※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

へたれ関西弁×クーデレ

「神部さん、いてはります? 大家さんから伝言頼まれましてん。開けてー」
 隣の部屋の黒田が今日も私の部屋を訪ねてくる。
 毎回毎回、くだらない用事をよく見つけてくるものだと感心する。
 無視をしようと思ったが、一向にあきらめる様子がない上、
インターフォンではなく、ドアを叩き始めたので、仕方なくドアを開けた。
「……どうも」
「おるんやったら、さっさと出てくれまへん? 疲れますやん」
「用件は簡潔にお願いします、黒田さん」
「いややわー。いつも簡潔やないみたいな言い方」
 簡潔だったことがあるみたいな言い方じゃないか。
「連絡は書面でお願いしますって、何度も申し上げていますけど」
「隣の部屋におるのに、なんでわざわざ紙切れに書かなあきまへんの」
「もう2分たってますよ。用件は」
「2日後に、火災報知器の点検やて」
「そうですか」
「部屋におってくださいゆーことですよ?」
「ええ? 平日に?」
「ダメなら部屋に入らしてて」
 潔癖な気が多少ある私は、自分の知らない人間が部屋に入るというのは、正直抵抗があった。
「わかりました。私の部屋は点検なしでいいです」
「ええー? そら、あかんわ」
「そうですね。黒田さん経由でお願いすることじゃないですね。自分で言います」
「神部さんとこが火事になったら、うちも一蓮托生ですやん」
「私はたばこも吸いませんし、このマンションはIHクッキングヒーターですし、
火事なんか起きません」
「静電気や摩擦熱で火事になるかもしれませんやん」
 アホか。

「ガス漏れがあるかもしれませんやん」
「……火災報知器とガス警報器は違いますよ」
「ガスが爆発したら、どう責任とってくれますの」
「……さあ、どうやってとりましょうかね……」
 頭が痛くなってきた。
「神部さんは、相変わらず無責任やね」
「相変わらずって何ですか」
「転勤の事、教えてくれへんかったし」
「君に教える必要ないから」
 半年前まで私は大阪にいた。不覚ではあるが、こいつと私は肉体関係があった。
 私は東京に帰る事が決まっていたので、後腐れない関係でいられる相手を選んだつもりだった。
後腐れないどころか、見た目と違って、なんでこんなにこいつは女々しいんだ。
 嫌な予感がしたから、何も言わずに引っ越してきたというのに、
どこから調べたんだか、隣に引っ越してくるというのは、やり過ぎだと思うんだが。
「つきおうてたと思てたん、俺だけやったんかと思て、泣きましてん」
「勝手に泣いてればいいでしょう。今はただのお隣さんなんですから、さっさと部屋に帰って下さい」
「つれないわー」
「じゃあ、おやすみなさい」
 私は半ば強引にドアを閉めた。腕時計をみる。なんでこれだけの事で15分もたっているのだろう。
 だが、1分もしないうちに、またインターフォンが鳴った。

「神部さあーん」
「うるさいな!」
「部屋に入れなくなってもーてん」
「はあ?」
「鍵が開かない」
 このマンションには、キーレス錠がついている。鍵を持たずに生活出来るのが売りだ。
キーレス錠は自分で暗証番号を設定する。
「暗証番号忘れたんですか? 覚えやすいのにしておけばいいのに」
「ごめんなー。ド忘れしてもーて。で、いつやったっけ」
「はあ?」
「神部さんの誕生日」
「……」
 顔が赤くなるのが自分でもわかる。

 目の前の男のにやにや顔に、ああ、腹が立つ!!