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IT委員会研究報告第 36号

自動化された業務処理統制等に関する評価手続

 
平成20年2月13日
日本公認会計士協会
 
-目  次-
 

本研究報告の目的

本研究報告は、近年、ITの利用の促進に伴い重要性が増しているITに係る内部統制のうち、自動化された業務処理統制等及び財務諸表監査におけるリスク評価手続並びにリスク対応手続のうち運用評価手続についての具体的な例示の提供を目的としている。
多くの企業では、財務報告及び業務処理にITを利用した情報システムが利用されている。ITが取引の開始から記録、処理、報告に至るまでの手続や財務諸表に含まれるその他の財務情報に利用されている場合には、ITを利用した情報システムやプログラムに、重要な勘定科目に係る経営者の主張に関連する内部統制が含まれることが多い。一方、業務処理等でITが幅広く利用されていても、手作業の領域は相当程度残されている。したがって、内部統制に関連する情報システムには、手作業の領域と自動化された領域の両方が存在することとなる。
ITに係る内部統制の理論的な枠組みについては、IT委員会研究報告第35号「ITに係る内部統制の枠組み~自動化された業務処理統制等と全般統制~」に示されている。本研究報告では、本編として購買業務及び販売業務について具体的な業務プロセスを想定して自動化された業務処理統制等及びその評価手続の例示を提供している。
なお、本研究報告は具体的な例示を幅広く提供することを目的としており、業務プロセスの設計を行うための実務上の最善の事例を提供するものではないことに留意する必要がある。
 
  1. 報告書の構成
本研究報告では、一般的な卸売業を前提に企業の業務プロセスを想定して作成されている。
まず、購買業務については「Ⅳ 購買サイクルに関する業務記述書」にて、想定された業務プロセスについて例示に必要な範囲でサブプロセスを選定し、監査調書の一部となる業務記述書を示している。次に、その業務記述書を前提に「Ⅴ 購買サイクルに関するフローチャート」にて、業務の流れを図式化している。そして、「Ⅵ 購買サイクルに関するリスクと統制活動及びその評価手続の例示」にて、自動化された業務処理統制等の部分について、リスクと統制活動及びその評価手続(リスク評価手続及び運用評価手続)の例示を提供している。
同様に、販売業務について、「Ⅶ 販売サイクルに関する業務記述書」、「Ⅷ 販売サイクルに関するフローチャート」、及び「Ⅸ 販売サイクルに関するリスクと統制活動及びその評価手続の例示」を提供している。
購買業務、販売業務ともにリスクと統制活動及びその評価手続の例示には、様々な項目が記載されているが、すべての項目について例示されているものではなく、空欄としている項目もある。これは、勘定科目、経営者の主張、実施計画、実証手続計画上の留意点などについては、企業の置かれている状況や監査方針により異なることが多く、例示を記載することがかえって画一的な判断を招きかねないと考えられるためである。したがって本研究報告を財務諸表監査の実務において参考にする際には、この点につき十分留意する必要がある。
なお、購買サイクル及び販売サイクルは、それぞれについて別々の企業を想定して例示が作成されている。
 
  1. 報告書の前提
本研究報告は以下のような前提で作成されている。
業務記述書及びフローチャートは、実務上のプロセスが想定できるように、自動化された業務処理統制等だけでなく手作業による業務及び内部統制についても一部例示している。
別紙1及び2では、それぞれの業務プロセスを前提に自動化された業務処理統制等を具体的に示すためにリスクと統制活動及び評価手続の例示を記載している。別紙1及び2での記載は、自動化された業務処理統制等の例示に特化しているため、手作業による内部統制は記載されておらず、また人とITが一体となって機能する統制活動のうち人により実施される部分の評価手続も記載されていない点に留意する必要がある。
職務分掌や規程等は、例示されている部分以外も含めて適切に整備、運用されている。
また、全般統制は有効に機能しており、自動化された業務処理統制等が、経営者の意図したとおり整備され、継続的に運用することを支援しているものとしている。
別紙1及び2に記載のリスク評価手続を実施するにあたっては、適切な担当者にシステム概要及び実施されている統制活動を理解するために共通的な手続として質問を実施することが考えられるが、本研究報告では簡略にするために記載を省略している。自動化された業務処理統制等は、有効な全般統制により会計期間を通して有効性が支援されている場合には、リスク評価手続で実施する最低限の件数の検証手続で運用の有効性の評価とすることができる場合も多い。このため、運用評価手続の欄に「リスク評価手続にて、運用評価をあわせて実施」と簡略に記述している。
また、リスク評価手続は、想定されるリスクについての重要度(キーコントロール選定)の評価を行わずに統制行為に応じて広く手続の例示を記載しているものであり、そのすべてを実施することを示すものではない。
なお、評価手続を実施した結果として作成される詳細な監査調書については、例示に含まれていない。
 
