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「萌 ◆PqUOSvmR0w」(2006/11/08 (水) 14:56:22) の最新版変更点
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*** 45 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 23:50:25.06 4QYNMOOX0
ボクには好きな人がいる。
バスケット部の九鬼先輩。
先輩はいつも光ってる。
先輩はいつも人に囲まれてる。
先輩はいつもかっこいい。
ボクは暗く目立たない。
ボクはいつも一人きり。
ボクはおっちょこちょいでかっこわるい。
こんなボクでも先輩が好き。
他の誰よりも、先輩が好き。
好きで好きでたまらないのに、
ボクと先輩の間には見えない壁がある。
ボクと先輩の間には、天から科せられた壁がある…
*** 51 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 23:58:05.10 4QYNMOOX0
先輩は背も高くて、イケメンで、面倒見が良くて。
ボクは背も低くて、平凡な顔で、ニブくって。
こんなボクが人を好きになっちゃいけないのかな?
こんなボクが先輩を好きになっちゃいけないのかな。
こんなボクでも先輩を好きになっても良いよね?
こんなボクだから先輩を好きになるの。
今朝も先輩に「おはようございます」って言って部屋を出てきた。
今日も先輩と一緒にバスに乗って登校してきた。
今日も先輩と一緒に授業を受けてる。
…写真の先輩だけど…
…写真の先輩だけど、これはボクだけの先輩。
ボク専用の、先輩。
*** 54 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:03:51.00 arjP3sU90
こんなに先輩のことが好きなのに、ボクはそのことを伝えられない。
ボクがこんなに見てること、先輩は知 ら な い。
なぜって?
…それは壁があるから。
天から与えられた壁があるから。
壁がわからない?
そんなことないよ、キミにも見える壁だよ。
だって、先輩は男だし、ボクは男の子だから。
この壁は絶対に越えられない。
この壁は絶対に壊せない。
そう信じてた。
うん、あのときまでは…
*** 60 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:14:09.04 arjP3sU90
凍てつくような木枯らしの吹く日、その壁は突然姿を消したんだ。
ボクはその日をベッドの中で迎えた。
きしむ身体を抱えて、でも意識ははっきりと壁が消えたことを感じ取っていたんだ。
ボクはブラを着けて
ボクはペチコートを履いて
ボクはセーラーを着て
ボクはスカートを履いて
ボクの新しい朝が始まった。
今朝もまた先輩に「おはようございます」を言う。
今朝もまた先輩と一緒にバスに乗る。
今朝もまた先輩と一緒に授業を受ける。
そしてライバル達の数をこっそりと数える。
ボクはもう昨日までのボクじゃない。
ボクにはもう壁がない。
ボクを留めるものはもう何もない。
*** 67 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:25:57.27 arjP3sU90
ボクは周到に準備する。
先輩と一緒にいられるのもあとわずか。
勝負は一瞬
その一瞬を永遠にするために。
それとなく先輩の周りを探る。
案外障害物は少なかった
これならあともう少し。
そして準備万端
失敗したらどうしよう、こんなボクでも微妙な乙女心?
クリスマスが来たらタイムアップ
なんとしてもそれまでには決めないと。
そして決行当日。
ボクは勝負用で身を固めて、先輩の元へ。
*** 74 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:36:06.32 arjP3sU90
ボクはついに先輩の前に立つ
この日のために悩んだ日々
この日のために暖めた想い
この日のために磨いた自分
さて判定は?
「ごめんな」
スレが落下するよりショックな言葉
壁の代わりに溝が出現
…しそうになるのを強引に引き下がる。
男の子の時には考えられないボクの態度
そんなボクの姿にボク自身が驚いてる
女の子って
女の子って…
ボクが言っちゃなんだけど、とっても強いものだったんだ
*** 82 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:52:19.29 arjP3sU90
でもやっぱり経験値が足りなかったらしい
今日の所は撤退撤退
でも初日だから、つかみだから。
転んでも泣かない、ボクは強くなった…のかな?
