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小柄な蠍座×長身の蟹座

屋上の天文学部部室は、人気がなくって。
部員は、二名だけ。3年間、俺とお前だけの部活で。
顧問がやる気ないことをいいことに、二人だけで部室占拠して、午後の授業
さぼったりとか、はじめてのタバコ体験とか、はじめてのお酒体験とか、
そんなことばっかりに使ってた。

今でも覚えてる。あの日は、夏休みの暑い午後だった。
クーラーもない、直射日光が窓から入ってくる部室は、蒸し風呂のようで、
俺は、その中で、昔の漫画雑誌なんか読みながら、汗だくになってた。
そこに、ぶっちょうづらのお前が入ってきた。
入ってきても、挨拶もしない。一声も出さない。
俺は、その理由が分かっていたので、何も言わなかった。
しばらくして、お前は低い声で言ったよな。
「…どうして、邪魔したんだよ。…俺一人で、あんな喧嘩、片付けられたのに」
俺は、汗かきすぎて、決まらないと分かっていながら、笑顔を浮かべた。
「お前、蟹座がどうしてできたか、知ってるのか? 友達助けようとして
 殺されて、同情されて、星座になったんだぞ。天文部なのに、そんなのも
 知らなかったのかよ」
俺の右頬は、ガーゼで覆われていて。多分、俺の努力の笑顔は、見えなかっただろう。
けっこう痛かったのに。残念だ。お前は、何か我慢するような顔で、俺につかみかかって
きて、こう言った。
「星座を理由にするなら、蠍座が強いってことも知ってるだろ! 俺の喧嘩だったんだ…!」
そのつかんでいる右手は、包帯で覆われていて、つかまれるだけで痛いってことも知らないだろ。

クラスも違うお前。人一倍、小柄なお前。
入学式に、この部室で出会って、放課後はお前と過ごしてきた。
お前、話さなかったけど、同級生って何でも噂で流れてくるんだぜ。
お前が、クラスでシカトされてるのも知ってたし、。不良グループに目をつけられてるのも知ってた。
ずっとどうしようもできなくて、ただ放課後会って話して、笑いあうだけだったけど…。
でも、何でかな。2年も我慢してたのに、昨日の放課後、偶然お前を殴ってる不良の姿見ただけで、
俺、我慢できなくなったんだ。蟹座だからかな…。友達のピンチは、助けたいと思ったんだ。
ほら、俺って、体だけはでかいし。助けになると思ったんだけど。
結局、不良には勝てなかったね。ボコボコにされて、気がつけば保健室だった。

お前は、包帯だらけの俺の腕を放さないまま、涙をためた瞳で、ずっと俺を見ていた。
腕の痛みが麻痺してきた頃、急に顔をちかづけてきた。
くちづけ。
俺も驚いた。少し遅れて、水音が、他人事のように聞こえてくる。
びっくりして、声が出るのをおさえきれなかった。
いつも物静かで、あまり感情も出さないお前の、はじめての激情だった気がした。
口を離した後、お前は俺の目を見て離さないまま、こう言った。
「責任とれよ…。俺、お前のこと、本気で好きだから」
俺は、自分よりも一回り以上小さい人間に押さえ込まれながら、抵抗できずにいた。