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風呂場のドアが壊れて開かない

「先輩、お背中お流ししますよー」
肩まで浴槽につかってのんびりしていたところに能天気な声が響いてきたと思ったら
後輩がタオル片手に風呂場に入ってきた。全裸で。
「なんで全裸になる必要がある」
「服着たままだと濡れちゃうじゃないですか」
「…とりあえず背中は自分で流すからお前は部屋に戻ってろ!あと服着ろ!服!」
「終電逃して泊めてもらうんだから、これぐらいのご奉仕は当然ですよ」
あ、ご奉仕とか言ってちょっと恥ずかしいですね。変な意味じゃないですよ~などと言いながら
意味もなく頬を染める後輩に、心底うんざりしつつも俺は浴槽から立ち上がり有無を言わさず
後輩を風呂場から押し出そうとした。
だがドアを開けようとするのを後輩が必死に押しとどめる。
「そんな、遠慮しないでくださいよ」
優男の容姿からは想像できない奴の馬鹿力に、デスクワーク派の俺は苦戦を余儀なくされたが
何らかの身の危険を感じたので、ここで負けるものかと必死に抵抗した。

短い時間の中で何度も何度もドアが開閉される。
そうして後輩が何度目かのドアを閉めた瞬間、それは起こった。
鈍い音と共にドアが開かなくなったのだ。
閉じ込められた…!元々古くて建てつけが悪かったのだが、何もこんなところで壊れなくても…
得体のしれない本性を見せ始めたコイツと無防備な状態で2人きりになるなんて…薄ら寒いのを
感じたのは何も裸でいるせいだけではないだろう
ふと隣を見れば、こんな状況だというのに後輩は照れたような表情ですり寄ってくる。
「どうしましょう…閉じ込められてしまいましたね」
「…お前のせいだけどな」
「はい!俺のせいなので責任を持って先輩の体を温めますね。人肌で…」
「却下」
そう言いながら俺はドアを再度引っ張ってみるが、ギシギシするだけで開く気配が無い
他に家族がいればいいのだが、生憎ひとり暮らしだ。
かといってこれ以上ここにいたら…隣をちらりと見れば後輩がそれはもう晴れやかな顔で笑っていた。
今の俺には肉食獣が獲物を前にした時の顔に見える。
少々厄介な解決方法だが、俺は決断した。
「…いや、待て。うちは一戸建てだ。無理すれば風呂場の窓から出られないことは無い」
外に出れば合鍵を隠してある場所があるから、それを使って裏の戸を開けて再び家に入ればいい
だが腰にタオルを巻いて窓に足をかけようとした俺に後輩が必死で縋りついた。
「やめてください!先輩の麗しい裸体を外に晒すなんて!」
「お前は何を言ってるんだ!!」
「先輩の裸体を見ていいのは世界で俺だけです!」
「今日初めて見た奴が偉そうに主張するな!」

そんなくだらないことで10分ほど喚き続けていたのがいけないんだろうか、騒ぎを聞きつけて
集まってきたご近所の皆さんと、その通報で駆けつけてきた警察のおかげで俺たちは救出された。
ほぼ全裸の男2人が風呂場で大騒ぎしていたという事実は、ご近所さんの噂によって散々ねじ曲げられ
俺は暫くの間、外出にも気を使うぐらい恥ずかしい思いをすることになった。

後輩はあれからも何かと理由をつけて俺の家に泊まりに来るが、あの時の悪夢がよみがえってくるので
風呂場にだけは絶対に近寄らせていない
その代わり今度は布団にもぐりこんでくるようになったんだが、それはまた別の話である。