女の子パワー全開。
狙いはもう次に移ってる
クリスマス?お正月?それともバレンタインデー?
全部物にしてナンボでしょー
チャンスはいっぱいあるよね
時間もまだまだあるよね
がんばろう、おー。
*** 85 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:58:59.01 arjP3sU90
クリスマスの日は終業式の日
これを逃すと次は来年。
せっかくのお正月
フイにはしたくない。
サンタのおじさまボクにもプレゼント
ひとつでいいんです、先輩をください。
神頼み、仏頼み、サンタ頼み
人事を尽くして天命を待つと言うしね。
そんなこんなで第2ラウンド開始。
舞台は下校の昇降口
出てきた先輩
…隣にいる人は誰?
*** 92 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 01:16:13.25 arjP3sU90
なんてこったいブルータスおまえもか。
隣にいたのはうちのクラスの女の子。
出るか、引くか、それが超問題。
棚の裏からピンクのオーラ発散。
悩んでも悩んでも結論出ないよー、どうしよー。
あ、いつの間にか先輩一人になってるし。
これって天の助け?それともサンタおじさまのプレゼント?
ボクは再び先輩の前へ。
ありがとうサンタおじさま、ということにしておこう。
「またキミ?」
「ええ、またボクです」
「がんばるねぇ」
「それだけが取り柄なので」
「それじゃさようなら。また来年ね」
ちょおおおおっとまああああったぁ!
そこで去られちゃ困ります泣きます恨みます、いや恨んじゃダメです。
*** 100 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 01:30:33.67 arjP3sU90
>>99は自動君でしたorz
====
とにかくボクは先輩の跡を付ける。
道を越え塀を飛び
これなんてハットリ君?
あ、先輩が走り出したっ。
ボクもあわてて追う追う追う。
気がついたら先輩が後ろの方にっ
あれ?
ボクってこんなに足早かったっけ?
あっけにとられる先輩。
あっけにとったボク。
静かに先輩が歩み寄る。
ドキドキドキドキ
頭の上にポンと手が乗った。
「ちょっと話を聞こうか?」
キタ━━━(゚∀゚)━(∀゚)━(゚ )━( )━( ゚)━(゚∀)━(゚∀゚)━━━━━!!!!!
*** 166 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 08:59:42.24 arjP3sU90
場所は国道沿いの燃すバーガー
テーブルの向こうには先輩
テーブルのこっち側にはボク
あり得ないシチュエーション?
いいえ望んだシチュエーション。
でもドキドキが止まらない
dkdkdkdkdkdkdkdk
口を開いたのは先輩。
「足、早いね」
ソコカーーーーーッ
「いえ、それほどでも」
カエスナーーーーーーッ
見えないツッコミのあとはやっぱり大沈黙
どうしようなに話そう先輩の目がまぶしい
店員の目もまぶしい
(゚△゚) (゚д゚)
店員こっち見んな。
*** 168 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 09:16:59.45 arjP3sU90
えーとえーと
なんて言ったらいいんだろ
先輩の一番近くにいたいだけ
先輩の声を独り占めしたいだけ
先輩の目を独り占めしたいだけ
先輩の背中を独り占めしたいだけ
…たったそれだけなんだけど。
目の前で先輩が困ってる
目の前で先輩が時計見てる
ボクも先輩の前で時計を見る
無情な時計は17:23
窓の外はトワイライトゾーン
テーブルの上もトワイライトゾーン
ボクの唇が言葉の織物を紡ぐ
やっとの想いで
不器用な舌で
のどから出る魂、テーブルのトワイライトゾーンに飛び出た
