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禁断の恋に走る者と愛より安定を選んだ者

「骨を拾ってくれないか」
口吻の合間にふと思い付いたので呟くと、どうでも良さそうに私の唇を吸っていた男は
瞳にほんの少し面白がる色を浮かばせた。
「断るよ。しゃぶり尽くされた骨に興味は無い」
にやりと口端を持ち上げた表情は美しいのに、返答はにべも無い。
しかし、男が私のシャツを脱がせる手付きはいつもより滑らかなものになった。
彼は優しいのだ、私と違って。
「誰もしゃぶってくれやしないさ。腐ってだらしなく溶けるんだ」
「なら、尚更要らないね。犬の餌にでもなればいい」
「それは犬が可哀想だろう」
取り留めもない言葉を連ねている内に上半身を裸に剥かれる。
あちこち傷だらけの肌は愛しい人にも見せられないほどみっともないが、
男は気にせず掌を這わせる。
綺麗な手だ。彼は神が芸術の極みを求め造りたもうた作品だと言われたら、
私は一も二もなく信じるだろう。
ただ、人間離れした美しさが彼を幸福にしたのかどうかは分からない。
彼は地位も名誉も財産も充分すぎるほど持っているが、それゆえに他人から敬遠された。
たった一人愛した人は、明日他の者と結婚する。彼はそのお膳立てをし、普段通りの……
いや、およそ最高のものだろう笑顔で祝福をした。本気になれば手に入れられた筈なのに。
「何を考えているんだい?」
「君はどうして、あの子を譲った?」
私の衣服は残らず身体を離れ、彼は私の両足を広げて股間に顔を埋めていた。
そうされるのは初めてだったが、彼は戸惑うこともなく私の性器に舌を絡ませた。
「面倒になったからだよ。幸せになろうと思えば出来るけど、それには他の色々なものを
捨てなくちゃならないから」
「…っ、は…嘘ばっかりだ」
「どっちが?」
それきり彼が愛撫に(愛など互いに一ミクロンも無いが)没頭した為、私は答えることも
出来ず(こうして他人の所為にするのが私の狡いところだ)喘いだ。
私の身体を隅々まで知る男の行為は的確で、愛などなくても気持ち良くなれるのだと
いつも教えてくれる。
しかし私は愛に生きたかった。手に入らないと分かっていても、自らの愛を貫きたかった。
男の咥内で果てる瞬間、聞こえる筈のない声が聴こえた気がした。
“…骨の一欠片も残す気は無いんだろう”
今のは幻聴か、問う前に身体を割り開かれる。
執拗に舐られた性器とは真逆に一切慣らされていない孔はギチリと軋んで裂け、
流れ出す鮮血が抽送を助けた。

明日、私がこの世から消えたら、彼はいつまで私のことを覚えているだろうか。
彼と同じく男女の道を外れた想いに身を焦がし、しかし彼とは違い当たって砕けて命を絶つ
迷惑者の話を聞いたら、嘲笑の一つ程度は洩らすだろうか。
私は彼を愛していない。彼は私を愛していない。だから、互いに気遣う必要など一つも無い。
だが、彼の愛する人が結婚生活に飽いて離婚するくらいまで、彼が私の存在を心に住まわせて
いてくれればと思う。