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愛弟子

私の元で修行をしている彼は非常に出来が悪い。

小説家になりたいと、私の元に押しかけてすでに一年以上たつが、
いまだにろくな文章がかけないのだ。
私が何度文章の書き方を指導しても一向に改善される兆候が見られない。
てにをはの使用がおかしいだけでなく、いまだに役不足と力不足の区別さえついていない。
しかし、構想だけはなぜか非常に出来がいい。
彼の頭の中に展開されている物語が素直に相手に伝わることができるのは、
その彼自身の口から吐露されるときだけなのである。
ゆえに、彼によって作られる素晴らしい物語を実際に知ることができるのは
他の誰でもない私だけなのだ。

しかし、一方で、いつか彼が小説の文章を書く際に恵まれたときを
恐れている自分も存在している。
今はまだ手に余るほどの才能を知っているのは私だけであるが、
それを彼自身の口でなく、その手から生み出すことができるようになれば。

彼は私を超えるだろう。

師として彼が立派に独り立ちできることは間違いなく喜ばしいことであろう。
それと同時に恐ろしい嫉妬を彼に向けてしまう恐れもある。
現に、彼の考える物語にはすでにその誘惑が備わっているのだ。

彼は可愛い。間違いなく私の愛弟子である。
小説のことを差し引いても私が愛情を注ぐに値する存在なのだ。

しかし、その愛情をこれからも私が保てるかどうか、自身がない。