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秘密を告白したあとで

お慕いしていました。
貴方が戦火の中の村から俺を拾って下さった時から。
「おまえはもう私の子なのだから、下を向く必要などないのだ」と微笑んで下さった時から。


拾われてすぐに教え込まれた学問も剣術も、学ぶ喜びが無かったわけではありません。
ですが、貴方の喜ぶ顔を見たくて、大きな手で頭を撫でてほしくて、
私のことを誇らしげに語る貴方の姿を見たくて努力していたことを、貴方は知っていたでしょうか。

下賤の子だという侮蔑と嘲笑、暴力には、絶望を感じたことはありませんでした。
貴方がいたから。貴方さえそばにいて下されば、他のことなどどうでも良かったのです。
私のすべては貴方のためにありました。


あの日、国の領土を広げるため決断した結婚に、貴方は苦渋の色を浮かべました。
「おまえには愛する人と一緒になって欲しい」と静かに私の目を見つめました。
それは愛する妻を早くに亡くした後、後妻を迎えることをしなかった貴方の慈愛に他なりませんでした。
私は貴方のお役に立ちたい、とただそればかりを繰り返しました。

そんな私に貴方は「たとえ愛する人を亡くしても、愛した記憶は残る。
それは人を豊かにしてくれるのだよ」と、私がこれまでに目にしたことの無い微笑みを浮かべました。
喜ぶべきその瞬間、私の奥底で渦巻いたのはどす黒い炎と絶望でした。
「誰かを愛しなさい」という貴方の言葉が、ひどく遠くに聞こえました。
私はその時初めて、貴方に抱き続けてきた感情の正体を知ったのでした。


お慕いしていました。どうしようもなく焦がれていました。
――愛していました。

青年は真新しい王の墓に跪き、名の刻印をそっと撫でた。
秘密を告白したあとで、父上、としか呼ぶことを許されなかったその名をそっと、震える唇に刻んだ。