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高嶺の花

なんで、言っちゃったんだ。頭の中ではその重たい後悔がぐるんぐるん回っていて、誰を責めるべきなのかわからなくなる。
学年一の美少女に恋した自分か。それともいけるいける、なんて軽く背中を押してきた同級生だろうか。止めるどころかおもしろがったクラスの女子か。
考えているうちにこの世の全部が敵のように思えてきて、ぐったりと屋上の柵にもたれかかった。
天気がいい。山のてっぺん近くに建てられたこの学校は屋上の見晴らしがよく、絶望するにはもってこいの場所である。
「俺は馬鹿だぁ」
「そうだ馬鹿だ」
賛同の声がいきなりして、ぎょっとして後ろを振り返る。唯一、美少女に告白するなんて暴挙に出た自分を静観していた男が立っていた。
高校まで一緒の腐れ縁のくせに止めてくれなかった彼を恨めしいとはなぜだか思わなかった。
「そう思うなら早く止めてくれればいいものを」
「水戸黄門の歌思い出してみろって」
人生、苦楽あり。十七歳にしてしぶすぎるチョイスに力が抜ける。
がっと、力強く肩を組まれた。眼を見開き、真横の顔を見つめる。
「馬鹿だよ、ありゃ高嶺の花だってわかるだろ。摘んでみようって考えるだけお馬鹿さんだ」
「……うん。馬鹿ですよ」
「だからな」
「うん」
ふいと、彼がそっぽを向いた。黒い髪が風にたなびく。それが頬をかすめ、くすぐったかった。
「低いところのを摘めばいいと俺は思うわけだよ」
「低いところねえ」
「そう、低いところ」
「で、それどこに咲いてんだ」
目が合った。彼が愕然とした顔を一瞬浮かべて、やがてがっくりと首を倒してため息をついた。
「馬鹿だなあ。そんなんだから振られるんだって、俺以外に」
からりと彼は笑った。
なぜだか、なにも言い返せなかった。