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クレーマー×店員

「笑えよ」

 ああ、また来た。
 いつもの客。
 少し目を細めるような、しかめた表情で俺を見る。
 もう、やめてくれ。

「いらっしゃいませ……」
「違うだろ」

 もう、やめてくれ。
 あんたがそうやって俺を見るたびに、俺のどこかが、ズキリと痛む。
 胸の深いところが。
 俺が嫌いなのは分かっているけれど。
 それなら、もうこの店に来なくていいから。
 俺の胸をどうか……騒がせないでくれ。

「マックでさえ笑顔くらい0円だってのに、ンなしけたツラ見せてんじゃねえよ」

 ぐい、とつかまれる腕。
 嗚呼。
 殴られるのか。と思った。


「ごめ……な、さ……」
「泣き声なんて」

 乱暴に腕を引かれ、身体が傾ぐ。
 傾いだ身体を、カウンター越しに抱きとめられる。
 強い腕。
 熱い、熱。
 恐怖と……そして悲しみに胸が悲鳴をあげる。

「聞きたくねえんだよ」

 ごめんなさい、ともう一度謝りかけた俺の声は、彼の吐息の中に飲み込まれた。
 しかめ面なんてしていなければ、いい男なのに。といつも思っていたはずなのに。

 今はこの表情が、他の何よりも妖艶に見えた。