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淡い自我 946 hxLtfJ+G0

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946 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/27(佐賀県と汚職) 21:46:37.77 hxLtfJ+G0

軽く短いストーリーです。 

    • このままでは約五年後には-- パチン。
立体型のテレビからアナウンサーは消え、私のご主人様はソファーに体を委ねた。

「あのさー今日のご飯なに?」
「ハンバーグですよ」
「…わかったー」

 私の頭にインプットされた通り、手を動かしながら今後の予定を思い出す。
近日中にしなければならない事は…特になかった。
相変わらず手は休まずに、料理を作る。
頭の中ではご主人様の事を考えていた。

 元々養子として育てられたご主人様は、
早くに両親を無くして私が母親が代わり…になっている。
もうそろそろ十五歳で、たまにメンテナンスとプログラムのアップデートをして
くれる優しい男の子。

料理もほどよい具合になり二人で夕食を済ませた。

メンテナンスをしてもらう途中に
「オレ…○○のことが大好きなんだ」
「私もですよ。ご主人様。」
ほんのりピンクに頬を染めつつ嬉しそうなのにがっかりしているご主人様を見な
がら、私はプログラムされてない不思議なものを感じた。


948 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/27(佐賀県と汚職) 21:50:27.76 hxLtfJ+G0

次の日。

不思議に感じたそれは解消されずに残っている。
理由をご主人様に私は尋ねた。

「それって…多分恋だよ」
「…恋…ですか?」
頭の中で、恋の定義や恋の例え話が廻る。
「私はご主人様に恋してます。大好きです。」
「…お……オレもだよ」

私たちは抱き合い、優しいなにかに包まれた気がした。


949 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/27(佐賀県と汚職) 21:51:49.18 hxLtfJ+G0

946と>>948の続き

ピコン…軽やかな音と共に私は自動起動された。
いつもと変わらない朝。しかし、ご主人様には大きな変化があった。
いつもならすぐに起きてくるはずが今日は降りてくる気配すらない。
ドアの前に立ち、ノックをする。

コンコン…コンコン 静寂が辺りを支配する。
意を決して、
「入りますよー」
部屋への一歩を踏み出した。

そこには、ご主人様は居なかった。代わりに居るのは華奢な女の子。
「ご…主人…様…?」

小さな女の子は小さくうなずいた。
一瞬で事態を把握する私。
女の子になったご主人様は、なにかに怯えた小動物の様にぶるぶると震えている。
「大丈夫ですよ。落ち着いてください。私のご主人様はあなたなのですから」
私の声を聞くや否や、私に胸に飛び込んでくるご主人様。

「…ど…どう…し…よう。どうしよう」
「私がついていますから、安心して下さい。まずご飯を食べましょう」

ご主人様と二人でダイニングへと向かった。


950 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/27(佐賀県と汚職) 21:54:24.27 hxLtfJ+G0

949の続き

どこかぎこちなく、しかしゆっくりと二人で新しい道を進み始めた矢先…

コン…コンコン…
無機質なドアが誰かによって叩かれる。
その音を感じて、玄関に向かう。

「このような者です」
堅そうな人物が警察手帳を見せる。

「単刀直入に言いますが、あなたは再処理されることになりました。
 これが、犯した罪の内容と詳しいことが書いてあります」
 重い空気と進まない時間。それを打ち破るように、
「では…失礼します」

足早に警察官は去っていった。
とりあえず、渡された手紙を見る。
どうやら、自我のシステムに異常と違法性があるため、再処理する。とのこと。

ロボットは所詮ロボット。
人間でなく機械。
人ではなくモノ。
そんなただの金属に自我とは行き過ぎた代物だったのだろう…
ご主人様の優しい思いから生まれた自我の異常。
私には運命を受け入れることしか出来なった…


951 名前:以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします 投稿日:佐賀暦2006年,2006/10/27(佐賀県と汚職) 21:59:18.75 hxLtfJ+G0

950の続き

夜。

私は総てをご主人様に話した。

「それどういうことだよ! 何でそんなことになるんだ!」
「せっかくオレはアンタのおかげで立ち直れたのに…」
「思いも告白したのに、意味が無いじゃん!」

滝のように流れる涙と言葉を総て受け止めるように

「女の子がオレって言ってはダメですよ。ご主人様。
 私はあなたが大好きです。いまも、そしてこれからも大好きです」

温かいぬくもりを人工皮膚で感じ取りながら最後の言葉を出す。

タイミングを見計らったかのように、刑事さんたちが来て
私に、暴走防止のコードと自我の規制コードを打ち込む。
薄れていく意識の中で

(愛してます…ご主人様…)
最後の声は誰にも届かなかった…

淡い自我 おわり
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