*** 170 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 09:29:39.97 arjP3sU90
彷徨う魂、テーブルの上で踊ってる
2人の間で踊ってる
ボクと先輩、2人の魂がテーブルの上で混ざって…
先輩の耳から消えてった。
「…キミ、面白いね。今度また話してよ」
胸に突き刺さる矢じり
天使が本当にいた瞬間
幸せになれるって本当。
むしろ有頂天。
そして派手な頬紅を顔中に塗りたくる。
歩く圧力釜。
先輩に見えないところでピーピー鳴りっぱなし
どこをどう歩いたのかわからない
ここはどこなのか分からない
先輩が手を振ってる
ボクも手を振ってる
*** 171 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 09:36:16.41 arjP3sU90
圧力釜家に帰る。
蓋を開けたのはお母さん
覗き込むなり
「あー、炊きすぎてる。遅すぎたわね」
天使に射抜かれた心はトロトロ
先輩に射抜かれた心はトロトロ
形を保っていられない
流れ出したら大変。
除夜の鐘が鳴る
指折り数えるボク
108回鳴ったら約束の日
でも朝まで待てない
フライング電波
フライングメール
素早い手つきで
あり得ない速さで
0時ジャスト。
混み合う電波
届けこの想い。
*** 180 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 10:22:04.66 arjP3sU90
やっと届いた返事。
ラッシュに揉まれて、電子の雑踏踏み越えてきたのが分かる
「明けましておめでとう。今年もよろしく」
トロトロの心流れ出した。
夜が明ける
新しい年の夜が明ける
ボクはトロトロの心かき集めて型に流し込む
とっておきの服で固める
新しいバンス
新しいファー
お母さんのブローチ
ブローチはお守り
先輩の前で溶けたら大変。
時計は無情。
天気は上々
小春日和のお正月。
*** 181 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 10:29:07.22 arjP3sU90
「先輩、明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとう。中森さん」
名字で呼ばれる、まだそんなポジション。
でも今は2人きり
周りから見たらまさに恋人
ごった返す玉砂利
とっさに手が触れる
指の先から沸騰開始
圧力釜再び?
でも今日はお守りがある
お母さんのおまじない
恋愛大先輩
沸騰したのは右腕だけ
なんとかこらえてる
2人並んで初詣
ボクは恋愛成就
先輩は…きっと志望校合格だよね
*** 183 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 10:39:56.47 arjP3sU90
おみくじシェイク
1回100円の大勝負
「56番」
「88番」
8は大吉末広がり、幸せの予感ぺらりと目の前に。
『大凶』
なんてこったいオーマイガー
「なんて出た?」
さすがにこれは見せられない
CIAにだって知られちゃマズイ。
枝に結んで厄払い。
びっしり先客、みんな運悪すぎ、ボクもその一人。
「大吉よりラッキーなのがあるって知ってた?」
「え?知らないです、なんですかそれ?」
「大凶は大吉よりもラッキーなんだって」
えええええー。
すいませんさっきの厄払いは間違いなんです、ああもうどこにあるやら。
神様キャンセルは効きますか?
*** 187 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 10:58:47.52 arjP3sU90
手を繋いだまま帰り道
静かなお正月
響く靴音
鳴りっぱなしのマイハート
ぽかぽか暖かい公園のベンチ
ぽかぽか暖かい缶コーヒー
シュンシュン沸いてるボクの胸
「あのさ」
「はい」
「…いや、なんでもない」
「…」
このシチュエーションはもしかしてもしかする?
