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森×くまさん

 彩り鮮やかににぎわせてくれた実りの季節もとうに終わり、色とりどりの枝葉は褪せて大地に染みる。
 ひっそりと息吹を低める枝に雪が積もり始める頃、いつものようにのそりとあいつがやってきた。
「よーす。今年もお世話んなるよ」
「今年もって……てめえな、今年がいつ始まったか知ってるか?」
「ああ。なんか、気づいたら居眠りしてて、そのまんま寝入ったみたいでさ。さっき起きた。
いや、さっきおまえが顔に雪落としてくんなかったら、あのまま死んでたなあ」
 これ、必死にかき集めて来たんだぜえー。
 大らかに笑う顔に、あきれ返る。凍死直前の顔か、それが。
 でかい図体で両手に食料をいっぱい抱え込みながら、きょろきょろと辺りを見回して、
 しばらくしてちょうどいい穴を見つけたのか、のそのそと入り込んで膝を抱えこんだ。
 そのまま寝入りそうな相手に一声かけるべきなのか躊躇していたら、ぱち、と目を半分、開けた。
「それじゃあしばらく、またよろしくね」
 あったかくなるまでずっと、抱いていてね。
 その図体でそのセリフか、とこっちが恥ずかしくなるようなことを言いながら、でかい手をばたばたと振る。
「……せいぜい食っちゃ寝して太りやがれ。おまえが痩せたら食いでがねえ」
「はいよ。頑張って太って、それで死んだらおまえに帰るさ」
「ばかやろう。そういうこと言う奴に限って、いつまでも生きやがる」
「ふふん、長生きするとも。一緒にいたいからね」
 もう一度笑って、ひとつ欠伸をして、すう、と眠り込んでいく。
 落ち葉の毛布をかけてやりながら、こいつとはもう何年春を迎えたのか、ふと数えてみた。
 あと何年、一緒にいられるだろう。不意にそんな考えが頭をよぎる。
「……淋しいじゃねえか。ばかやろう」
 死んだっておまえなんて食えねえよ。
 悪態をつきながら、一生懸命に彼の眠る大地を温める。
 一人、君の目覚めを夢に見ながら、今は夢見る君を腕に抱く。
 そして春を君と。
 また春に、君と。