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愛馬

「――様の、馬だけが戻られました」
その報に、心の臓を鷲掴まれた気分だった。
精鋭を率いての重要な任務で、彼は敢えて危険な役目を買ってでた。
「馬の鞍にこれが」
破られた布片に、敵の罠にかかったこと、これからの戦局に必要な情報などが簡潔に書かれている。
荒く、震えた字だが、確かに彼のものだった。
「……、」
最後には、私あての一文があった。
吐き気がする。こんなに簡単に失ってしまうのか。
「これ、どうどう」
厩番が彼の愛馬を落ち着かせようと必死になっている。
「どうやら、戦場に戻りたいようで…主人の事をまこと思うているのでしょう」
私は、厩番から馬の手綱を預かりその鼻筋を撫でる。
「行ってはならぬ」
決して行ってはならぬのだ、何度も、何度も繰り返した。