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機械音痴

「あーぁ、またバグっちゃったよ…」

3010年、ロボット工学の進歩により、一人が1台ロボットを持つ時代がやってきた。
それぞれのパートナーとなるこのロボット達は、通話やメールの通信機能はもちろん、電子通貨の管理、
対話・遊び相手などのコミュニケーション、家事や買い物などの雑用といった持ち主の身の回りの世話までもこなす、スーパーにハイなテクノロジーによって作られたロボットだ。
乱暴に言ってしまえばパソコンとメイド・執事を足したようなもので、スペックはそれぞれの持ち主にもよるが、莫大な金を払えば夜の相手もさせられるらしい。
まぁ俺のは中古で譲ってもらった旧式の男型だから、そんな気にもならないが。

「動けよー、今日中に動いてくんないと、大学のレポート出せねーだろー!もー!このポンコツ!!」

乱暴に足元を蹴飛ばしてやると、大げさな機械音とともにそいつが動き出した。

「よぉ、起きたかよ旧式」
『マスター、また蹴りましたね』
「ぐ…」
『荒療治、良くないですね。前に初心者用の簡単な取扱説明書をお渡ししたはずですが』
「あんっな分厚いのの、どこが初心者用なんだよ!言ってるだろ!俺は機械オンチなの!大体、なんで紙媒体なんだよ、古くせぇ」
『紙媒体でなくてどうしろと、私にダウンロードしてみますか?私が壊れたら読めませんが』
「うるせー、大体お前にそんなメモリあんのかよ、ちょっと使うたびにすぐ止まりやがって、職務怠慢で訴えるぞ」
『製作会社に訴えを起こした方はいらっしゃいますが、パソコンを訴えるとは、やはりマスターは変わり者でいらっしゃる』
「お前それけなしてんだろ」
『はい』
「笑顔で答えてんじゃねーよ!ったく…いいやもう、レポート出して。締め切り今週なんだよあれ」
『ではディスプレイのケーブルを持ってきますね』
「んー」
『そうだ、マスタ…』
「なに?」
『……』
「おい、なんだよ?…ってまさか」
『……』
「だーっ!また止まってんじゃねえかくそっ!…こうなりゃもっかい…」

数分前と同じように足元を蹴ると、また機械音とともにそいつが動き出した。
と、そいつは俺の手を取ってふわりと抱えあげると、顔を近づけてきた。同じ男であるこいつにこう軽々と持ち上げられると、
そこそこ高い俺のプライドはずたぼろだ(まぁ相手は機械なんだが)。20㎝近い身長差が恨めしい(まぁ相手は機械なんだが)。

「おい、なんだよ。近けぇぞ」
『また蹴ったでしょう、マスター』
「だからなんだよ、おい、降ろせポンコツ。降ろせったら!」
『…マスター。私、マスターのことが好きなのかもしれません』
「はぁ?なにそれロボットジョーク?つまんねぇ」
『前はこんなことなかったのに、マスターに起こされたくて、マスターを困らせたくて、すぐにフリーズしてしまいます』
「…旧式は冗談も言えねぇのか、降ろせって」
『目が覚めたときには必ずマスターがいるんです、まるで、大昔にあった御伽噺のようです』
「そのガタイで姫気取りかこら、旧式、言うこと聞けよ」
『マスター、キスしましょうか』
「え、なに言ってんのお前、病気?なんかのバグ?」
『キスしてみれば、この気持ちの正体がわかるのかも。それに、もし本当に好きなら、マスターにもきっと伝わる』
「いやだから俺の了解を…んっ」
『……』
「……」
『…やっぱり、好きみたいです。ここれ、マスターにも伝わりましたか?』
「…冷てぇよ、ばか」

…仕方ない。こんなポンコツ、きっと貰い手なんてない。

了。