわからない?

そんなことないよ、キミにも見える壁だよ。

だって、先輩は男だし、ボクは男の子だから。

この壁は絶対に越えられない。
この壁は絶対に壊せない。

そう信じてた。
うん、あのときまでは…


60 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:14:09.04 arjP3sU90

凍てつくような木枯らしの吹く日、その壁は突然姿を消したんだ。

ボクはその日をベッドの中で迎えた。
きしむ身体を抱えて、でも意識ははっきりと壁が消えたことを感じ取っていたんだ。

ボクはブラを着けて
ボクはペチコートを履いて
ボクはセーラーを着て
ボクはスカートを履いて

ボクの新しい朝が始まった。

今朝もまた先輩に「おはようございます」を言う。
今朝もまた先輩と一緒にバスに乗る。
今朝もまた先輩と一緒に授業を受ける。

そしてライバル達の数をこっそりと数える。

ボクはもう昨日までのボクじゃない。
ボクにはもう壁がない。

ボクを留めるものはもう何もない。


67 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:25:57.27 arjP3sU90

ボクは周到に準備する。
先輩と一緒にいられるのもあとわずか。
勝負は一瞬
その一瞬を永遠にするために。

それとなく先輩の周りを探る。
案外障害物は少なかった
これならあともう少し。

そして準備万端

失敗したらどうしよう、こんなボクでも微妙な乙女心?

クリスマスが来たらタイムアップ
なんとしてもそれまでには決めないと。

そして決行当日。

ボクは勝負用で身を固めて、先輩の元へ。


74 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:36:06.32 arjP3sU90

ボクはついに先輩の前に立つ
この日のために悩んだ日々
この日のために暖めた想い
この日のために磨いた自分

さて判定は?

「ごめんな」

スレが落下するよりショックな言葉
壁の代わりに溝が出現
…しそうになるのを強引に食い下がる。

男の子の時には考えられないボクの態度
そんなボクの姿にボク自身が驚いてる

女の子って
女の子って…

ボクが言っちゃなんだけど、とっても強いものだったんだ



82 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:52:19.29 arjP3sU90

でもやっぱり経験値が足りなかったらしい
今日の所は撤退撤退
でも初日だから、つかみだから。

転んでも泣かない、ボクは強くなった…のかな?
女の子パワー全開。

狙いはもう次に移ってる
クリスマス?お正月?それともバレンタインデー?
全部物にしてナンボでしょー

チャンスはいっぱいあるよね
時間もまだまだあるよね
がんばろう、おー。



85 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:58:59.01 arjP3sU90

クリスマスの日は終業式の日
これを逃すと次は来年。

せっかくのお正月
フイにはしたくない。

サンタのおじさまボクにもプレゼント
ひとつでいいんです、先輩をください。

神頼み、仏頼み、サンタ頼み

人事を尽くして天命を待つと言うしね。
そんなこんなで第2ラウンド開始。

舞台は下校の昇降口
出てきた先輩

…隣にいる人は誰?


92 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 01:16:13.25 arjP3sU90

なんてこったいブルータスおまえもか。

隣にいたのはうちのクラスの女の子。
出るか、引くか、それが超問題。
棚の裏からピンクのオーラ発散。
悩んでも悩んでも結論出ないよー、どうしよー。

あ、いつの間にか先輩一人になってるし。
これって天の助け?それともサンタおじさまのプレゼント?

ボクは再び先輩の前へ。
ありがとうサンタおじさま、ということにしておこう。

「またキミ?」
「ええ、またボクです」
「がんばるねぇ」
「それだけが取り柄なので」
「それじゃさようなら。また来年ね」

ちょおおおおっとまああああったぁ!
そこで去られちゃ困ります泣きます恨みます、いや恨んじゃダメです。


100 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 01:30:33.67 arjP3sU90

99は自動君でしたorz
====
とにかくボクは先輩の跡を付ける。

道を越え塀を飛び
これなんてハットリ君?

