※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

世界の終わりの高校生

もうずっとここに座って海を見ている。
色々考えたけれど、もう立ち上がるのさえめんどくさい。
誰かが呼んでいる気がする。何を言っているかは分からない。
もう誰もいないはずなのに。
地平線から人の影が出てきて、形をなしたと思ったらこっちに向かってきた。
ここは僕しかいないはずなのに。
不安になって、思わず立ち上がる。どことなく見覚えのある男が、手を伸ばした。
「お前を迎えにきた。こっちへおいで」
いやだ。あんたは、僕を海へ引きずり込む気だろう? そばに来るな。
「ここにいたって意味がない。助けにきたんだ」
その声は暖かく、優しかった。彼が僕を呼んでいたんだろうか? 
でも、そこは深く暗い海じゃないか。
「この世界にはお前しかいない。独りぼっちだ。何も始まりゃしない。分かってるんだろう?」
それでいいじゃないか。ここは安心だ。そっちはいやだ。
「大丈夫だから。今度こそお前を守ってやる。お願いだから、戻ってきてくれ」
戻る? じゃあ、一体ここはどこなんだ? 僕のいるこの世界は?
頭がぼんやりとしてきた。彼が僕の手を握り、ぐいと引っ張った。

目を開くと、さっきの男が僕を見下ろしていた。泣いている。
「気がついた! お母さん、彼、意識が戻りました!」
白いベッド。横に点滴がある。母さんが抱きついてきて、体を震わせた。
彼は僕の右手を握ったまま、笑顔で涙を流していた。
「お前はまったく。よかったよ。もう頼むからあんなことしないでくれ」
そうだ、僕は確か、学校の屋上から……。
「お前をここまで追いつめてしまったのも、担任である俺の責任だ。これからは全力で守るよ」

あの声は先生だったんだ。
僕はまた暗くて冷たい世界に戻ってきてしまったらしい。
でも、この手の温もりは、この世界で生きる力を少しだけ、蘇らせてくれた。