  1. 購買サイクルに関する業務記述書
【1.全般】
(1)  各業務の担当者は、それぞれ独立して業務を行っており、その職務は明確に定められている。
(2)  定められた職務に従って、業務システムの権限は適切に設定されている。
(3)  取引先・商品マスタの登録・変更・削除の場合、購買部門担当者が「マスタ登録・変更依頼書」を起票し、購買部門責任者の承認を得たうえで情報システム部門に登録を依頼する。
(4)  情報システム部門担当者は依頼書に基づいて各種マスタの登録・変更処理を行い、登録・変更内容はプルーフリストとして出力される。情報システム部門責任者はプルーフリストと依頼書を照合し、併せてファイリングする。
(5)  取引先マスタの内容については、1年に一度、購買部門担当者が「取引継続確認一覧表」を出力し、登録内容の正確性及び削除の可否の確認を行う。フォローアップ結果を購買部門責任者が承認し、押印の上、ファイルされる。購買部門責任者が承認したフォローアップ済みの「取引継続確認一覧表」に基づいて取引先マスタの変更・削除が行われる。
 
【2.発注】
(1) 
購入依頼部門担当者は、「購入依頼書」を作成する。「購入依頼書」は、購入依頼部門責任者によって承認され、購買部門担当者に回付される。
(2) 
購入価格については、購買部門担当者が取引先に見積りを依頼する。提示された見積金額は「購入依頼書」に記載され、購買部門責任者が承認を行う。
(3) 
承認された「購入依頼書」に基づき、購買部門担当者が、購買管理システムに発注入力を行う。
(4) 
購買管理システムでは、取引先・商品マスタに登録されている仕入先、購入物品の発注のみ入力することが出来る。
(5) 
購買管理システムでは、配送方法及び支払条件等が取引先・商品マスタから自動的に発注ファイルに入力される。
(6) 
購買部門責任者は、購買管理システムの発注承認画面において入力された発注データの電子承認を行う。承認された発注データは、電子メールにより仕入先に自動送信されるとともに、購買管理システム上の入荷予定データに変更される。
(7) 
購買管理システムで承認済みとなった発注データ(入荷予定データ)は修正することができない(赤黒伝票によるデータ削除・再入力・再承認でのみ修正が可能である)。
 
【3.検収】
(1) 
全ての入荷品は入荷時に検収担当者によって品目検査・数量検査が実施され、指定納品書と照合される。検収担当者は品目・数量と指定納品書に差異がなければ、指定納品書に検印をする。差異がある場合は検収を行わず、納品書単位でその旨を記載した送り状を添付して、仕入先に返品する。
(2) 
品目・数量と指定納品書に差異がなければ、検収部門担当者は指定納品書に検印し、指定納品書に印刷されているバーコードを読み取る。読み取られたデータは購買管理システム上の該当する入荷予定データとリアルタイムで自動的に照合され、入荷データに変更される。
(3) 
入荷データは、日次バッチで会計システムに転送される。
(4) 
検収部門責任者は購買管理システムから、未検収となっている当日入荷予定データの「未検収リスト」を日次で出力し、検収部門担当者にフォローアップを指示する。検収部門担当者は原因を調査し、その結果を検収部門責任者が承認する。
(5) 
入荷予定日から1週間以上経過した発注残データは、毎朝情報システム部門にて自動的に「未入荷リスト」として出力され、購買部門に配布される。購買部門では各担当者が顛末をリストに記載し、購買部門責任者はそのフォローアップ状況をモニタリングする。
 
