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愛させて

「は?なんですって?」
「だから、たまには私に愛させて欲しい、と言ったのだ」
「…まーた変な事思いついたんですか」
「気付いてしまったのだ……そう、私は、君に愛され、与えられてばかりいると……
 このままでは私は君の愛に溺れてしまうだろう……そう、愛の飽和だ!飽和は停滞だ!倦怠期だ!」
「はあ」
「だから私は、君から貰った愛と、私の中で育んでいる君への愛を、君へ還元したいのだ!」
「……もう少し具体的にお願いします」
「まず、私は日々の料理を君に作らせてばかりだったな。だから今日は私に任せ給え」
「けどアンタ、前にゆで卵作ろうとして、大惨事引き起こしたじゃないですか」
「スーパーへの買出しも私一人で行く。店内の配置も覚えたから完璧だ」
「カートで暴走してジャガイモの山に突っ込んだこと、もう忘れました?」
「洗濯も私がやろう。なに案ずるな、最近の洗濯機は全自動だからな!」
「この間、干すとき庭に洗濯物ぶちまけたの誰でしたっけ」
「ポチの散歩も私が行ってくる。君はその間、家でのんびり音楽でも聴いているといい」
「ポチに張り合って全力疾走して体力尽きて、俺が迎えに行ったことありましたよね」
「風呂の用意も私に任せなさい。背中も流すぞ。最高の癒しの空間を君に捧げよう!」
「温泉の素を混ぜまくって大はしゃぎして。あれ、後で掃除するの大変だったんですよ」
「なんだね、君はさっきから。私の愛に水を差すような事ばかり言っていないか?」
「そういうつもりはないですけど。けどアンタがそうやって張り切ると、その十倍おまけがついてくるんですよね」
「どういう事だ?……ハッ。まさか君は、私に愛される事は迷惑だと……?そうか、そうなのだな!?」
「いやあの、だからね……」
「なんということだ……このままでは私は君を愛せぬまま、君からの愛で飽和してしまう……嗚呼、
 君への感謝も君への愛も、私は何一つ返すこともできず、水底のヘドロと堕ちて行くしかないのか!?」
「あー……。えーと。アンタ、俺のこと好きですか」
「当然の事を訊かないでくれ。私は君の事を世界で一番に好いている。とても大切だ、心の底から愛しいと思っている」
「うん。だったら、それで」
「ん?」
「今の言葉で、俺からアンタにあげたっていう愛の半分くらい、俺に還ってきました」
「んん?」
「良かったですね。これで当分、溺死しないで済みますね」
「……そうなのか?」
「そうですよ。……さて、洗濯物も畳んだし。夕飯の準備しなきゃなー……あ、でも冷蔵庫空っぽだったっけ」
「これで良いのだろうか……私は彼を愛せているのだろうか……?」
「何ブツブツ言ってるんですか。夕飯の買い物行きますよ。用意してください。…おーいポチー、散歩行くぞー」