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俺ダメなんだよな~。

付き合って、もう半年になる。
けれど指一本触れてくれないあの人に、僕はいつもの仏頂面で何度目か分からない質問をする。
「どうして? 僕、……そんなに魅力ないですか?」
「別に、そんなわけじゃねぇっての」
そう言って困ったように笑う咥え煙草の彼が苛立つくらいかっこよくて、僕はまた泣きそうになる。
いつもこうだ。年上だからって兄貴ぶって、僕の心をちくちくと痛ませる。
抱いてくれないのだって、どうせ僕がまだガキだからなんだろう。
「煙草」「ん?」
「一本、頂戴」
シャツの胸ポケットに入った箱を無理やり取り出そうとして、その手を押し留められる。
僕とは百八十度違う大人の力に押さえ込まれて、身動きできなくなってしまう。
「だーめ。まだ十八なんだから、身体大切にしろ」
代わりにこれ、と手渡された小袋に入ったキャンデーを、僕はつい床に投げ捨ててしまった。
かさりと乾いた音が室内に響き、振り向いたあの人が驚嘆した顔で僕を見つめる。
「ねぇ、どうして? 僕……僕もうガキじゃないよ……」
ああ、駄目だ。瞳からじんわりと溢れ出る涙をとめることが出来ない。
こんな顔したら、むしろ自分から『ガキ』って看板掲げてるみたいなものなのに。
僕の涙を伸ばした指先で拭うと、あの人はまた、普段と変わらない笑顔を見せた。
「俺、ダメなんだよな~」
おどけて冗談ぶった口ぶりでそう告げられて、僕は一瞬、何を言われているのか分からない。
「病気しちゃってさ。その……昔荒れてた頃に。お前には絶対うつせない」
「……う、嘘っ」
「お前はさ、まだ若いんだから。ちゃんと健康でいなきゃ」
僕の髪をくしゃりと撫でるその指先になんだか元気がない気がして、頭一つ分違う彼の顔を仰ぎ見る。
そこにはいつもの大人のあの人は居なくて、代わりに喉を振るわせて幼児みたいに泣く男がいた。
「ガキだなんて……思ってねぇよ。ただ、お前は俺と違って若くて……綺麗すぎるから……」
十も年上のその人を抱きしめて、僕は泣いた。
その嗚咽する声があまりに大きくて、僕はやっぱり、自分が若いんじゃなく単にガキなんだと思った。