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夜桜 

こんなにも月の明るい晩に、一人だけで呑むなんて、なんとも味気ないじゃないか。
だから安酒片手に、こうやってふらりと出てきたってわけさ。
行き先?そうだなぁ、花見でもしに行こうか。風流だろう?
しかし今日の月は本当に明るいな、
街灯なんて野暮なものは要らないくらいだ。
こんな足元の悪い石段だって、昼と変わらない調子で登れる。
気味の悪いほど静かだなぁ。
そりゃそうだ、この先には墓場しかないからな。
けど、月夜の花見を邪魔する野暮ったい人間も現れやしないから、いいだろう?
そら、登りきったぞ。
ああ、見事なもんだなぁ。
こんなさびしい墓場の真ん中に、あんなに古びて大きな桜が咲いてる。
ちょうど具合よく満開だ。全く、素晴らしい晩に出てきたもんだ。
こんな見事な桜、死人だけが楽しむにはもったいない。
生きてるうちにこの景色を見られるなんて、まったく俺は幸せ者だ。
それとも、おまえが俺に見せてくれたのか?
こいつ見せようと、お前が俺を呼んだのか?
風もないのに揺れる桜の枝の下、
花びらの散りかかる墓の下に埋まってるお前が。