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攻め×攻め

「振られた」

―またか。
思ったけれど、口にはしない。目の前にそっとコーヒーを置く。
こいつは振られるたびにここに来て、重苦しい空気をまとったまま居座る。
いっそ愚痴れば気が済むだろうに、こいつが相手を悪く言う姿を見たことがない。
だから俺から聞いていく。

「今回の相手は中学時代の後輩か」
「ああ」
「やたらと面食いだったし、お前と付き合うなんて珍しいと思ったんだ」
「優しいから、あいつは」

優しいというか、ただの気まぐれだろ。あれは。
小柄でアイドル系の容姿。少しきつめな印象を与えるが、お兄さんたちには人気があった。
それが先輩だからというだけで、こいつと付き合うとは思えない。
ガタイだけは良くて顔は平均値。そこらの大学生と変わらないキャンパスライフを送る普通の男だ。
良くも悪くも、あの華やかな奴には釣り合わない。

「どっかに俺のことを好きになってくれる可愛い子はいないのか」


テーブルに突っ伏して嘆く姿を見ると、いつもの思いがこみ上げる。
そして、口走る。

「目の前にいるだろ」
「……抱いてやろうか?」
「断る」

俺たちは相性が良い。お互いに好みのタイプでもある。
俺はこいつの性格に惹かれるものを感じるし、こいつが好きそうなアイドルのような容姿もしている。残念ながら、背丈はほぼ同率だが。
大学からの付き合いとは言え、友人としての関係もかなり友好に築き上げている。
だからこそ、俺はこいつとそれ以上の関係になりたいというのに。

「お前がネコなら本気で付き合うのに」
「俺も。そっくりそのまま言葉を返す」

どっちも引けない攻防戦。
でも、こいつがコーヒーを口にした時点で俺の一歩リードかな。

「じゃあさ、勝負しようぜ」

先に抱いた者勝ちという単純な勝負を。