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ポジ×ネガ

「リュクサンブールかな?」
色彩の反転した異国の街並みを、矯めつ眇めつ眺める。
いつもの事ながら奇妙だとポジは思う。
同じ景色を見ていても、うつるものは真逆なのだ。
けれど、こうして彼を頼りに、自分の姿を容易く思い描くことができる。

「君は写真であって写真じゃない。写実とは違う、不思議な魅力がある。」
何の前振りもなくポジは言った。
ポジは良くも悪くもストレートな男だ。忌憚がない。
「自分に無いものだから惹かれるのかも知れないな、君に。」
「…俺はあんたが大嫌いだ。あんたの色は一々目に痛い。」
ネガはとっさにそう返し、ポジは随分嫌われちゃったなぁとぼやいた。
しかし声色には僅かに笑いが滲んでいる。
ネガはそれを黙って聞いていた。
率直なポジとは対照的に天邪鬼な性分だから、
口を開けば思いと裏腹な事を言ってしまうのが常だった。
本心を言えば、鮮やかに写し取られた記憶を美しいと思う。
その本音をストレートに伝えられるようにはならないだろうけど、
ポジにはきっと分かっている筈だと考えるのは、甘えだろうか。
表し方は逆でも、自分たちはあらゆる視点を共有しているのだから。