じっと見つめる瞳と瞳。
じりじり近づく小指と小指。
またも圧力釜一歩手前
でも今日はちょっと違ってる。
*** 189 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 11:07:37.67 arjP3sU90
さらに近づく顔と顔
その距離は微分の勢い
0に向かって限りなく近づく
けれど0には決してなれない
先輩の瞳がまぶしい
このままじゃ僕の目がアブナイ
安全装置起動
目をつぶったボクの唇が核融合のキラメキ
微分しても小数点5桁になったら誤差の範囲。
ついに来たこの瞬間。
爆発するかと思ってたけど
現実は逆に
急速に静まるハート
そして冷却水が溢れる
メルトダウン回避。
*** 192 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 11:18:56.47 arjP3sU90
警報が止んだ
力が抜けたボクは
そのまま先輩のヒザへ
倒れ込んだボクを
先輩の手が優しくあやす
「ね、ひとつお願い聞いてくれる?」
「今度から萌って呼んでいい?」
「…うん」
「良かった」
「萌も俺のこと、祐介でいいよ」
「…うん」
ボクは身体をひねって先輩の顔を見上げる
「…ゆ、祐介…」
「何?萌?」
「ありがとう…嬉しい…」
「俺も嬉しいよ」
ぼやける景色の中に2人の小指。
だけどそこだけはクッキリと、赤い糸が確かに繋がっていた。
*** 195 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 11:23:42.29 arjP3sU90
合格発表は最近は電話で。
ある意味つまらない世の中。
だけどボクは祐介の部屋の中。
2人で子機の周りに群がる。
「電話、遅いな…ダメだったのかな」
「大丈夫、ボクがついてる。絶対大丈夫」
「萌が言うと心強いな」
騒ぎ出す子機
まるでカーニバル
祐介が震える手で拾い上げる。
「はい、九鬼ですが」
「はい」
「はい」
「そうですか。ありがとうございます」
祐介の顔がみるみる明るくなる。
ボクの顔もみるみる晴れていく。
*** 196 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 11:34:43.60 arjP3sU90
桜が咲いた。
祐介とボクは一旦離ればなれ。
でも寂しくない、悲しくない
小指には赤い糸。
とっても長い赤い糸。
「萌、最近すごく大人っぽいね」
「そうかな?」
「うんうん。さすが恋する乙女だよねぇ」
「祐介、待たせちゃったね」
「そんなことないさ」
桜が2回咲いた。
小指の糸は今だけ桜色。
その代わり長さ0m…これからもずっとこの長さ…
fin
*** 45 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 23:50:25.06 4QYNMOOX0
ボクには好きな人がいる。
バスケット部の九鬼先輩。
先輩はいつも光ってる。
先輩はいつも人に囲まれてる。
先輩はいつもかっこいい。
ボクは暗く目立たない。
ボクはいつも一人きり。
ボクはおっちょこちょいでかっこわるい。
こんなボクでも先輩が好き。
他の誰よりも、先輩が好き。
好きで好きでたまらないのに、
ボクと先輩の間には見えない壁がある。
ボクと先輩の間には、天から科せられた壁がある…
*** 51 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 23:58:05.10 4QYNMOOX0
先輩は背も高くて、イケメンで、面倒見が良くて。
ボクは背も低くて、平凡な顔で、ニブくって。
こんなボクが人を好きになっちゃいけないのかな?
こんなボクが先輩を好きになっちゃいけないのかな。
こんなボクでも先輩を好きになっても良いよね?
こんなボクだから先輩を好きになるの。
今朝も先輩に「おはようございます」って言って部屋を出てきた。
今日も先輩と一緒にバスに乗って登校してきた。
今日も先輩と一緒に授業を受けてる。
…写真の先輩だけど…
…写真の先輩だけど、これはボクだけの先輩。
ボク専用の、先輩。
*** 54 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:03:51.00 arjP3sU90
こんなに先輩のことが好きなのに、ボクはそのことを伝えられない。
ボクがこんなに見てること、先輩は知 ら な い。
なぜって?
…それは壁があるから。
天から与えられた壁があるから。
壁がわからない?
