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甥っ子と、おじさんと、おじさんの後輩と

「信じられないな……崎山さんとこうしているなんて」
「それは俺もだよ、そもそも男の子とつきあうことになるとはね」
「ジョシコーセーだったらよかった?これでもピチピチなんだけど」
「誘惑だなぁ、高校生とは清い交際を心がけるつもりだよ、前田さんと約束したしね」
崎山さんは叔父の会社の人だ。
半年前に家族会だとかに無理矢理引っ張り出されて、そこで運命の出会いを果たした。
初恋と気づくまでに一ヶ月、男性相手に悩むことさらに一ヶ月、叔父に相談するまで悩みに悩んでまた一ヶ月。
叔父はさすがにひどく驚いて「何かの勘違いだ」と頭ごなしに決めつけた。
胃を悪くするような思いで、夜もよく眠れなくて、やっと勇気を出して話したのに。
逆上した俺を見て、叔父は考え直してくれたらしい。
それからしばらくたった週末に、叔父は崎山さんとのアポを取ってくれた。
場所は遊園地だった。子供か! おまけに叔父までついてきて、あろうことか男3人で遊園地。
それでも俺は有頂天だった。崎山さんとデート! こぶ付きってとこが残念だけど気にしなかった。

絶叫マシンにいくつも乗って、観覧車(やっぱり3人で!)乗って、アトラクション見て、居酒屋行って飯食べて……
「前田さん、生おかわりいきますか? それとも酒? 焼酎もいいのありますよ」
でも、俺が叔父を気にしなくても、崎山さんは叔父に気を遣うのだ。
当然か、叔父は会社じゃ崎山さんの先輩だし。
「あ……じゃ、生一杯。しかし今日はすまないね、崎山君。
 こいつがどうしても遊園地に行きたいって言うからさ、ホント参ってたんだ。
 俺ひとりじゃきついよな、遊園地……でも案外楽しかったし……今日は、助かった」
一応そういう設定になっているが、遊園地を決めたのは叔父なのだ。内心面白くない。感謝はするけど。
「いえいえ、俺ももう何年ぶりかなー。楽しかったですよ。鬼の前田さんの弱点がジェットコースターだっていう
 特ダネもつかみましたし」
「わざわざあんなもの、作る奴の気が知れん」
「乗る方じゃなくて作る方がですか!……でも、苦手なら下で待ってれば良かったんじゃないですか?」
「……裕紀が心配だからな」
グシャグシャッと髪の毛をわしづかみにされた。やめてくれよもう。

あの時見てしまったことは一生の秘密だ。
帰るために席を立って、先に靴を履いた俺が何気なく振り返ると、叔父がひとり、まだ席に残っていた。
その手が、座布団におかれている。さっきまで崎山さんが座っていた席だった。
「叔父さん!何してるの、早く行くよ!」
俺は何食わぬ顔で叔父に声をかけ……それから数ヶ月、すったもんだの末に前田さんをゲットした。
叔父が悪いのだ。遊園地はデートのつもりだったのか。苦手なジェットコースターも崎山さんとなら乗ったのか。
知ってるけど言わない。勇気を出したのは俺の方だ。
叔父さん、ごめん。……ごめん。ありがとう。本当に……ごめんなさい。