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*** 213 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/12(火) 00:40:09.76 IHrccujX0 「じゃぁさ、このお茶の缶をお盆に乗せて、好きなポーズ取ってみてよ」  皆からちょっと離れた場所に来ると、1人の男が、缶を持ってきた。 「う、うん…」  決めポーズ以外なんて思いつかない…と、お盆に缶を乗せつつ考えてみたけど、 それ以前に、片手ではお盆を上手くバランスを取る事が出来なかった。  しょうがないので、体の前でお盆を両手で支えるしかなかった。 「じゃ撮るよ!」  幾度かシャッターを切る為、男の指が動く。 「もっと笑ってよ!」 「あ、はい」  笑ってるかな…とりあえず、面白かった事を思い浮かべてみた。 「…ありがとう。もうちょっと撮ってもいい?」 「このお茶飲んでいいから。あ、開けてあげるよ」  あちこちで同時に声をかけてくるから、どれに答えていいのか分からない でいると、お茶の缶は取り上げられ、さっきまで撮影してた男が近寄ってきた。 「ほら、こんな感じ。良くない?だから、もうちょっと撮影させてよ」  デジカメの液晶に映った少女。そこには、確かに姿見に映っていた少女が、 はにかみながらお盆を手にしていた。 「もうちょっとだけなら…」 「やった!ほらお茶どうぞ」 「ありがとう」  なんとなく楽しくなってきていた俺は、もうちょっとだけなら…そう思いつつ もらったお茶を口にした。乾いた喉と身体に沁み渡る感じがした。 「次は…あの木の辺りどう?」 「うん」  歩き始めた男達の後を追うように足を運び始めた俺は、急にくらっとする 感覚に襲われた。 「あ、大丈夫?あの辺りちょうど日陰だね」  変な感覚はすぐ治ったけど、腕を支える、と言うよりは掴むように握り、 歩き始めたこの状況には、改めて不安が込み上げてきていた。 *** 214 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/12(火) 00:41:24.48 IHrccujX0 「そうだなぁ。木に寄りかかってみてよ」  下は草が生え、周囲には複数の木が植えられている一角。  寄りかかって男達を見ると、この公園の建物の裏も見えた。  端の方なのか、人の姿は見えない。  何枚か写真を撮ったら、次の要求を指示された。 「そうだなぁ…エプロン取ってみない?」 「えっ?」  なんでエプロンを取るのか、意図が分からないで居ると、いつの間にか脇に 2人の男が近寄ってきていた。 「いいじゃん。ほら」  それぞれ俺の腕を掴み、残った手で後ろのリボンを引く。身体を押さえていた エプロンは、自由を得てふわっと浮く。 「えっ?」  腕を振り払おうとしたが、力が出ない。元々インドア派だから力は無いし、 女体化したから更に弱くなってるけど、全身から力が抜けていく感じがする。  俺はなされるがまま、エプロンを取られてしまった。 「いいね。うるんちゃん、可愛いよ」  撮影している男が近づいてきた。シャッターは切っていない。  シャッターを、切っていない…でも、デジカメのあの赤いランプは、何?  そこで。今は動画で撮影されている事に気が付いた。 『なんで動画で撮影してる!?』  そう問いかけようとしたんだが、声が出なかった。 「そろそろかな」  訳の分からない言葉のあと、右隣に居た男がこそっと理由を教えてくれた。 「さっきのお茶にね、薬入れさせてもらった。大丈夫、気持ちいいからね」  ようやく、自分の置かれている状況を把握した。でも、もう逃げられなかった。 *** 217 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/12(火) 00:43:50.09 IHrccujX0 「さーて。この下はどうなってるのかな?」  俺の目の前まで移動してきた撮影の男は、浴衣風の衣装に手をかけてきた。  既製品で簡単に着れる衣装なので、脇のリボンを解けばすぐに…。 「おっ!さすが分かってるね!