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タイムリミット

「おい吉井、話は聞いたぞ!何でもっと早く言ってくれなかったんだよ!」
「……は?」
昼休みが始まるや否や、目を輝かせながら僕に寄ってきた坂下の唐突な台詞に、僕は大層間抜けな声を出してしまった。
「そうかそうか、吉井がなあ。うん、あんな奴だけど俺協力するからさ!何でも言ってくれよ!」
「ちょ、ちょっと待って。話が見えない、何のことだよ?」
すると坂下は、またまたー、とぼけるなって!と僕の背中をバシバシ叩いた後、

「お前、俺の妹に惚れてるんだろ?」

実に楽しそうに笑いながらそう言い切るものだから、
「…………へ?」
僕は更に間抜けな声を発しながら、坂下の言葉を脳内リピートしていた。
惚れている?僕が、坂下の妹に?
「待っ…何でそんな話になってるんだよ」
平素を装って尋ねる。坂下の回答は、至極単純な物だった。
「ほら、俺が弁当とか忘れるとさ、あいつよく届けに来るじゃん。そんときお前、ずっとあいつのこと見てるって聞いた」
「………」

否定はしない。だって、それは紛れもなく事実だから。ただ、そこに込められた意味が違うだけで。
「いやー知らなかったなぁ。けどさ、俺が言うのもなんだけど、可愛いぞーあいつ。料理上手いし、あ、でもちょっと――」「…坂下は」

楽しそうに捲し立てる坂下を遮って、僕は尋ねた。
「坂下は、僕と…坂下の妹が、一緒になればいいと思う?」
すると坂下は、やっぱり楽しそうに笑って、
「勿論。だって吉井いい奴だし、うん、吉井なら安心だな」
それを聞いて、僕は確信した。
もう――限界だと。

初めはただのクラスメイト、それから過程を経て、気の置けない親友になった。けれど一緒にいるうちに、いろんな顔を知るうちに、その感情は形を変えてしまった。
伝える気はなかった。けれど、いつまでもぬるま湯のような関係に浸ってはいられないとも分かっていた。
きっと、ここが潮時だ。
彼がそれを望むなら、それで彼が幸せなら、僕は彼の妹を好きになる。
たとえ今は、嫉妬しか感じられないとしても。

僕はゆっくりと息を吸い込み、出来るだけ自然に笑顔を作った。
「ありがとう。協力、お願いするよ」
「ああ、任しとけって!まずはやっぱデートだな、いきなり二人きりはアレだから…」
坂下に相槌を打ちながら、僕は心の中でそっと呟く。

さようなら、親友。
さようなら、僕の大好きだった人。