そんなことないよ、キミにも見える壁だよ。
だって、先輩は男だし、ボクは男の子だから。
この壁は絶対に越えられない。
この壁は絶対に壊せない。
そう信じてた。
うん、あのときまでは…
*** 60 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:14:09.04 arjP3sU90
凍てつくような木枯らしの吹く日、その壁は突然姿を消したんだ。
ボクはその日をベッドの中で迎えた。
きしむ身体を抱えて、でも意識ははっきりと壁が消えたことを感じ取っていたんだ。
ボクはブラを着けて
ボクはペチコートを履いて
ボクはセーラーを着て
ボクはスカートを履いて
ボクの新しい朝が始まった。
今朝もまた先輩に「おはようございます」を言う。
今朝もまた先輩と一緒にバスに乗る。
今朝もまた先輩と一緒に授業を受ける。
そしてライバル達の数をこっそりと数える。
ボクはもう昨日までのボクじゃない。
ボクにはもう壁がない。
ボクを留めるものはもう何もない。
*** 67 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:25:57.27 arjP3sU90
ボクは周到に準備する。
先輩と一緒にいられるのもあとわずか。
勝負は一瞬
その一瞬を永遠にするために。
それとなく先輩の周りを探る。
案外障害物は少なかった
これならあともう少し。
そして準備万端
失敗したらどうしよう、こんなボクでも微妙な乙女心?
クリスマスが来たらタイムアップ
なんとしてもそれまでには決めないと。
そして決行当日。
ボクは勝負用で身を固めて、先輩の元へ。
*** 74 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:36:06.32 arjP3sU90
ボクはついに先輩の前に立つ
この日のために悩んだ日々
この日のために暖めた想い
この日のために磨いた自分
さて判定は?
「ごめんな」
スレが落下するよりショックな言葉
壁の代わりに溝が出現
…しそうになるのを強引に食い下がる。
男の子の時には考えられないボクの態度
そんなボクの姿にボク自身が驚いてる
女の子って
女の子って…
ボクが言っちゃなんだけど、とっても強いものだったんだ
*** 82 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:52:19.29 arjP3sU90
でもやっぱり経験値が足りなかったらしい
今日の所は撤退撤退
でも初日だから、つかみだから。
転んでも泣かない、ボクは強くなった…のかな?
女の子パワー全開。
狙いはもう次に移ってる
クリスマス?お正月?それともバレンタインデー?
全部物にしてナンボでしょー
チャンスはいっぱいあるよね
時間もまだまだあるよね
がんばろう、おー。
*** 85 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 00:58:59.01 arjP3sU90
クリスマスの日は終業式の日
これを逃すと次は来年。
せっかくのお正月
フイにはしたくない。
サンタのおじさまボクにもプレゼント
ひとつでいいんです、先輩をください。
神頼み、仏頼み、サンタ頼み
人事を尽くして天命を待つと言うしね。
そんなこんなで第2ラウンド開始。
舞台は下校の昇降口
出てきた先輩
…隣にいる人は誰?
*** 92 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 01:16:13.25 arjP3sU90
なんてこったいブルータスおまえもか。
隣にいたのはうちのクラスの女の子。
出るか、引くか、それが超問題。
棚の裏からピンクのオーラ発散。
悩んでも悩んでも結論出ないよー、どうしよー。
あ、いつの間にか先輩一人になってるし。
これって天の助け?それともサンタおじさまのプレゼント?
ボクは再び先輩の前へ。
ありがとうサンタおじさま、ということにしておこう。
「またキミ?」
「ええ、またボクです」
「がんばるねぇ」
「それだけが取り柄なので」
「それじゃさようなら。また来年ね」
ちょおおおおっとまああああったぁ!
そこで去られちゃ困ります泣きます恨みます、いや恨んじゃダメです。
*** 100 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 01:30:33.67 arjP3sU90
>>99は自動君でしたorz
====
とにかくボクは先輩の跡を付ける。
道を越え塀を飛び
これなんてハットリ君?
あ、先輩が走り出したっ。
ボクもあわてて追う追う追う。
気がついたら先輩が後ろの方にっ
あれ?
ボクってこんなに足早かったっけ?