うるんちゃんは、ピンクの下着だよね~」  はらりと前が別れ、身体前面が露出する。  下着。一度、アニメで脱げた事があり、その時がピンクの下着だったのだ。 オタとして、その辺りは押さえたかった。 「では。うるんちゃんを隅から隅までチェックしてみようね」  その姿を舐めるように、上から下へ、下から上へとデジカメを動かす。  そして男は俺の胸を触ってきた。 「うるんちゃん、気持ちいいかな??」  ブラを上へ押し上げる感覚がした。胸に風が当たる。  そしてふにふにと胸を触った後、次には、乳首辺りを突付いたり、押した ままぐりぐりと動かしたりしてきた。以前触った時の切ない感じが横切るが、 触られたくはない思いも込み上げてきた。 「…ダメ…」  けれど、反抗しようにも思うように言葉が発せられない。出せたとしてもこの 程度で、反論にも同意にも取れる一言になってしまった。 「おっ、乳首立ってきた。気持ちよさそうだね~。次は下に行ってみようね」  手は胸を離れ、下へと移動しているようだ。顔を動かす事すらままならない。 触られないよう、足を閉じて抵抗しようにも、力が入らない。 *** 218 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/12(火) 00:45:18.63 IHrccujX0 「可愛いパンツだね。じゃ、触るね」  手前からぷにぷにと触りだし、その内、摩るような感じに。 「んー。中はどうなってるかな」  腰から移動した布が、ふとももにあたる感じが。背筋をぞくっとする感覚が襲う。 「気持ちいいのは、この辺りかな??」  容赦なく男が股の奥へと指を進める。その内にアノ場所を攻撃し始めた。 「ん…んん…」  身体を痺れるような感覚が襲う。思わず声が出てしまう。  その内、両脇にいる男達は、それぞれの側の両胸を触り始めていた。 「可愛いねえ。すごく感じてる顔、いいよ」  感じてる…そんな顔してるの!?男に襲われてるのに!?  自分の感情に嫌悪感を抱きながらも、受ける感覚からか顔や熱さを覚える。 「感じてるって事は、じゃ、こっちはどうかな?」  更に奥へと指が進んでいく。男の手のひらは、恥丘を包むように押し当てて きていた。 「やっぱり、すごく濡れてる。やらしいね、うるんちゃん」  ぬるぬると触られてる感じが気持ち悪い。気持ち悪いけど、コントロールの 効かない身体は、感覚のおよぼすままの反応を起こし続けている。 「パンツ、脱いじゃおうか」  そう言うな否や。撮影してる男はするりと、パンツを足元へと落としてしまった。 簡単にひざを曲げられてしまい、両足から抜き取られてしまう。 「ぬるぬるの奥が知りたいな~。指、何本入るかな」  もっと粘っこくなった口調を合図に、両脇の男が、今度はそれぞれの側の 足を取り、外側へと引っ張る。完全に股が無防備になった。  撮影の男が近づいてくる。手が再び下に伸び、股を包むように押し当てる。 「まずは一本」  そう言うと、指がぬるぬるしている箇所に当てられた。  まだ。まだ自分でも怖くて入れてない、あの場所に。 *** 493 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/13(水) 00:32:59.08 uX0ifto20  なんでこの男達と来てしまったんだろう。なんでお茶飲んだんだろう。  なんで喋れないんだろう。なんで力が出ないんだろう。  なんで。こんな状態なのに、触られる感覚はあるんだろう。  様々な想いが駆け巡る。  この後は、恐ろしい事が迫っている、その訪れはスローモーションのように 感じた。想いが駆け巡ったのは一瞬だったはずなのに。  ぬるぬるを2、3度味わうように、秘所全体を指が這う。そして。遂に指は 奥への入り口で止まり、ぐっと進み始めた。  思わず目を瞑っていた。と、同時に、涙が両頬を伝う。 「お前ら!何やってるんだ!!」  不意に現れた声に、指が身体から離れる。  カシャ。…この音は、携帯のカメラのシャッター音?  目を開けると、カメラをこちらに向けた、見覚えのある男が立っていた。 「証拠は撮ったからな!その子から離れろ!」  携帯をいじりながら、男が言い放つ。保存してるのか。  