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マンゴー

頭は割れそうで見慣れているはずの天井はぐるぐると回っている。
一昨日の仕事帰り、急な雨に降られた俺は10年ぶりに39℃の高熱を出してしまった。
「最近仕事…無理してたからなあ…。この熱さえ下がれば…!頭いてえ…」
先月、俺は部署異動の辞令を受け取り(内心面白くなかったが)成績を上げるため
慣れない業務に(自分で言うのもなんだが)かなり頑張ってきたんだ。
その精神的な疲れというか、色々なツケも溜まっていたのだろう。
ま、体調管理できないなんて、自業自得だな。

…ガチャ。
あ、同居人が帰ってきたらしい。こんな俺を放っておいてどこにいってやがった。
「おーい、生きてるかー?お前の一番好物の果物採ってきたけど、いま食う?」
「…?」
「お前が昨日寝言で食いたい食いたいって言ってたマンゴーだよ。すぐ食わせるから待ってろ」
「つーか、お前さ、こんな状態の俺を置いてどこ行ってたんだよ」
「うん。ごめん。朝一で九州の俺の実家に行ってた。このマンゴーさ、俺んとこで栽培してるやつだから美味いぞ!」
そうか実家で作ってるのか。流石に手慣れたものだ、ちょっと誇らしげに包丁を入れてやがる。早く食わせろ。

「こぼすなよ、さくっと食え。あーん」
「…ごくん」
「な!上手いだろ?」
「(ウマい!)でもなんで九州の実家までわざわざ帰らなきゃならないんだよ、そこらのスーパーにあるだろ?」
「いや、この味は家の独特のものなのさ。俺、お前にこの実家の味を覚えさせたくてさ。
お前と俺があと何十年かして、いつかは…まぁいつかの話なんだが…一緒にこのマンゴー育てようぜ!」
「…はあ?(一緒?俺達の老後?)」
お前、こんなときに何を言ってるんだ。天井だって余計にぐるぐるしだしたじゃないか。

でもさ、何故だろう?これまで食べたどのマンゴーよりもなんだか甘い気がしたんだ。
そうだな。この熱が下がったら考えてやらなくもないさ。
とりあえず俺の返事は熱が下がるまで待ってろ。

俺の返事を待たずしてなんだか嬉しそうにしている同居人の顔が少しだけ滲んで見えたのはここだけの秘密だ。