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破滅に向かう友人を止めようとする男

間に合え、間に合え、間に合え!!
どうして携帯を買い換えたのがつい2日前なんだろう!
マナーモードの故障なんかほっとけばよかった。
なれない機種に、たかが電話をかけるだけなのに妙にもたつく。
いつもよりも2倍くらい時間をかけて、あいつの携帯に電話をした。
間に合え、電話に出てくれ
心臓がバクバクと、音が聞こえそうなくらい激しく脈打つ。
普段、手に汗をかくどころか、体温が低すぎて汗が出なくて困ってるくらいなのに、携帯を握る手が湿っている。
二三度のコールの後、いつもの明るい調子とは打って変わった、重く沈んだあいつの声が聞こえた。
「…何だ、お前か。」
よかった、出た。
まだあいつを止められたわけじゃないのに、少しだけ希望が見えたような、明るい気持ちになった。
「お前何してんだ!馬鹿!やめろ!お前、自分が何をしようとしてるか、わかってんのか?今なら間に合うから、だから…」
俺のカラッポ頭に入っている語彙なんて、そこらの中学生より少ない。
ありきたりの言い回ししか出てこない自分にうんざりした。歯がゆかった。
いっそあいつのもとへ飛んでいって、一発ぶん殴ることができたら…どんな言葉よりも俺の気持ちが伝わるだろうに。
「…いいんだ。俺、決めたんだ。後悔なんか、しないから」
さっきよりも棘のない声だった。
「だから、行かせてくれ。」
俺が説き伏せられてどうする。
頭では理解できるのに、あいつの気持ちや、生い立ちを考えると、止めるほうが酷な気すらしてきた。
あいつの人生がめちゃくちゃになっちゃうのに、止めなきゃいけないのに…止めなかったら、もう二度と会えないかもしれないのに。
「…お前に会えなくなったら寂しいから、やめろよ。」
つぶやくように俺が言うと、電話の向こうから小さな笑い声がした。
「すげー説得力あるな。それ…」