さっき一緒にウッドのコスプレしてポーズ取ってた男だ。えっと名前…頭が 朦朧として思い出せない。 「…んだって?」  目の前の男はデジカメをいじると、その男に向かいだした。デジカメから 赤いランプが消えていた。  俺はまだ、両脇を男達に捕まったままだ。そいつらがどんな顔をしている かは、顔を動かせない為に分からないが、多分、睨み付けていると思う。 「お前、何やってんだよ?…痛い目に合いたいのか!!!」  撮影してた男はそう言いながら、その男に歩み寄ろうとした瞬間。 「あー!あそこです!警備員さん!!!」  遠くから女の子の声がした。右奥から数人走ってくるのが見える。 *** 495 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/13(水) 00:34:55.37 uX0ifto20 「ちっ」  俺の右にいる男が舌打ちする。 「逃げるぞ!」  デジカメを持った男が、早口言うや否や、急に俺の身体はバランスを崩した。  2人が手を離したからだ。でも運良く木に寄りかかっていたので、ずるずると すべり、酷い痛みも無く地面にたどり着く。  その間、視界には、3人の男が左へと走っていくのが見えた。  携帯カメラで撮られても、画質を思えば逃げた方が助かる、そう判断したの だろうか。 「逃げたー!警備員さん。逃げたーっ!!」  マイのコスプレをした女の子の甲高い声が響く。いつの間にか女の子を抜いて いた警備員達は、真っ直ぐ3人を追い始めた。女の子も何故かその後を追う。  それを見ながら、助けに来てくれた男が近づいてきた。 「もう大丈夫だよっ…と」  近くまで来ると俺の方に振り向いたが、すぐ明後日を向いた。  まだ薬の利いている俺は、M字開脚で座りっぱなしだったから。 「と、とりあえず、これ」  上着を脱ぐと俺に被せてくれた。 「怖くて動けないかな。もう、大丈夫だよ」  再び振り向いた男は、優しい眼差しで近づき、近くにしゃがみこむ。  怖くて動けないわけではない。でも理由を伝えて、動かしてもらわないと、 このまま人が集まってこられても困る…。 「…ちが……からだ………くすり…」  全神経を口に集めるようにして、声を絞り出した。 *** 501 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/13(水) 00:50:46.58 uX0ifto20  男は、口調のままならない俺の言葉にきょとんとした表情をしたが、状況 から把握したのか、ものすごい表情に変わった。 「あんの野郎!!!!!」  ドスの効いた声を放つと立ち上がる。 「…ダメ…いっちゃ…」  ふっ…と、意識が急激に落ちる感じがして、目の前が真っ暗になる。身体が 揺れた感じもする。 「大丈夫か!」  そんな声が聞こえ、そして、何か広くて暖かい物に触った感覚があった。 「…」  まぶたを開くと。俺は横になっていた。  この、背中に当たる感触…布団…。  という事は、運んでくれたのか。あの…ダメだ。まだ頭が働かなくて、名が 出てこない、あの男に、ここまで…。  けだるい感じがする。でも、なんとか右手を動かす事は出来た。  一旦、身体の動く事が分かると、左手はさっきよりも、スムーズに動かす 事が出来た。 「あ…」  掛け布団から手を出し、右を向くと、あの女の子が居た。思わず声が漏れる。 「あ!気が付いた!?大丈夫!?」  勢いよく駆け寄ってくるのを見て、ちょっとびっくりしたが、眉をひそめ、 ものすごく不安な表情で、俺の右手を両手で掴む。その動作、表情を見たら、 急になんだか涙が出そうな気分になって、 「うん」 まだろれつの廻らない口調で、そう応えた。  そう。あの男が向かって来なかったら、この子が警備員を呼んで来なかったら。 「…ありがとう」  俺が再び口を開くと、うんうん、と女の子は泣きそうな表情になりながら 頷いていた。 ***97 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/15(金) 00:00:47.32 aoVQmzRt0  手伝ってもらいながら、俺は上半身を起こした。水を飲んだら、ちょっとは 気分が良くなった気がした。