あ、先輩が走り出したっ。
ボクもあわてて追う追う追う。

気がついたら先輩が後ろの方にっ

あれ?
ボクってこんなに足早かったっけ?

あっけにとられる先輩。
あっけにとったボク。

静かに先輩が歩み寄る。
ドキドキドキドキ

頭の上にポンと手が乗った。
「ちょっと話を聞こうか?」

キタ━━━(゚∀゚)━(∀゚)━(゚ )━(  )━( ゚)━(゚∀)━(゚∀゚)━━━━━!!!!!


166 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 08:59:42.24 arjP3sU90

場所は国道沿いの燃すバーガー
テーブルの向こうには先輩
テーブルのこっち側にはボク
あり得ないシチュエーション?

いいえ望んだシチュエーション。
でもドキドキが止まらない
dkdkdkdkdkdkdkdk

口を開いたのは先輩。

「足、早いね」
ソコカーーーーーッ

「いえ、それほどでも」
カエスナーーーーーーッ

見えないツッコミのあとはやっぱり大沈黙
どうしようなに話そう先輩の目がまぶしい
店員の目もまぶしい

(゚△゚)  (゚д゚)

店員こっち見んな。


168 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 09:16:59.45 arjP3sU90

えーとえーと
なんて言ったらいいんだろ

先輩の一番近くにいたいだけ
先輩の声を独り占めしたいだけ
先輩の目を独り占めしたいだけ
先輩の背中を独り占めしたいだけ

…たったそれだけなんだけど。

目の前で先輩が困ってる
目の前で先輩が時計見てる
ボクも先輩の前で時計を見る

無情な時計は17:23
窓の外はトワイライトゾーン
テーブルの上もトワイライトゾーン

ボクの唇が言葉の織物を紡ぐ
やっとの想いで
不器用な舌で

のどから出る魂、テーブルのトワイライトゾーンに飛び出た


170 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 09:29:39.97 arjP3sU90

彷徨う魂、テーブルの上で踊ってる
2人の間で踊ってる
ボクと先輩、2人の魂がテーブルの上で混ざって…

先輩の耳から消えてった。

「…キミ、面白いね。今度また話してよ」

胸に突き刺さる矢じり

天使が本当にいた瞬間

幸せになれるって本当。
むしろ有頂天。
そして派手な頬紅を顔中に塗りたくる。

歩く圧力釜。
先輩に見えないところでピーピー鳴りっぱなし
どこをどう歩いたのかわからない
ここはどこなのか分からない

先輩が手を振ってる
ボクも手を振ってる




171 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 09:36:16.41 arjP3sU90

圧力釜家に帰る。
蓋を開けたのはお母さん
覗き込むなり

「あー、炊きすぎてる。遅すぎたわね」

天使に射抜かれた心はトロトロ
先輩に射抜かれた心はトロトロ
形を保っていられない
流れ出したら大変。

除夜の鐘が鳴る
指折り数えるボク

108回鳴ったら約束の日
でも朝まで待てない
フライング電波
フライングメール
素早い手つきで
あり得ない速さで

0時ジャスト。
混み合う電波
届けこの想い。


180 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 10:22:04.66 arjP3sU90

やっと届いた返事。
ラッシュに揉まれて、電子の雑踏踏み越えてきたのが分かる

「明けましておめでとう。今年もよろしく」

トロトロの心流れ出した。

夜が明ける
新しい年の夜が明ける

ボクはトロトロの心かき集めて型に流し込む
とっておきの服で固める
新しいバンス
新しいファー
お母さんのブローチ

ブローチはお守り
先輩の前で溶けたら大変。

時計は無情。
天気は上々
小春日和のお正月。



181 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 10:29:07.22 arjP3sU90

「先輩、明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとう。中森さん」

名字で呼ばれる、まだそんなポジション。

でも今は2人きり
周りから見たらまさに恋人

ごった返す玉砂利
とっさに手が触れる
指の先から沸騰開始
圧力釜再び?

