うつらうつら

隣の席から、とんとん、と俺の軽く肩をたたきながら、
「おい、もうすぐ当てられるぞ。今、出席番号七番のやつが当たったから。」
と小声で囁く、上原の声がした。
「あー、ありがと。」
今の時間を担当している教師は、いつも出席番号順に生徒を当てて答えさせるやつだった。
つまり、俺は出席番号八番で、次に必ず当てられるのだ(後ろのほうの生徒はずるいよなー20番台のやつなんかぜんぜんあたんねーじゃん)
ただただ教科書を読み上げるだけの、つまらん上に受験勉強にもならない授業なので、みんな、当てられるとき以外は寝るか、内職している。
俺は前者の居眠り派だ。
いつも真面目な、この授業をクラスで唯一ちゃんと聞いている超優等生上原が隣の席でよかった。
当てられる直前に、ちゃんと起こしてくれる。
その時だけは起きてないと。…あのクソハゲ眼鏡教師は、教科書で生徒の頭をひっぱだいて起こすのだ。

そして放課後、同じ部活で、最寄の駅が一緒の小川と、駅で帰りの電車を待っていたとき、ふと、小川がつぶやいた。
「お前いいよなぁ。いっつも上原が起こしてくれて。俺なんか今週だけで4回も叩かれたし。」
「たまたま隣の席だからなーそれにあいついいやつだし。」
「でも俺、一学期、ずっと上原の隣だったけど、ぜんぜん、起こしてもらったことなかったんだけど…」
「え?そうなん?俺みんなのこと起こしてると思ってたんだけど、違うんだ?」
「うん。何でお前は起こしてもらってんだろうなーふしぎだよな。」
「確かに。何でだろう?」


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最終更新:2010年02月21日 19:13