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皇帝ペンギン

「ほら、あっちゃん見て、すごいよ!」
頬を上気させた従兄弟が、今にも走り出しそうな勢いで俺の袖を引いている。
従兄弟の目指すガラスの向こうには、寒そうな氷の上でのんきな寝顔を晒す皇帝ペンギン。
あーあー、目ェ輝かせちゃって。
好きだとは知ってたけど、こんなに喜ぶんならもっと早く連れてきてやればよかった。
「かーわいいなぁ。よちよち歩いててさ、赤ちゃんみたいだよね~」
かわいいのはお前の方だよ。ああクソッ、その笑顔、無理して会社休んだ甲斐があったってもんだ。

「…ねぇ、あっちゃん。」
突然、コツンと水槽ガラスに額を当てて。
「転勤しちゃっても、また来ようね」
明るい声とは対照的に、ぎゅっと手のひらを握られた。
「…帰りにぬいぐるみ買っていくか」
明日から居ない俺の代わりに、お前が寂しくないように。

でもな孝平。俺の転勤先にも、お前の大好きな皇帝ペンギンはいるんだよなぁ。

今度は向こうの水族館で、またその笑顔を見られたらいい。