【4.仕入計上】
(1) 
購買管理システムでは、入荷データ作成時に購入価格と検収数量に基づいて仕入金額が自動で計算される。
(2) 
会計システムでは購買管理システムから転送された入荷データにより、検収日を取引日として仕入、買掛金等の自動仕訳が行われる。また、仕入先毎の仕入明細データも作成され、仕入先元帳が更新される。
(3) 
購買管理システムの入荷データと会計システムの仕入計上額は月次で自動照合され、不整合がある場合は「エラーリスト」が経理部門に出力される。
(4) 
経理部門担当者は「エラーリスト」のエラー内容をフォローする。経理部門責任者は担当者のフォロー結果を確認して承認する。
 
【5.支払】
(1) 
経理部門担当者は、請求書の受領時に請求内容と支払予定日を確かめ、一致している場合は会計システムに確認入力を行う。
(2) 
確認入力された支払予定データは、会計システムからファームバンキングに自動転送される。
(3) 
会計システムでは、転送された支払予定データをもとに、日次バッチで買掛金支払の自動仕訳が行われる。
(4) 
支払予定の金額が請求額と一致していない場合、購買部門に対してその原因調査を依頼する。購買部門担当者が調査し、その結果を購買部門責任者承認のもと、購買管理システムに修正入力する。
(5) 
ファームバンキングによる支払は、経理部責任者が電子承認を行うことによって実行される。
(6) 
支払エラーとなった場合、ファームバンキングからエラーリストが出力される。出力されたエラーについては、経理部門担当者が購買部門及び仕入先に確認を取り、経理部門責任者の承認のもと経理部門担当者が個別に支払処理を行う。
 
  1. 購買サイクルに関するフローチャート
 
    1. 購買サイクルに関するリスクと統制活動及びその評価手続の例示(別紙1)
 
    1. 販売サイクルに関する業務記述書
【1.全般】
(1) 
各業務の担当者は、それぞれ独立して業務を行っており、その職務は明確に定められている。
(2) 
定められた職務に従って、各業務システムの権限は適切に設定されている。
(3) 
当社の売上計上基準は出荷基準である。
(4) 
得意先の新規開設・取引条件変更・取引停止が生じた場合は、経理部担当者に営業部責任者承認済みの申請書を回付し、経理部において得意先マスタの登録を行う。
(5) 
販売管理システムでは、得意先マスタの登録時に、名称、連絡先、回収条件、与信ランク、与信限度額等の入力必須項目の入力チェックが行われる。
(6) 
得意先マスタの登録・変更・削除時に、「得意先マスタ登録・変更・削除プルーフ」が出力され、経理部責任者が申請書と照合し、ファイルされる。
(7) 
得意先マスタの内容については、1年に一度、経理部担当者が「取引継続確認一覧表」を出力し、各営業部に回付して登録内容の正確性及び削除の要否の確認を行う。フォローアップ結果を経理部責任者が確認し、ファイルされる。経理部責任者が確認したフォローアップ済みの「取引継続確認一覧表」に基づいて得意先マスタの変更が行われる。
 
【2.受注】
(1) 
受注は、得意先からのEDIによるか、注文書をFAXにて受け付ける。EDI受注は、与信ランクがAランクの優良企業が対象であり、加盟している企業間電子商取引の標準手順によって実施されている。FAX受注は与信ランクがB以下の企業である。
(2) 
朝8時までに販売管理システムの受信ファイルに受信したEDIデータを当日の受注として処理する。8時の締切後、商品マスタとの照合処理が行われ、9時にマッチングエラーとなった注文を送付先に返信する。エラー注文は、先方が再度、翌日のデータとして再送信することになっている。
(3) 
エラー送信後の処理において、マッチング済みEDIデータを対象に在庫引当される。在庫引当ができない場合は、得意先に入庫予定データが送信される。得意先は、入庫予定時に再注文をする。EDI受注による在庫引当済みデータは、販売管理システム上承認済みデータとして取り扱われる。
(4) 
FAX注文書は、営業担当者が販売管理システムへ受注入力(品目、数量、単価、納期、納品場所など)を行う。
(5) 
販売管理システムでは、得意先マスタに登録されている得意先からの受注のみ入力することが出来る。
(6) 
受注入力時において、受注額が与信限度額を超過する場合にはエラーメッセージが表示され、得意先マスタの限度額を変更しないかぎり、受注入力を完了出来ない。
(7) 
与信限度内の受注は在庫引当され、営業部責任者が受注承認入力を行う。在庫不足の場合は、不足分と入庫予定日の情報が自動的にFAXされ、不足分は得意先が入庫予定日に再注文する。
(8) 
受注承認済みデータから出荷指図(出荷予定データ)が生成され、在庫管理システムへ転送される。
(9) 
営業部の責任者と担当者は、日次で販売管理システムから「受注高管理表」を出力し、受注高を確認する。
 