少しずつ話していたら、ろれつの悪さも治まって きている。 その間に、あの3人の男は取り押さえられた事を聞いた。  そこで、勢い良くドアが開いた。 「あき!」  お袋が飛び込んできた。もの凄い表情をしている。  そして俺の顔を見つけるなり、そのままの勢いで近づいてきて、俺を抱きしめて きた。がばっという効果音がしそうなぐらいの勢いで。 「あき!危ない事しちゃダメって言ったのに!  頭痛くない?バージン奪われてない?怪我してない?大丈夫なの?」  ちょwww相変わらずだなwww空気嫁wwwww  と、ちょっと思ったが、お袋の目に涙が浮かんでるのが見えて。 「大丈夫。どれもこれも心配いらないよ」  それだけ、応えていた。  その言葉を聞くと、お袋はさらに強く抱きしめてきた。それはどこか映画や ドラマのようだった。でも、見てるのとは違う、お袋の懐かしい暖かさは俺を 包み、実際の事なんだと自覚する。 「ごめんな、心配かけて」  俺は、そう言葉を付け足した。 *** 99 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/15(金) 00:02:47.98 aoVQmzRt0 「あ…あの。あき…ちゃんのお母さん」  その声に、俺とお袋は顔を一方向に向ける。 「は、初めまして。今日あきちゃんとは出会ったばかりですが、今日のイベントで 一緒に参加していた…白石真樹(しらいし まき)って言います。  参加していた私が言うのもなんですが、今日のイベントは、まったく危険なもの ではなく、ただ、気の合う仲間同士が楽しむイベントでした。  でも、参加初めてなあきちゃんは、それを利用した悪い人に、運悪く出会って しまったんです。あきちゃんは悪く無いです。どうか、怒らないで下さい」  一気に言い切ると一礼をし、足早にドアへと向かっていた。 「あ…」  俺は何か言おうとしたんだけれど、言う言葉が見るからず。  その声に反応して、一瞬俺と視線が合ったけど、すぐ部屋から出て行って しまった。  その視線、表情は、どこか憂いげだった。 「お袋。心配かけて本当に悪かった。でも先の真樹さんが言ったのは本当で」 「分かってる。あんな礼儀正しい子が悪い事が出来る訳が無い。  ただ、私が言ってた危ない事と言うのは、あきは女の子になったのだから、 周囲の対応が変わってくる、それを見極められるように気を付けて、と言いた かったの。  ちゃんと言わなかった私が悪かったよね」  それは自分の自覚の問題で、お袋は悪く無い…そう言いたいのに、何故か ぐっと心が詰まって声にならない。 「だって、私は女体化の先輩だもの。  だから、これからも何かあったら相談していいからね」  俺は黙って、ただ、ただ頷いた。 *** 100 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/15(金) 00:04:29.68 aoVQmzRt0  この場所には親父も来ていた。別の部屋で、事件について聞いていたようだ。 「なぁ、あき。このまま晩飯食ってくか」  帰りの車の中。親父がぼそっと言う。 「うん…じゃ、ハンバーグが喰いたい」 「喰いたいじゃなくて、食 べ た い」  お袋が、即座に突っ込みを入れる。  はい…とちょっと小さくなると、続けて、私のハンバーグも美味しいのに、 と愚痴もこぼしていた。  親子で外食は久し振り。理由は簡単だ。俺が休日は引きこもっていたからだ。 それに、この年齢では、親と一緒に食事も気恥ずかしく思っていたから。  でもたまには、連れてってもらえるなら、出てもいいかな、そんな気分に なっていた。  俺は帰宅後、コスプレ衣装を取り出した。  お袋が、似合ってたし可愛い衣装だから、洗濯しようか?と言ってきたからだ。  嫌な思い出のある服だ。捨ててもいいはずだけど、実はまだ、女に変わった 自分を、どこか客観的に見てる節がある。  おまけにずっと欲しかった衣装だら、とりあえず捨てるのももったいないしと、 洗濯してもらう事にした。  はらり。何かが落ちる。  あの真樹さんが渡してきたメアドの記載されている名刺だった。  そこにはコス用ネームで「可憐」と書いてある。  