でも今日はお守りがある
お母さんのおまじない
恋愛大先輩

沸騰したのは右腕だけ
なんとかこらえてる
2人並んで初詣
ボクは恋愛成就
先輩は…きっと志望校合格だよね


183 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 10:39:56.47 arjP3sU90

おみくじシェイク
1回100円の大勝負
「56番」
「88番」
8は大吉末広がり、幸せの予感ぺらりと目の前に。

『大凶』

なんてこったいオーマイガー

「なんて出た?」
さすがにこれは見せられない
CIAにだって知られちゃマズイ。

枝に結んで厄払い。
びっしり先客、みんな運悪すぎ、ボクもその一人。

「大吉よりラッキーなのがあるって知ってた?」
「え?知らないです、なんですかそれ?」
「大凶は大吉よりもラッキーなんだって」

えええええー。

すいませんさっきの厄払いは間違いなんです、ああもうどこにあるやら。
神様キャンセルは効きますか?


187 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 10:58:47.52 arjP3sU90

手を繋いだまま帰り道
静かなお正月
響く靴音
鳴りっぱなしのマイハート

ぽかぽか暖かい公園のベンチ
ぽかぽか暖かい缶コーヒー
シュンシュン沸いてるボクの胸

「あのさ」
「はい」
「…いや、なんでもない」
「…」

このシチュエーションはもしかしてもしかする?

じっと見つめる瞳と瞳。
じりじり近づく小指と小指。

またも圧力釜一歩手前
でも今日はちょっと違ってる。


189 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 11:07:37.67 arjP3sU90

さらに近づく顔と顔
その距離は微分の勢い
0に向かって限りなく近づく
けれど0には決してなれない

先輩の瞳がまぶしい
このままじゃ僕の目がアブナイ
安全装置起動
目をつぶったボクの唇が核融合のキラメキ

微分しても小数点5桁になったら誤差の範囲。

ついに来たこの瞬間。

爆発するかと思ってたけど

現実は逆に

急速に静まるハート

そして冷却水が溢れる

メルトダウン回避。


192 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 11:18:56.47 arjP3sU90

警報が止んだ
力が抜けたボクは
そのまま先輩のヒザへ
倒れ込んだボクを
先輩の手が優しくあやす
「ね、ひとつお願い聞いてくれる?」
「今度から萌って呼んでいい?」
「…うん」
「良かった」
「萌も俺のこと、祐介でいいよ」
「…うん」
ボクは身体をひねって先輩の顔を見上げる
「…ゆ、祐介…」
「何?萌?」
「ありがとう…嬉しい…」
「俺も嬉しいよ」

ぼやける景色の中に2人の小指。
だけどそこだけはクッキリと、赤い糸が確かに繋がっていた。


195 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 11:23:42.29 arjP3sU90

合格発表は最近は電話で。
ある意味つまらない世の中。
だけどボクは祐介の部屋の中。
2人で子機の周りに群がる。

「電話、遅いな…ダメだったのかな」
「大丈夫、ボクがついてる。絶対大丈夫」
「萌が言うと心強いな」

騒ぎ出す子機
まるでカーニバル
祐介が震える手で拾い上げる。

「はい、九鬼ですが」

「はい」

「はい」

「そうですか。ありがとうございます」

祐介の顔がみるみる明るくなる。
ボクの顔もみるみる晴れていく。


196 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 11:34:43.60 arjP3sU90

桜が咲いた。
祐介とボクは一旦離ればなれ。
でも寂しくない、悲しくない

小指には赤い糸。
とっても長い赤い糸。


「萌、最近すごく大人っぽいね」
「そうかな?」
「うんうん。さすが恋する乙女だよねぇ」




「祐介、待たせちゃったね」
「そんなことないさ」


桜が2回咲いた。
小指の糸は今だけ桜色。
その代わり長さ0m…これからもずっとこの長さ…



fin
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