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死ぬまで黙ってる

貴方の声が、今も何処かで聞こえている。
「お前が死ぬのはすなわち私が死ぬ時と心得よ」
仰せのままに、と私は返事をし、そして強く心に誓ったのだ。
私の身が滅ぶまで、この想いは決して口にすることなく胸の底へ底へとしまい込み
誰にも悟られることなく、貴方を想い続けながら死んで逝こうと。

秘めた想いは強く、痛く、そしていつでも私の心を暖めた。
私のどんな小さな幸せも、貴方に差し上げられたなら。
貴方のどんな小さな悲しみも、私が代わりに受け止めることができたなら。
どこかの戯曲のような甘い言葉さえ、私は毎夜のように胸の底へ底へとしまい込んだ。

貴方に伝えたかった言葉が何百と浮かんでは、その度に飲み込んだ。
しかし私は私と交わした愚かな約束を、この先も守らなければならない。
その言葉たちは私を、たとえば貴方の写真の前で、我慢できぬと駆り立てた。
墓の前で、形見の前で、この先も私は人知れず涙を流すだろう。
貴方が最期に口にした言葉が、この先も私を縛り付けるだろう。
私がその言葉を聞いた時、貴方は既にその目を閉じておられた。
手から温もりが消えていくのを感じながら
私もですと小さく呟いたその言葉は、貴方に届いていたのだろうか。
後悔など役には立たず、貴方がいない事実だけが私を苦しめる。
もう、貴方はこの世にはいないのだ。
貴方が私の想いを知ることは絶対にないのだ。

今日も私は貴方の墓で――ホトトギスが一輪だけ咲く墓の前で、貴方を想って泣くのだろう。
胸の中で告げられなかったその想いを、一つの言葉に紡ぎながら。