そうだ、あの時可憐って名乗ってた。  意を決して、本名でお袋を説得してくれた事、その事に付いてまだお礼を言って ない事を思い出し、服を洗濯かごに入れると、俺は早速メールする事にした。 *** 101 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/15(金) 00:06:20.51 aoVQmzRt0 『可憐@白石真樹さん  本日、襲われた所を助けてもらった、前原秋です。  今日は本当にありがとうございます。それに母にフォローも入れてくれて。  本当にありがとう。』  そんな出だしから始まり、お袋は怒ってない事、何故、本名で申し出てくれたのか。  あと、もし迷惑じゃなければ、これからもメールとかで繋がりを持たせてもらい たい事、そんな事を書き連ねて、送信した。  学校で女の子に囲まれても、以前の自分を知られているのもあって、なかなかいい、 人の繋がりを持てないでいた。変わる前よりは違うけど。  でも、真樹さんなら仲良くなれそうな気がした。 暫くしたら、ディスクトップのアニメキャラが「ご主人様、メールが届きましたよ」と 教えてくれた。メーラーをチェックすると、真樹さんからだった。 『前原秋さん  今日は本当に大変な目にあって、お疲れ様でした。  恐怖を味わったとは言え、大変な所まで悪戯されて無いと聞いて安心しました。 本名を名乗ったのは、あの場面でコス用ネームを名乗っても、信憑性が無いから(笑)  あと、なんだかあきちゃんとは仲良く出来そうな気がしたの。だから、メールも もらえて、本当に嬉しかった。良かったら真樹って呼んで』  そこまで読んで、いい人に出会えて良かったなぁ、と、つくづく思った。 『P.S. そうだ。そのイベントで一緒に撮った写真だけど、どうしよう。』  最後に、そんな言葉も添えられていた。  どうしよう…でも。少し悩んでから、返事を送信した。 *** 102 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/15(金) 00:11:24.50 aoVQmzRt0 『真樹さん  メールありがとう。人を名前だけで呼ぶ事が今まで無かったので、ちょっと 抵抗があるから、さん付けで許して下さいw  こちらこそこれらも、宜しくお願いします。  写真だけど良かったらもらえますか?折角仲良くなった記念ですから』  やっぱりまだ、可愛くなった自分を第3者で見ているのかもしれない。  受け入れ切れてないのかな。日常生活上、どうしても自分が女になったと 言う事を感じる場面は多いけど、可愛くなって周囲の対応も変わった、そんな 自分を守りたいような気分が起こっていたのも確か。  だから、似合っていると思ったあの衣装を来た自分の写真が欲しいのかも。  いや、折角3人で写った写真だからな気もする。  そう思うと、ことさら欲しい思いが強くなっていた。  翌日、返信が届いた。 『了解!でも写真を撮ってた知り合いは、紫苑(実は私のいとこ。本名は 孝昌(たかまさ))の友達だから、孝昌から直接送らせるね。  もしよかったら、いつかまた一緒にイベントいけるといいね。一緒なら 衣装代はそんなにかからないよ。だって孝昌が裁縫得意なんだもん』  あの衣装は、孝昌さんの手作りだったのか。意外性にびっくりした。 *** 103 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/15(金) 00:13:05.98 aoVQmzRt0  …それにしても、直接メールのやり取り出来ちゃうんだぁ…。  気が付くと、いつメールが来るのかな、とか考えていた。 「バカ。もう夜遅いじゃん。いくらなんでも来ないよな…」  ぼそっと呟くと、俺はベットに倒れこんだ。なんとも言えない感覚に襲われて いる気分。  それを振り払うように、俺はなんとなく今日を振り返っていた。  女体化前は、やれるなら誰だっていい。そんな風に思った時もありました。  なんて言ってられるのは男だけなんだろうか。思い出せば出すほど、 一つ々々が気持ち悪くて、おぞましいという言葉が似合う。  そこに現れた、孝昌さん…。  