自動車信号機の青×赤

「じゃあそろそろ俺あがるよ」
「ああ、おつかれ。今日はちょっと見てから帰るよ。昨日調子悪くてな」
おつかれ、と黄に頷きかけると、青は個室から出て行った。
田舎の信号機などは夜、人通りがなくなる時間帯になると黄色信号だけが点滅し始める。
この場所の信号機もその例に漏れず、黄色の自動点灯だけに切り替わった。

「どうした? 赤」
むっつりと黙り込み、椅子にだらしなく座る赤を見つけると青は薄く笑って肩を叩く。
「…何でもねえよ」
赤はつっぱねるが青には判っていた。
夕方頃、赤が照っても突っ走っていった車がいた。
そして、右折してきた車と衝突事故を起こしたのだ。
…まあ、その事に怒って当り散らさなくなっただけ大人になったと認めようか…。
「お前の責任じゃない。アレは人間の過失だ。…怒るのもその位にして早く寝ろよ」
「もうちょっと」
その場を離れようとした青を引き止めたのは、ぼそぼそとした声とぎゅ、と服をにぎった手だった。

「守ってくれない人がいるのは悲しいな」
「…」
「でも俺は赤があるからこその信号だと思ってるよ」
事故は起こって欲しくない。死んだらどうするんだ。
赤は座ったまま青の腰を強く抱きしめてそう呟いた。
「だいじょうぶ。きっと明日は守ってくれるよ。……だから泣かないの」

やさしく頭をなぜてやればやるほど、赤の腕の力が強くなっていった。
皆様も赤を泣かせぬよう、ご協力をお願いいたします。



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最終更新:2009年05月31日 21:57