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エルフ受け

僕の不思議な話を聞いてください。
僕が、彼と出会ったのは、家族旅行で行った外国の地ででした。
幼かった僕は、好奇心と冒険心の強い子供だったため、親が目を離したすきに、
ホテルから見える森へ、探検をしに入り込んでしまいました。
もちろん森の中は、高い木の陰で薄暗く、地面は苔むしてぐずぐずとしていて、
日本のアスファルトを踏みしめなれていた僕は、すぐに右も左も分からなくなり、
迷ってしまいました。
どこをどう行けば帰れるのか。
もしかしたら、僕はここで死ぬんじゃないのか。
僕は、声が枯れるまで泣き、助けを求めて叫び、そして疲れて座り込んでしまいました。
そんな時に出会ったのが、彼でした。
僕の記憶では、彼は泣いている僕の目の前に、突然現れました。
植物から直接作ったような、不思議な服を着ていて、この旅行中に見たどの外国人
よりも、ぬけるほど肌が白く、そして耳がとがっている人でした。
彼は、僕には分からない外国語で喋りかけてきたので、僕はさらに不安を感じ、
泣いてしまいました。
すると彼は、僕を抱き上げると、ニッコリと笑って、多分『大丈夫』という意味の
言葉を口にして、そのまま歩き出しました。
そこから僕は、安心したのか眠ってしまい、気がつけば、森の近くで眠っている所を
ホテルの人に発見され、無事親の元に帰ることができたのです。
地元の人は、「君はエルフを見たんだ。命も何もとられていないなんて、とても幸運だ」
ということを言っていたそうです。
あれから10年経ちました。
「スミマセン、安藤さん。あの、醤油貸してもらえマセンか? ウチの、切れチャッて」
ピンポンも無い安アパートで、大学に通っている僕の隣に、ドイツからの留学生が越して
きて、仲良くなりました。彼は、不思議な服は着ていないにしても、ぬけるほどに白い肌と、
少しとがった耳を持っています。
「あ、この前借りタ、本、持ってキマシタ。面白カッタです。日本のファンタジー、話が
 良いネ」
僕は、あの時からずっと鮮明に持っていたはずのエルフの姿を、彼の姿以外で想像できなく
なってしまいました。最初は、全く考えていなかったのですが、今では、彼は実はエルフで、
日本に遊びに来ているんじゃないか、と思っています。
「安藤さん、聞いてますカ? その本では、『日本の八百万の神』の文化の下で、エルフが
 存在していタラ、間違いなくエルフは神の一人ニなれた、と書いてましたね。僕、エルフが
 好きだけど、僕の生まれた所では、エルフは悪者ダカラ、とても嬉しかったデス。日本に
 来て、良かったデス」
彼は、ニッコリと安心したような笑顔を浮かべました。その顔が、僕には、あの時見た顔と
同じように思いました。
「安藤さんの隣に越してキテ、正解デシタ」

…あの時、「何もとられていないなんて、幸運だ」と言った地元の人、すみません。
僕は幸運でなんてありません。
あの時から、エルフに心をとられたっきり、帰ってこないんですから。

「今、カレー作ってるけど、食べるか?」
「いいんデスか? わーい、じゃぁお邪魔シマス! 安藤さんのこと、僕大好きデス」
「うん。ありがとね」

その好きが、もう少し、発展することを願っています。その長い耳、噛ませてください。