実質は殴り合いしたりしてないけど、3人の動きが止まってしまうほどの気迫。  それを見ていて、どうなってしまうのかはらはらしたのは事実だが、ちょっと だけ安心したのも事実。 「女だったら、こういうシチュエーション。相手に惚れちゃうんだろうな…」  無意識のうちにそんな言葉が飛び出していた。 「あれ?…」  ふと思い出す。  俺って今、女だよね?  3人の動きを止めてくれた、あの行動。あいつらが逃げてからは、ゆっくりと 近づいて、動けない自分に上着をかけてくれた、その行動。  そして、あいつらを追いかけようとしたのを見た瞬間、どうしても行って欲しく なかったあの感情。  あれ?俺、まさか…もしかして…。 *** 426 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/19(火) 10:52:18.99 8du5wq+D0  暗い部屋で目覚めた俺は、ドアの隙間から光が漏れているのをなんとなく 見ながら、部屋の明かりを付ける。  姿見には、目の周りを赤く晴らした少女が居た。  これが俗に言う…。  透き通るような白い肌なせいもあると思うが、これは酷い。  腫れを取るには、冷やすんだっけ?暖めるんだっけ?  ぼーっとする頭でそう考えながら、俺は部屋を出た。  そこには、注文していた予約販売で注文したフィギィアの箱が置いてあった。  両親は、食事をしている時も、その後も、特に何も言ってこなかった。  ただ、部屋に戻ろうとした時に、親父が一言、 「困った事があれば、なんでも言えよ」 とだけ…。俺は短く、 「うん」 とだけ答えると、その場を去った。  部屋に戻っても、何もやる気はせず、そのまま眠りについていた。  次の日が日曜だったのは、運が良かったのか。  のんびり起きて、適当にご飯食べて。  いい天気だと窓から確認をしても、外に出る気がしなかった。  なんとなくパソコンを立ち上げる。気の紛れる祭とか起こってるかもしれない。  だが、待っていたのは、新着メールだった。 *** 427 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/19(火) 10:53:21.71 8du5wq+D0  一瞬、ドキッとするが、差出人が真樹さんなのを見て、少しホッとする。 『昨日は、急に帰っちゃったからびっくりしたよ。  何か気になる事でもあったのかな。  実は、あきちゃんが帰った後から、高ちゃんの様子が変なのよ。  どうしたの?って聞いても、答えてくれないし。なんかふさぎ込んだ感じ。  理由、分からないかな?このまましょげられてても困るんだ。  今度のイベントまでに衣装作ってもらわないと。  あ、今度、嫌じゃなければあきちゃんの分も作るように言っとく!じゃあね!』  ふさぎ込んでいる、と言うのが気になってしまった。もちろん自分のせい だろうけど、だからと言って、それを解消する言葉は見つからない。  真樹さんに話したら、ちょっとは楽になるんだろうか…。  ふと、そんな事がよぎったけど、そうなると、真樹さんにも自分が元男な事を 話さなければならないし。  出口の無い考えに疲れて、気が付くと机につっぷしたまま眠っていた。  何もする気が起きないまま、1日が過ぎる。  その日、1日中パソコンは付けっぱなしだったけど、真樹さんからも、孝昌さん からもメールは来なかった。 *** 428 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/19(火) 10:55:34.69 8du5wq+D0  しかし。その日曜だけじゃなく、次の日も、その次の日も…。  連絡の無い事が、何故か、どんどん不安を誘う。  かと言って、自分から起こす行動は何も思いつかない。  辛い気分のまま過ごす日々の中で、気が付いた事があった。  俺は、自分が女体化した事を、直視して無いと言う事にだ。  これまで目立たなく、邪魔とされていた俺だが、外見が可愛くなった事により、 人当たりが格段に良くなった。でも本質的には変ってない。  正直うっとおしいと思う時もあるけれど、また相手にされなくなったら、そう なったら俺はどうなるだろう。  