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恋すてふ わが名はまだき たちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか

「まさにコレだよな?」
『恋すてふ 我が名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思いそめしか』
古文の教科書を読みながらそんな話をしたのは、確か放課後の図書室でだったと思う。
「まさにだね」
教科書をめくって勉強のポーズを取りながら、たわいない恋愛話を小声で交わしていた。
「で、噂は本人には伝わってないの?」
「それがさあ!」
思わず大声になった俺に、彼は人差し指で静かに、の合図をした。
「…なんかもう伝わっちゃったみたいでさ、」
「…何か言われた?」
「や~、彼女の友達の、小林っているじゃん?あいつがさ、エミちゃんは『友達以上には見れない』って言ってたよ!って」
「そう…」
その時の彼の表情は、教科書で隠され読み取ることが出来なかった。
「告白してもないのに振られるってなんだよ…せめて告るまで待ってくれよ~」
「君はすぐ顔に出るからね」
「おまえは全然顔に出さないよなー」
「……そうだね」
すると彼は教科書を差し出し、
「僕の場合はこれ」
そう言ってある短歌を指差した。
『玉の緒よ 絶えねば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする』
「これどんな意味?」
「たまには自分で調べなよ」
「なんだよ~教えてくんないの?」


結局その歌の意味を俺が知るのは、だいぶ後になってのことだった。