あっけにとられる先輩。
あっけにとったボク。
静かに先輩が歩み寄る。
ドキドキドキドキ
頭の上にポンと手が乗った。
「ちょっと話を聞こうか?」
キタ━━━(゚∀゚)━(∀゚)━(゚ )━( )━( ゚)━(゚∀)━(゚∀゚)━━━━━!!!!!
*** 166 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 08:59:42.24 arjP3sU90
場所は国道沿いの燃すバーガー
テーブルの向こうには先輩
テーブルのこっち側にはボク
あり得ないシチュエーション?
いいえ望んだシチュエーション。
でもドキドキが止まらない
dkdkdkdkdkdkdkdk
口を開いたのは先輩。
「足、早いね」
ソコカーーーーーッ
「いえ、それほどでも」
カエスナーーーーーーッ
見えないツッコミのあとはやっぱり大沈黙
どうしようなに話そう先輩の目がまぶしい
店員の目もまぶしい
(゚△゚) (゚д゚)
店員こっち見んな。
*** 168 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 09:16:59.45 arjP3sU90
えーとえーと
なんて言ったらいいんだろ
先輩の一番近くにいたいだけ
先輩の声を独り占めしたいだけ
先輩の目を独り占めしたいだけ
先輩の背中を独り占めしたいだけ
…たったそれだけなんだけど。
目の前で先輩が困ってる
目の前で先輩が時計見てる
ボクも先輩の前で時計を見る
無情な時計は17:23
窓の外はトワイライトゾーン
テーブルの上もトワイライトゾーン
ボクの唇が言葉の織物を紡ぐ
やっとの想いで
不器用な舌で
のどから出る魂、テーブルのトワイライトゾーンに飛び出た
*** 170 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 09:29:39.97 arjP3sU90
彷徨う魂、テーブルの上で踊ってる
2人の間で踊ってる
ボクと先輩、2人の魂がテーブルの上で混ざって…
先輩の耳から消えてった。
「…キミ、面白いね。今度また話してよ」
胸に突き刺さる矢じり
天使が本当にいた瞬間
幸せになれるって本当。
むしろ有頂天。
そして派手な頬紅を顔中に塗りたくる。
歩く圧力釜。
先輩に見えないところでピーピー鳴りっぱなし
どこをどう歩いたのかわからない
ここはどこなのか分からない
先輩が手を振ってる
ボクも手を振ってる
*** 171 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 09:36:16.41 arjP3sU90
圧力釜家に帰る。
蓋を開けたのはお母さん
覗き込むなり
「あー、炊きすぎてる。遅すぎたわね」
天使に射抜かれた心はトロトロ
先輩に射抜かれた心はトロトロ
形を保っていられない
流れ出したら大変。
除夜の鐘が鳴る
指折り数えるボク
108回鳴ったら約束の日
でも朝まで待てない
フライング電波
フライングメール
素早い手つきで
あり得ない速さで
0時ジャスト。
混み合う電波
届けこの想い。
*** 180 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 10:22:04.66 arjP3sU90
やっと届いた返事。
ラッシュに揉まれて、電子の雑踏踏み越えてきたのが分かる
「明けましておめでとう。今年もよろしく」
トロトロの心流れ出した。
夜が明ける
新しい年の夜が明ける
ボクはトロトロの心かき集めて型に流し込む
とっておきの服で固める
新しいバンス
新しいファー
お母さんのブローチ
ブローチはお守り
先輩の前で溶けたら大変。
時計は無情。
天気は上々
小春日和のお正月。
*** 181 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 10:29:07.22 arjP3sU90
「先輩、明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとう。中森さん」
名字で呼ばれる、まだそんなポジション。
でも今は2人きり
周りから見たらまさに恋人
ごった返す玉砂利
とっさに手が触れる
指の先から沸騰開始
圧力釜再び?
