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田舎から都会へ引っ越す子×都会からの転校生

僕の赤い自転車を、まるで女子の乗るヤツみたいだなって最初のころビーは言った。
使いこんで、暇があるときにはぼくがいつも磨いていたから、ぴかぴかでとてもいい色になっている。赤い自転車。
ゲコゲコとたんぼで蛙がないている。蛙の声はとぎれない。あたりはまさに夏の夕方六時というかんじに薄く明るく暗い。
水をはったたんぼの上を過ぎた風はひんやりしていて心地よかった。
「なぁー。俺さ、十日誕生日なんだよね」
ぼくのシャツの背中を片手でつかんだまま、ビーが言った。
「十日?来週の?」
ジャー!舗装されてない砂利道を勢いよく下る。がたんと自転車が揺れる。
ビーはなんでぼくにしがみつきもしないのに、荷台から落ちないんだろう。
「うん、だから、なぁ、なんかくれよ」
「いいよ。何がいい?」
ぎゅ、とシャツを握る手に力がこもった。
「これ」
「シャツ?」
「違うよバーカ。チャリだよ。くれよ
おまえがチャリごといなくなったら俺アシなくなっちゃうだろ」
女子が乗るみたいだって言ったじゃんかって思ったけどぼくはうなづいた。
ビーが後ろで鼻をすすったのが気配で分かった。
蛙の声はとぎれない。あたりはもうまっくらで、すこし遠く、ビーの『おばあちゃんの家』まで、明かりはなかった。