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布団の中で

「えー、それではこのあたりで修学旅行定番~、好きな子の告白大会行きまーす」
アイツの声に、唯でさえ騒がしかった室内が一層ざわめきを増す。
一応教師の見回りを気にして皆布団に入ってはいるし、電気だって消してはいるけど、寝てる奴なんか一人もいない。
全員が興奮して、頭が冴えまくってる状態だ。
特に俺は眠気など皆無で、心臓が隣に聞こえそうなほどどくどくいっている。
さっきまで同室のメンバーで回し飲みしていた缶チューハイのせいだろうか? それとも明日以降の予定が楽しみで?
いや、そんなんじゃない、理由は分かりきっている。よりにもよってアイツが、俺の横に寝転がっているから。
一人、二人、と。好きな子の名前を告白していくクラスメイトたち。
相槌を打って聞いている振りこそするものの、話の内容なんて微塵も頭に残らない。
その輪の中心で大きく笑いながらはしゃいでいるアイツにばかり、俺の目は吸い寄せられてしまって。
「おい、お前はどうなんだよ。さっきから訊いてばっかで」
「えー、俺、困っちゃ~う」
中の一人にそう尋ねられて、アイツがおどけた顔でそう言いながら身体をくねらせる。
その馬鹿馬鹿しい仕草に爆笑が起こるのを見て、ヤツはなおも言葉を続けた。
「俺の好きなコはー、この中に居るかな? なんつって」
「おま、ホモかよ!」「キモいって、バカ」「今日、俺ら貞操の危機じゃん!」
口々にそんなことを言いながら未だ笑い続ける皆の中で、俺だけがどくんと心臓を跳ね上がらせた。
馬鹿。何勘違いしてるんだ俺は。こんなの、アイツのいつものジョークに決まってるだろうが。
そう自分に言い聞かせ無理やりに鼓動を落ち着かせる俺に、隣のアイツが笑いながら話をふってくる。
「酷いよなー。俺、本気なんだぜ? もう超ーーホンキなのに」
「ああ、そう」
「冷たっ! 佐藤、その反応は冷たすぎ」
「知るか」
勝手に言ってろ阿呆。どうでもいいからそれ以上顔を近づけるな。吐息がこっちの頬に当たって色々とやばいんだ。
つーかお前が好きな女は誰なんだ。それが気になって仕方ないのにこれじゃ蛇の生殺しってか二重の意味で我慢の限界で。
ぐるぐると回る頭に嫌気が差して、俺は早々と掛け布団を頭からかぶろうとする。
これ以上アイツの横で起きて、なまじ寝顔なんか見てしまったら、理性が歯止めをきかなくなりそうだ。
「あれ、ちょ、もっと起きてようぜー」
「煩い。寝る」
そう宣言して俺が布団にもぐりこもうとした瞬間、アイツは確かに呟いた。くすりと、悪戯っぽく笑って。
「……俺、本気なんだぜ?」