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ほら吹きx素直

「でさあ、俺、昨日そのテレビに出てた歌手とマジで仲良くて!
 これ誰にも言うなよ。実は、先週もオシノビで飲んで来たんだって」
「そっか。お前は本当に人脈が広いな」

本当は、ウソ。歌手の知り合いなんて一人もいないし、
今話題に出てる歌手なんて歌を1曲2曲聴いたことがあるだけだ。
…でも、何でかポンポンと口をついて出てきてしまう

「お前にも今度会わせてやるよ。そうだ、ライブ裏だって入れるんだぜ。
 ただ地方に行かないと顔割れちゃうからムリだけど」

そっか。楽しみだなあ。と目を細めたこいつの笑顔がツキリとどこかに突き刺さった。

「俺はその歌手はよく知らないけれど、お前の友達だったらきっと良い曲なんだろうな。
 今度会えた時に失礼しないために、CD買って予習しておくよ」

ツキリ、が再び胸を襲った。眉が少し寄るのが自分でも判る。
俺は何かを言いかけた。多分、続きのホラだろう。
マヌケに口を開いている顔をにこにこと笑いながら見つめている。
…眉をぎゅっと寄せて、やつの肩口ににもたれかかった。

「…ごめん。うそ。友達なんかじゃない。ライブ裏なんて行けない」
「…そっか」

それでも含んだやさしい笑みを絶やさずに俺の頭をゆっくりとなでてくれる。
ツキリ、が消えた。
こいつといれば、いつかウソが一個一個なくなって、最後に「本当」だけが残るだろう。
こいつが好き、という気持ちだけが。