※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

誘蛾灯

私は君に出逢つてしまつた。
君の何処に惹かれてゐるのか説明するのは難しい。
或る雨の夜だつた。
傘を忘れて途方に暮れてゐる私の横で
君の差し出した淡い黄色の傘ばかりが眩しく思へた。
以来、君ばかりを瞳で追つてゐる。

君に近づくようになつて、
私のような男が君の周りには沢山居ると気付いた。
君の優しさに非道く惹かれてゐるのは私ばかりではない。
惹かれてゐるのではなく、君が引き寄せてゐるのではないかと時々考へる。

私が余りにも君のことばかり考へるので、帝大の友人に相談を持ちかけた。
このような気持ちになるのは初めてだが、はづかしいとは思わなかつた。
友人は君からフェロモンでも出ているのではないかと茶化したが、
私はフェロモンが何かわからなかつたので曖昧に濁した。
ただ、理性では抗えない本能的な所で私が君に惹かれていることだけが解かるのみであつた。

今日もまた私は君を目で追つてゐる。
そしてまだ私は君に惹かれてゐる。