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ジャージ貸して

「なあ貸してったらかーしーてー」
背中の一部を掴みぐいぐい引っ張られる。やめろ、伸びる伸びる。と言いたいがももう伸びてしまっているから諦めて、自分を抱きしめるように腕を回した。今日こそは死守する。絶対に。
「やだ寒い」
「お前デカいんだから我慢しろよ」
なんつー理由だ。オレが身長だけ無駄にあるひょろひょろの痩せっぽっちで「まじでもやしだな」なんて言ってガラスのハートを傷つけたのはお前なのに。こういう時だけデカいからなんて。

「デカいけど…デカけりゃ丈夫ってわけじゃないし」
「いーから!風邪引く!」
あーもう。なんで怒られてんのオレ。このジャージオレのですよね?
仕方なくオレは言われるままにジャージを脱いで差し出した。にんまり笑って羽織ると一番上までジッパーを引き上げた。あったけーとしあわせそうな顔で笑う。

「サンキュー」
「なんか奢れよ」
「チロルでいい?」
「…」
「うそうそ、帰りファミレス行こうぜ」
オレに寄りかかってケラケラ笑う。コイツ、オレをいじめるのが相当たのしいらしい。

「ったく…武田にでも借りればいいのに」
そもそも、隣のクラスから借りればオレもこいつも幸せに体育に望めるはずなのだ。つーか、自分のを持ってこい。毎回毎回忘れやがって。サイズだってブカブカだしオレからぶんどるのが楽しいだけだろう。

「バカだなーお前のがいいんだよ」
ケラケラ笑ったまま、とんでもないことを言うからオレは固まってしまった。
「一回着てるからあったけーし、なんかいい匂いすんの」
洗剤かな?と言いながら首のところに顔をうずめクンクン鼻を鳴らした。
え?な、何言ってんだこいつ。何かわからないけどすげー恥ずかしいんですけど。

「あーっ!?やっべ、ビブス忘れてた!」
先いってて!と言い残すと、走って教室へ戻ってしまった。残されたオレは、うーんと唸る。そして考えた。

これから梅雨がやってくる。これは、もう一着買うべきなのか。