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眼鏡とネクタイとスーツ

舌を絡め、上あごをなめあげ、
貧相なビジネスホテルの一室は甘い水音で満たされる。
「ん、ちょっとA太郎、メガネ。あたって痛い」
取ってやろうと手を近づけてやれれば、目をぎゅ、とつむる。
ああ、こういうのは「反射」というんだっけ。
理由は分からないが、なんとなく可愛い。
めがねを取らせるとまた口を押し付ける。
肩口に手をやり軽く押せば口付けを惜しむようなトロンとした目をしたままベッドにくず落ちた。

「オマエ、スーツも脱がずに…シワになったらどうするの」

「風呂入る前に押し倒されるとは思ってなかったから…脱ぐよ」

「着たままで良いんじゃん?
 シワ寄ったそのスーツのまま明日会社行って勘ぐられれば良い」

ネクタイをほどきながら首に口付けてやっても、A太郎は笑ったまま止まらなかった。

「そんな事になったらあなたのスーツ借りてくから。
 俺はブカブカで済むけど、あなたは俺のぴちぴちのスーツ着て出社すんだよ」

シワも伸びるだろう。
そう笑い転げる色気のカケラも無いA太郎を見下ろしながら、
どうオシオキをしようか。
解いたばかりのネクタイを見ながら俺は思った。