百合×薔薇

薔薇は惚れた。
きゃしゃな茎にもかかわらず堂々として、そして少し俯き加減の凛とした横顔に。
百合は惚れた。
その身の棘で他者を傷つけることを恐れ、それでもプライドを失わないその姿に。

だが、薔薇はそのプライドゆえに、百合は自身の境遇ゆえに思いを伝える事は
出来なかった。
だが、棘をとられ、葉をむしられた薔薇を見て、百合は静かに涙を流した。
他の薔薇と一緒に包まれた彼は、見えないように涙を流した。

百合は最後に、掠めるように薔薇に触れた。
その感触を胸に、百合は散る最後まで薔薇を思った。
薔薇は、花びらをむしられながら、最後にふれた百合を思い出して
意識を放した。




花屋での出来事。



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最終更新:2009年06月30日 10:40