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中二病×中二病

「サラリーマンだけにはなりたくねぇな」
俺はそう悪態をつくと最近覚えた苦いブラックコーヒーに口を付けた。
苦っ。苦みに一瞬顔を歪めるが、それを誤魔化すように瞳を閉じた。
俺はこの日も脳裏によぎった三文字を口に出さぬよう必死に取り繕う。
旨い。俺は違いの分かる男。同世代のガキとは違うんだ。
本音を言えば苦くてまずいが、
そう思うことでシュガーポットに手を伸ばそうとする未練を断ち切る。
ビルの三階にあるカフェは通りに面している壁がガラス張りになっていて、そこから下の様子などが見える。
俺は冷めた瞳で行き交う灰色の群衆を見つめていた。
スーツで武装し表を歩く生気も表情もない顔は見ていて不愉快で、いっそネクタイを窒息してしまうまで締めてやりたい。
見下ろした灰色の蠢きと自分に干渉する父親とダブり、余計に憎悪が増す。
ムカムカする気持ちを押さえつけようとコーヒーに口を付けたが、苦みのせいで余計気持ちが落ち込んだ。
気が重くなる理由はもう一つある。
目の前に座っている海斗だ。
文庫本に視線を落としたままうんともすんとも言わない。
この男はなかなか読書家で、愛読書は赤川次郎だ。
最近バンドを始めたらしく、いい詩、いや海斗曰くいいリリック(こう言わないとキレられる)が書けるようなインスピレーション探しに
俺は毎回付き合わされる。
そして今日もご多分に漏れずそのインスピレーション探しに付き合っていて、今は小休止中だ。
目の前の相手は話しかければ返事は返すものの皆一言で終わりなかなか話が続かない。
雄次は諦めてブックスタンドから持ってきた英字新聞を広げた。
よ、読めねぇ……。だが俺は怯まない。何故なら俺は全能の眼(ゼウスズプレシャスアイ動揺の余りにガタンと机を揺らしてしまい慌てふためく。
そんな俺の様子など意に介さない海斗は相変わらず涼しい顔をして本を読んでいた。
「別に何にも変わんねぇよ。世の中平和、めでたいことだな」
「だがつまらないだろ。」
「え?」
「見てろよ。俺のバンドがそのしけた一面記事に大輪の花を飾ってやる」
その一言に背筋がぶるりとなった。
きっとこいつは俺の知らない世界を見せてくれるに違いない。
「行くぞ」と小さく呟き領収書を持ち席を立つ背中。
肩幅が広いとか背が高いと思ったことはあったが頼もしく見えたのは初めてだった。