【3.出荷】
(1) 
出荷予定日の直前営業日の夜間バッチ処理により、在庫管理システムから出荷指図書及び納品書が出力される。
(2) 
出荷担当者は、出荷指図書に基づき、商品の出荷業務を実施する。商品は納品書添付の上、得意先に発送される。
(3) 
出荷時に、出荷担当者が、在庫管理システムに出荷確認入力を行う。当日出荷予定データに対してのみ、出荷確認入力をすることができる。
(4) 
出荷確認入力後、在庫管理システムから出荷済みデータ(出荷確認データ)が販売管理システムに転送され、該当受注データは「出荷済み」の状態に変更される。
(5) 
販売管理システムの日次夜間バッチ処理において、当日出荷予定データと出荷確認データの照合を実施し、未出荷のものを抽出して、「未出荷リスト」を出力する。「未出荷リスト」は、営業担当者により精査され、原因が調査される。
 
【4.売上計上】
(1) 
販売管理システムでは、「出荷済み」となった受注データについて、出荷数量、商品マスタ、得意先マスタに基づき売上額が計算され、売上データが作成される。出荷日を取引日として売上データ1件ごと(出荷単位)に仕訳データが自動生成される。
(2) 
自動仕訳データは会計システムへ転送され、会計計上される。
【5.請求】
(1) 
販売管理システムでは、売上データ及び得意先マスタに基づき請求データが自動生成される。
(2) 
販売管理システムから、毎月請求締め日(得意先別に10日・20日・月末日いずれかで設定)に請求書が印刷され、請求データは「請求済み」の状態となる。
(3) 
営業部担当者は、締め日毎に販売管理システムから出力される「請求書プルーフリスト」と請求書を照合し、発送手続を行う。
 
【6.入金】
(1) 
入金(回収)は、得意先(請求先)ごとに指定された銀行口座へ振込まれる。入金システムでは、銀行からの入金日を取引日として、仮受金を相手勘定に自動仕訳データが生成され、会計システムに計上される。
(2) 
販売管理システムでは、入金システムから入金データを取り込み、入金(予定)日・振込人名・振込金額が一致した入金について自動消込みを行う。
(3) 
経理部担当者は、自動消込みが行われなかった請求データについて、手作業により消込み作業を行い、販売管理システムに消込み入力を行う。
(4) 
その後、経理部担当者は、未入金の請求データ及び不明入金データを記載した「入金アンマッチリスト」を出力し、営業部担当者に回付する。
(5) 
営業部担当者は、得意先の担当者と入金予定、又は振込金額の内訳を確認し、経理部への「請求修正依頼書」を作成し、営業部責任者の承認を得る。
(6) 
経理部担当者は、営業部からの請求修正依頼書に基づき、販売管理システムに消込み入力を行い、最終的に消込まれなかった請求データを「再請求」の状態に変更する。再請求データは次回の請求締めにおいて処理される。
(7) 
販売管理システムでは、消込み入力が行われたデータに対して仮受金を相手勘定に自動仕訳データが生成されて、会計システムに計上される。
(8) 
経理部責任者は、毎月末に販売管理システム上の得意先元帳合計残高と、会計システム上の総勘定元帳売掛金残高が一致していることを確認した後、それぞれの帳票の最終ページを出力して確認し、当該帳票をファイリングする。
Ⅷ 販売サイクルに関するフローチャート
 
  1. 販売サイクルに関するリスクと統制活動及びその評価手続の例示(別紙2)