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一晩限りの関係

彼のことを、何も知らない。名前すらも。
いつもと同じ、行きずりの関係となるはずだった。
誘い、誘われ、駆け引きを楽しんでから肌を重ねる。
いつもと違ったのは、別れる時。
連絡先を訊こうとし、何度もためらい、結局何も訊かなかった。
その気になれば探し出せると思っていたから。

あの時は、まだわからなかった。
どれほど彼に心を奪われているのかなど。
そのことに気付いた時、全ては遅かった。
名前すら知らず、手がかりもなく、写真もなく。
そのバーの常連だと思っていた彼は、実はその日限りの客で。

彼の声も、彼の匂いも、彼の仕草も、鮮やかに思い出せるのに、
まるで存在しない、彼の痕跡。
二度と会えない彼を想い、何度も記憶を再生する。



一夜限りの関係だった。
想いは千夜続くだろう。