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作曲家×歌い手

「先生、今回の歌も凄く良い曲ですね。
まだ歌詞もないのに曲を聴いただけで僕、歌い出しそうになっちゃった」
向日葵の様な笑顔をふわりと浮かべて、今までじっと目を瞑って私のピアノに耳を傾けていた彼がそう言った。
「君にそう言って貰えると嬉しいよ。私も作った甲斐がある」
鍵盤から手を離して、私も彼に向かって微笑み返す。
「…ふふ」
すると彼は、綺麗な足取りでこちらに向かって歩いて来ると、
おもむろに私の手に掌を重ねた。
「どうしたんだい?急に」
「…先生の曲って、いつも痛い位誰かの事を想ってるよね。
すごく優しい旋律なのに…歌ってて、時々泣き出しそうになる」
「え…」
透き通る様な瞳が、真っ直ぐに私を見つめる。
何処か哀しそうな、切ない様な…その瞳。
私は、内心の動揺を隠す事が出来なかった。

―――――――そう、いつからだろうか。
この少年の歌声に、作曲家としての本能以外の物を感じる様になったのは。
最早比喩でも何でもないとさえ思えてくる、それは正に「天使の」歌声。
そしてその歌を桜色の唇に響かせる、目の前の美しい少年。
「…」
この秘められた想い。誰にも気付かれてはならない。
決して言葉にしてはいけない感情。
「先生…どうしたの?」
「何でもないよ。それより…歌ってくれないか。
君の歌が…僕の作った君の歌が、聞きたいんだ」
「…うん、分かった。歌うよ。先生の為に」
静かに目を瞑り、目の前の天使が胸に手を当てる。
そして、紡ぎ出す。私の想いを。何も知らず、その歌声に乗せて。

―――――――君の為に作った、この曲達に込められた想いは『愛』。