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理論で説明できないことなど全く信じない科学者

あいつは奇妙な奴だった。
いつも虫取り網を持って裏山を探索するのを趣味とする珍妙な男だった。
私が、何をしているのだ、と聞くとやつは猫のような笑いで(やつはいわゆる「タレ目キャラ」だとされていたが今思えばそれは多分演技だったのだろう)
UFOを探しに行くのだと言った。昨日は隕石が落ちてきたから絶対いるのだ、と
無論、そんなものいるわけない。だいたい昨日のは衛星だ、阿呆め。と内心では思っていた。
しかし無理矢理さらわれて行った裏山の頂上で馬鹿みたいに口を開けて流れ星を探しているおまえを見て、
俺はこいつは何か特別な何かを持ってるんじゃないかと、何故だか漠然と思った。
塾なんてどうでもいいや、と思った。

帰ってから親にこっぴどく叱られ、そんなやつとはつきあうなと言われたが
それでもちょくちょく遊んでいた。
河童を探しに行けば沼にはまり、心霊スポットに行けば独りはぐれ、
なぜ俺ばかりこんな目に遭うのだ、不公平だと嘆いたら僕には幸運の神がついているのだとやつは言った。
まったく、至極論理的でない男であった。何故俺がこいつといて心底楽しかったのかは迷宮入りになってしまった。
俺が受験で忙しくなって、つきあいが悪くなった。
俺が膨大なレポートのため徹夜していたころ、奴は死んだ。
聞けば独りで幽霊を探しに行き、足を滑らせて死んだらしい。あいつは阿呆だ。

死んだら意味が無いではないか。
「…おれは信じない。信じないぞ」
「まァ別に信じなくてもいいんだけどさー。十年来の友人にそれはひどくない?」
「誰だ?立体投写機なんてどこが開発した?理工学部か?じゃあ何で俺の黒歴史を知っているのだ…」
「黒歴史って…。じゃあおまえ、何で俺に告った後逃げたわけ?返事できねぇじゃんよ。何が受験のため、だアホ」
「しかしそんな大きな機械は見あたらないな…。どこから投写を…」
「へー十年越しの想い伝えようとして黄泉がえってきた健気な僕を無視ですか、そうですか。」
踵を返して歩いていくおまえ。どう見たって論理的じゃない、半透明の体。冷たく素通りしていく指。おい、…待ってk
「…いってえな!何しやがる!」
それはあいつに激突されて俺が床の上に押し倒されている状況で、配役が逆だったらよくシミュレーションしたのにと思ったけどそんな場合じゃない。
「あ、やっと反応してくれた。」
そう言って猫顔で笑うおまえ。おい、目が鋭いぞ。やっぱ演技だったんだな?
「やめろ、どけ!んなとこ触るな!男同士なんて論理的じゃない生産的じゃない幽霊なんて…論理的じゃない!」
「ほんと幽霊とか信じないねえ。でもそんなとこが好きだよ」
俺の白い肌に、冷たい指が食い込んでいくのをただ感じていた。