でも今日はお守りがある
お母さんのおまじない
恋愛大先輩
沸騰したのは右腕だけ
なんとかこらえてる
2人並んで初詣
ボクは恋愛成就
先輩は…きっと志望校合格だよね
*** 183 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 10:39:56.47 arjP3sU90
おみくじシェイク
1回100円の大勝負
「56番」
「88番」
8は大吉末広がり、幸せの予感ぺらりと目の前に。
『大凶』
なんてこったいオーマイガー
「なんて出た?」
さすがにこれは見せられない
CIAにだって知られちゃマズイ。
枝に結んで厄払い。
びっしり先客、みんな運悪すぎ、ボクもその一人。
「大吉よりラッキーなのがあるって知ってた?」
「え?知らないです、なんですかそれ?」
「大凶は大吉よりもラッキーなんだって」
えええええー。
すいませんさっきの厄払いは間違いなんです、ああもうどこにあるやら。
神様キャンセルは効きますか?
*** 187 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 10:58:47.52 arjP3sU90
手を繋いだまま帰り道
静かなお正月
響く靴音
鳴りっぱなしのマイハート
ぽかぽか暖かい公園のベンチ
ぽかぽか暖かい缶コーヒー
シュンシュン沸いてるボクの胸
「あのさ」
「はい」
「…いや、なんでもない」
「…」
このシチュエーションはもしかしてもしかする?
じっと見つめる瞳と瞳。
じりじり近づく小指と小指。
またも圧力釜一歩手前
でも今日はちょっと違ってる。
*** 189 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 11:07:37.67 arjP3sU90
さらに近づく顔と顔
その距離は微分の勢い
0に向かって限りなく近づく
けれど0には決してなれない
先輩の瞳がまぶしい
このままじゃ僕の目がアブナイ
安全装置起動
目をつぶったボクの唇が核融合のキラメキ
微分しても小数点5桁になったら誤差の範囲。
ついに来たこの瞬間。
爆発するかと思ってたけど
現実は逆に
急速に静まるハート
そして冷却水が溢れる
メルトダウン回避。
*** 192 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 11:18:56.47 arjP3sU90
警報が止んだ
力が抜けたボクは
そのまま先輩のヒザへ
倒れ込んだボクを
先輩の手が優しくあやす
「ね、ひとつお願い聞いてくれる?」
「今度から萌って呼んでいい?」
「…うん」
「良かった」
「萌も俺のこと、祐介でいいよ」
「…うん」
ボクは身体をひねって先輩の顔を見上げる
「…ゆ、祐介…」
「何?萌?」
「ありがとう…嬉しい…」
「俺も嬉しいよ」
ぼやける景色の中に2人の小指。
だけどそこだけはクッキリと、赤い糸が確かに繋がっていた。
*** 195 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 11:23:42.29 arjP3sU90
合格発表は最近は電話で。
ある意味つまらない世の中。
だけどボクは祐介の部屋の中。
2人で子機の周りに群がる。
「電話、遅いな…ダメだったのかな」
「大丈夫、ボクがついてる。絶対大丈夫」
「萌が言うと心強いな」
騒ぎ出す子機
まるでカーニバル
祐介が震える手で拾い上げる。
「はい、九鬼ですが」
「はい」
「はい」
「そうですか。ありがとうございます」
祐介の顔がみるみる明るくなる。
ボクの顔もみるみる晴れていく。
*** 196 名前: ◆PqUOSvmR0w 投稿日:佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 11:34:43.60 arjP3sU90
桜が咲いた。
祐介とボクは一旦離ればなれ。
でも寂しくない、悲しくない
小指には赤い糸。
とっても長い赤い糸。
「萌、最近すごく大人っぽいね」
「そうかな?」
「うんうん。さすが恋する乙女だよねぇ」
「祐介、待たせちゃったね」
「そんなことないさ」
桜が2回咲いた。
小指の糸は今だけ桜色。
その代わり長さ0m…これからもずっとこの長さ…
fin
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