しつこくアピール

なあケンジ、一緒にお昼食べようぜ!
「うるさいなぁ、読書の邪魔するなよ」
なんだよ冷たいな、ちょっとくらい構えよ。俺一人じゃ退屈なんだぜ。
「はいはいいい子だから巣に戻ろうね」
あ、こら、暴力反対! 俺はお前と違ってかよわいんだぞ!
「あーもううるさいな、腹減ってるのか? ほら」
いやお腹はそこそこ減ってるけどさ、お前と一緒に食いたいの!
「何だよ、わっかんない奴だな……あのな、俺は、この本を読みたいんだ。
 だから、邪魔しないでくれ。な?」
ひ、ひどい……俺よりもそんな紙切れの束の方が大事だってのか!?
いじめだ! 虐待だ! 俺はこんなにお前のことを愛してるのに!
「あーもう、言って聞くとは思わなかったけど……」
そうそう! 本なんか置いて、俺と一緒に遊ぼう! そして二人きりで……

バサッ。

鳥篭に黒い布をかける。やかましいさえずりが小さくなって、俺は小さくため息をついた。
「なつくのはかわいいけど、あいつ自分のこと人間だって思ってるんじゃなかろうな」
そういえば、長く人間に飼われた動物は、人に対して性的アピールをすることがあるという。
カナリアの囀りって、確かメスに対するアピールだったよな。うん。
「ま、いっか。読み終わったら遊んでやろう」
うるさいこともあるけれど、小鳥が拗ねたり甘えたりする仕草って意外に可愛い。
何だかんだで俺も甘いような気がするけれど、ま、可愛いものは正義だ。うん。
ソファに座ってしおりをはさんだページを開く。こういうのんびりした日も、いいもんだ。



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最終更新:2010年02月21日 19:49