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自分を最高に格好いいと思ってるのに不本意ながら受け

就業後、一息付く。
「・・・やっと、無くなった・・・。」
佐藤が疲労と幾らかの満足感を込めた声で
決済済みの書類の山を見やった。
そうして、何時間前かに
「これで帰るけれど」の後、労いの言葉を続け
コーヒーを差し出して来た女子社員の顔を
ちら、と目蓋に思い出しながら目先の紙コップに手を伸ばす。

「おー!終わった?」
コーヒーに手を掛けようとしていた佐藤の背が途端強張る。
背後に立っているであろう人物の顔はわざと見ない。
返事もしなかった。
「丁度良かったなー!俺も今終わってちょと様子見に来たとこ!」
しかし鈴木はそんな事はお構いなしといった呈で
椅子に座る佐藤の背後から自身の上半身を
これでもか、と押し付け体重を掛けていく。
「・・・重い・・・。」
今や佐藤の頬は机に付かんばかりであるし、背は軋んでいる。
疲労感は倍増。

「なぁ、丁度いいからメシでもいこや。」
「・・・行かん。っていうかお前重い、暑い。」
後ろから耳元で今晩の誘いを掛けてくる鈴木の胸板を後頭部で感じていた。

今もぐいぐい背骨が押さえ付けられているのだが
押し返す事が全く出来ないでいる。
何やら佐藤は悔しくて堪らなかった。

自分だって、体格は人並みより上を行っている。
顔だって、正直自信はある。
いつも女子社員が自分にお茶だの三時だのと気を使ってれ
好意を持たれているであろう事も目線で解る。
だが、この野球部上がりの営業第二課の同僚は重く、堅い。

何かにつれて体重を掛けてきたり、わざとぶつかって来る度に
うざったらしさと、自分の自信が覆される様な感がして、悔しい。
それに飲み屋でもお姉ちゃんにモテるのは、いつも鈴木の方だった。
その度に佐藤は、こんないかついだけが取り得の男が何故・・・。
と思っているのだがどうやら女子社員らの話では
「笑顔がかわいい!!」
のだとか。
「・・・なぁ、ほんまどいてくれん?」
「なぁなぁ、どこ行く?俺和食がええな、もう時間も早いことないしなー。」
「お前は、人の話をやなぁ・・・」

と佐藤が呻く様な声を上げていると、急に鈴木の身体が離れた。
「ねむたい事すんな!重いねん!!」
「おー、これ貰うでー。」
先程、佐藤が飲もうとしていたコーヒーを一息に鈴木が飲み干す。
「・・・そんなん、苦いやろ。」
「やって、お前が飲んだらお前ビールうまなくなるでー。」
「はぁ?」
「や、まぁ喉かわいとるやろうから、はよ一杯やりに行こうや。」

苦い口中を無理して笑っていることが佐藤にはわかった。
眉が気持ち悪そうに歪んでいる。

やはり、別にかわいくもなんともない。
佐藤はそう思いながらも又、負けた様な気がし悔しげに席を立った。