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小型わんこ×大型犬

店の前に出来る小さなつむじ風で、店長は冬の訪れを知る。
店全体が煮詰められたような趣の古びた喫茶店が彼の城だった。
と、いっても何軒か飲食店を経営しているオーナーから雇われている身である。
そのオーナーの意向どおり、白い皿に何種類かある焼き菓子やトルテを乗せ、コーヒーと紅茶を出す、シンプルな喫茶店だ。
裏通りと言う立地も相まって、客は常連か喫茶店で寛ぐ事が好きな人間しか来い。
だが、例外が二人。
くるくると渦を巻くつむじ風を眺めながら店長はその例外を待っていた。
20時に閉店した店をあらかた片付け明日の準備をし終えた後、大きな体をストーブの前に丸めうとうととし始めた頃、がらがらと乱暴にドアベルが鳴り、木枯らしが店内に吹き込んできた。
「松石さん!ごめん遅くなって」
「大丈夫だ」
小柄な高校生が寒気をまとって店長の所へ駆け込んでくる。
それをのっそりと受け止め、ストーブのより近くに座らせてやった。
「親父、怒ってるかな」
「オーナーから連絡が無いから、さあ、解らないな」
本当は閉店間際にオーナーが来ていたのだが、教えない。
親子でよく似ているオーナーも小柄ゆえの上目遣いで店長に
「あいつ、怒ってネェかな」
とぼやいていたのだ。

「親子喧嘩のたびに、私を巻き込むのはやめないか」
結局顔を合わせるなり喧々囂々の親子喧嘩を再開してしまったオーナー親子を暫く眺めた後に、店長は割ってはいる。
いいかげんこの親子のキャンキャン吠え合う喧嘩には慣れてきたが、限度と言うものがある。
「何でだよ、お前がどっちつかずだからいけねぇんだろ!」
「松石さんがはっきりすればいい話なんだよ!」
「勝手に口説いて勝手に押し倒してその台詞が出るのはさすが親子だな」
職に困り、連日職安に通い詰めていた店長を拾って雇ったオーナーには下心があった。
まんまと罠に掛かった店長は、流されるままに雇い主と深い仲になってしまったのだが
その後同じ勢いで、その息子とも肉体関係を持ってしまったのだった。
まあ、してしまったことは仕方が無いとばかりに泰然と構えていたのがいけなかった。
いつしか親子で、店長の取り合いを始めてしまったのだった。
それ以来、つむじ風舞う喫茶店では小型犬二匹が大型犬を追い掛け回す、という恋愛劇が続いているのであった。