だからこそ、可愛くなった自分を大切にしなければと思った。守らなければとも 思った。  その考えが、この少女と俺を切り離している要素だったんだ。  だけど。この間のレイプ未遂事件や孝昌さんと出会ってしまった事で、少女は 俺だ、そう認識し、女性である感情も感じ始めている。  俺は男なんだろうか、女なんだろうか。  学校から帰ったら、パソコンを立ち上げる。これは女体化する前からの日課だ。  だが、無意識にメールが届いていないか見てしまう。案の定、スパムメールしか 届いていない。  気分の冴えないまま終えた夕食。そんな思いを変える為、あちこちのサイトを巡回 する事にした。最高に面白いネタを発見してしまい、思わず大爆笑していたその時。 デスクトップのアニメキャラが「ご主人様、メールが届きましたよ」と教えてくれた。  なんとなくメーラーをチェックする。  差出人”Takamasa” *** 429 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/19(火) 10:57:18.15 8du5wq+D0  ドキッと言うか、胸を締め付けられると言うか、予想してなかった差出人に、 思わず手が止まる。  だけど、何が書いてあるか分からないし、俺に対して現在はどんな気持ちで いるのか分からない。折角送ってくれたメール。見ないわけにはいかない。  だって、自分の気持ちは変ってないから。  俺はメールをクリックした。 『あきちゃんへ  この間は、急な事を言ってしまってごめん。あの余りにも悲しそうな顔を見たら、 どうしても気持ちが抑えられなくなったんだ。  あの言葉は突発的なものではなくて、あきちゃんに出合った時から感じていた 想いなんだ。  あの時、本当の事を告白してくれてありがとう。  でも外見じゃない、あきちゃん、好きだ。あきちゃんが好きなんだ。これだけは 分かって欲しい。』  読み終わったら、何故か涙が出てきた。良く見るとくさいセリフだらけなのに。 あんなに突き放すような事をしたのに、嫌われてなかった事が嬉しかった。変らず、 自分を好きだと言ってくれて嬉しかった。  それと同時に。元男である以前に、昔のダメな俺を知らないまま、一途にメールを 送ってくれた孝昌さんに、後ろめたさを感じていた。  でも、返事をしなければならない…。  俺は、思い切って返事を書いた。 *** 430 名前:AYA ◆zh2yobq4zs 投稿日:2006/09/19(火) 11:01:47.78 8du5wq+D0 『孝昌さんメールありがとう。  言葉全部、嬉しかった。  でも、まだ孝昌さんの知らない自分がいる事を忘れないで欲しい。過去の自分が、 どんな造型をしたのか知らない。どんな趣味で、どんな風に周囲から見られていたか。  正直、孝昌さんに嫌われたくない自分が居ます。今まで通り、遊んでくれるだけで、 満足です。』  あまり言葉は良くないけれど、ここまで書いて、送信した。  すると、数分のうちに返信が届いてしまった。  想像してなかった事態に、急に鼓動が早くなる。気持ちを抑えられないまま、俺は メールを開く。 『返信ありがとう。  あきちゃんから見た俺が、嫌われてないと分かって安心したよ。  でも、あきちゃんだって、俺の事を知らないよね。  だったらキミのこれまでの人生を、一部でいいから見せてもらえないかな。』  そう言ってくれても。はっきり言って「どうしよう」これしか言葉が出ない…。  結局、返事を出したのは翌日。 『分かりました。今度の土曜、都合はどうですか?』  思い切って出した答え。でも、このまま返事をしなかったら、連絡が途切れてしまう かもしれない。だったら、いっその事。嫌われた方がいい。その時に酷い言葉を駆け られて、孝昌さんを嫌いになった方がいい。  でもちょっとだけ。ダメな過去を見せて引かれたとしても、優しい孝昌さんなら 友達として付き合ってくれるんじゃないか、欲を言えば男同士として、分かって もらえる部分もあるんじゃないか…そんな考えもよぎっていた。  甘い考えだと、心の中で別の自分が囁いている中で。

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