君が好きだ
「卒業おめでとう」
「…あー、先生。…ありがとうございます。 」
「思い出すね。君とはじめて会ったのも、この桜の樹の下だった。」
「…そうっすね。」
「入学式に遅刻して、自分のクラスさえわからなくて、オロオロしていた。」
「…。」
「初々しくて、かわいらしい新入生だった。」
「…はぁ。」
「あれから君は、なぜか僕になついてしまって、何かにつけ職員室へ通って来ていたね。
学年が上がって、君の背がずいぶん伸びてからもずっと。」
「…あの、先生。
さっきから…何が言いたいんすか?」
「一年前。
君がこの場所で告げてくれた気持ちに、ずっと答えられなくて、すまなかった。」
「!?」
「あの日から、君は僕の元に姿をみせなくなったね。
他の先生方が、ずいぶん不思議がっていたよ。」
「…だって、…」
「大人というのは複雑で厄介なものなんだ。
…しかし君はもう、僕の生徒じゃない。
ようやく伝えることができる。
君が好きだ。」
最終更新:2009年07月11日 19:12